新規事業への進出により企業の成長・拡大を図る中小企業に向けた補助金「中小企業新市場進出補助金」が2025年に新設される予定です。この中小企業新市場進出補助金の予算は1,500億円とされています。
現在事業が思ったように成長せず、新たなブレイクスルーや起爆剤を模索している方には「中小企業新市場進出補助金」の活用を検討することをおすすめします。この補助金は、現在の事業だけでは限界を感じている企業や、次のステップに進むための資金やサポートを必要としている企業にとって、大きな助けとなる可能性があります。
では、具体的にどのような条件を満たす企業が「中小企業新市場進出補助金」の対象となるのでしょうか?この内容を理解することで、自社にとってこの補助金がどれほど有用であるかを判断する手がかりを得られるかもしれません。
新たな市場や高付加価値事業への進出を目指す際の大きな支えとなるこの制度について、詳しく見ていくことにしましょう。
目次
補助事業の内容
2025年1月の段階で公表されている情報は次の通りです。公募開始時期は現在は未定のため、情報が公開されるまで待つ必要があります。
そもそも、この中小企業新市場進出補助金の目的は次のようなものであるとされています。
課題解決へのサポート:人材不足や給与引き上げといった現代の企業が直面する課題に取り組むための支援
新規事業へのチャレンジを支援:高付加価値のある事業や新たな分野への挑戦を促進
経済発展の推進:企業の生産性向上を通じて地域経済の活性化を実現
つまり「中小企業新市場進出補助金」は人手不足や賃上げといった悩みを解決しつつ、新しい事業や挑戦を後押しして、会社の成長や地域の経済を元気にするためのサポート制度というわけです。新分野展開や業態転換といった新市場進出は、これまで長年やってきた事業とは別の形態を伴うため、企業にとっては補助があるとはいえ大きな負担となりかねません。しかしながら、事業は形を変えながらも継続していかないことには企業体がつぶれてしまうため、何かを変えたいと考えている経営者にとっては補助金を受けながら、事業転換できるチャンスであると言えます。
具体的な新事業進出例(案)
たとえば次のようなケースでの新事業進出であれば、これまでの事業を活かした形で展開することも可能となるかもしれません。自身の事業に当てはめた場合に、何ができるのかを考えるきっかけとして参考にしてみてください。
技術転用例:製造業から医療機器へ
元々は金属加工を主力としていた中小企業が、精密加工技術を転用し、医療用機器部品の製造に進出。既存のノウハウを活かしつつ、新たな分野で事業を拡大することで、売上と利益率の向上に成功。
事業拡大例:食品加工から健康食品へ
食品加工会社が、近年の健康志向の高まりに着目し、地元の農産物を活用した無添加の健康食品を開発。新商品の販売ルート開拓や広告宣伝に補助金を活用し、国内外の市場に進出。
事業転換例:小売業からEC販売へ
地方の衣料品店が、コロナ禍を機に店舗販売からオンライン販売に切り替え。自社ブランドを立ち上げ、ECサイト構築費用や広告費を補助金で賄い、全国の顧客を獲得
技術転用例:自動車部品からドローン開発へ
自動車用部品を製造していた企業が、軽量素材加工技術を活用してドローンのフレームやパーツの開発を開始。物流や農業用ドローン市場に参入し、新たな収益源を確保。
事業拡大例:観光業から体験型ツアーへ
地域の観光業者が、観光客の減少を受けて地元の伝統文化や自然体験を取り入れた体験型ツアーを企画。SNSを活用したプロモーションや外国語対応のスタッフ研修を補助金で実施し、インバウンド需要に対応。
補助概要
内容 | |
補助対象者 | 企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を行う中小企業等 |
補助上限額 |
※補助下限750万円 |
補助率 | 1/2 |
基本要件 |
|
補助事業期間 | 交付決定日から14か月以内(ただし採択発表日後16か月以内) |
補助対象経費 | 建物費、構築物費、機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権関連経費、広告宣伝・販売促進費など |
その他 |
|
なかでも補助金採択の基本的な条件となる「基本要件」については、実現性が求められるため、非常に大事な要素となってきます。
付加価値額の年平均成長率が+4.0%以上
付加価値額とは、企業が生み出す経済的価値を示す指標であり、売上から原材料費や外注費などの外部コストを差し引いたものを指します。この成長率が年平均+4.0%以上となることは、事業活動を通じて効率的に利益を生み出し続けている証拠となります。
要件を満たすには、生産性の向上、事業の高付加価値化、新市場の開拓といった積極的な戦略が必要ですし、顧客価値を高める製品やサービスの提供に取り組むことが重要となるうえ、その点が企業の競争力強化につながります。
給与支給総額の年平均成長率が+2.5%以上
給与支給総額の成長率が+2.5%以上という要件は、従業員への給与増加を通じて企業全体の成長を図ることが求められています。この条件を満たすには、単に給与を上げるだけでなく、売上や利益を増やし、持続可能な形で従業員の待遇を改善する仕組みが必要です。
人材育成や業務効率化による生産性向上が、従業員一人ひとりの貢献を高め、結果として給与の上昇に結びつきし、優秀な人材の確保や定着率の向上も期待されることとなります。
地域別最低賃金を+30円以上上回る給与水準を達成
地域別最低賃金を+30円以上上回る給与水準を実現することは、従業員の生活向上を支援し、働きがいのある環境を整える重要な条件です。単に最低賃金を上回るだけでなく、地域社会への責任を果たす企業としての姿勢を示さなければなりません。
この要件を達成するためには、事業の収益性を向上させることが必須。同時に適正な人事評価やキャリア形成支援を行い、従業員のモチベーションを高めることも重要となります。
事業スキームフロー(案)
現在までに定義づけされている事業スキームのフローは次のような流れになっています。スケジュールが定まっていないので、それぞれどれくらいの期間で準備が必要かはこれから決まっていくと思いますが、令和7年4月以降に開始が見込まれているため、今のうちから準備・検討しておくとあとになって慌てずに済みます。
- 事前準備
・新規事業の検討
・計画の策定 - 公募開始~交付候補者決定
・申請受付開始
・公募締切
・審査
・交付候補者決定 - 交付決定~補助事業実施
・交付申請・決定
・補助事業開始
・補助額の確定・検査
・補助金の請求と支払い - 補助事業終了後
・知的財産等の報告
・事業化状況の報告
まとめ
新市場進出補助金は、現段階では未定のものが今後固まってくることが予想されます。そのため、中小企業庁のホームページを随時チェックしながら、最新情報を確認するようにしていきましょう。