2024年12月、新規事業への進出により企業の成長・拡大を図る中小企業に対して提供される「中小企業新事業進出補助金」についての情報が公開されました。現段階でわかっていることとして、2025年4月に補助金の公募要領を発表、2027年3月までに年間約4回の公募を行って6000件の採択を目標としている(1500件の4回)とのこと。
予定では、1回目の公募が2025年4月に(確定)、2回目の公募は2025年6~7月ごろ、3回目の公募は2025年9~10月ごろとみられています。
本記事では、中小企業新事業進出補助金についてまとめてみました。
目次
中小企業新事業進出補助金とは?
中小企業庁が公表している中⼩企業新事業進出促進事業の概要によると、中小企業新事業進出補助金とは、人手不足や賃上げといった昨今の経済社会の変化に対応し、中小企業が成長していくためには既存事業の拡大だけでなく、新たな事業の柱となる新規事業への挑戦が欠かせません。よって、既存事業とは異なる分野への積極的な取り組みを支援し、新市場や高付加価値事業への参入を促進することで、中小企業の規模拡大や付加価値の向上を図り、生産性を高めて賃上げにつなげることを事業の目的としています。
補助事業の概要
補助事業の主な概要は次の通りになります。対象となるのは、中小企業等となっていますが、個人事業主も申請できる制度となっています。ただし、みなし大企業は補助対象外となります。
特筆すべきは補助率が1/2であり、従業員数で上限が異なること、また基本要件は4つ条件があり、すべてを満たす必要がある点に注意が必要です。
項目 | 内容 |
補助対象者 | 企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を行う中小企業等 |
補助上限額 |
※補助下限750万円 |
補助率 | 1/2 |
基本要件 | 中小企業等が、企業の成長・拡大に向けた新規事業※への挑戦を行い、(※事業者にとって新製品(又は新サービス)を新規顧客に提供する新たな挑戦であること)
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補助事業期間 | 交付決定日から14か月以内(ただし採択発表日から16か月以内) |
補助対象経費 | 建物費、機械装置費、機械装置・システム構築費(リース料含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用料、外注費、知的財産権等関連費、広告宣伝・販売促進費など |
その他 | 収益納付は求めません。 基本要件、2.3.が未達の場合、未達額に応じた補助金返還を求めます。ただし、付加価値額が増加していない場合でも、給与支給総額が未達の場合や、天災など事業者の責に帰さない理由がある場合は返還を免除します。 |
中小企業新事業進出補助金の補助対象経費の詳細
補助対象となる経費は上記で紹介したように多岐にわたりますが、これらについてより細かく見ていくと次のような内容となっています。
建物費:工場や店舗などの建設にかかる費用
構築物費:補助事業を実施するために必要な構築物の建設費用
機械装置・システム構築費:生産設備やソフトウェアの購入に伴う費用
技術導入費:外部から技術指導を受けたり、知識を習得するための費用
専門家経費:コンサルタントなどの専門家への報酬
運搬費:設備や機械の輸送に必要な費用
クラウドサービス利用費:クラウドサービスの利用にかかる費用
外注費:製品開発などの業務の一部を外部に委託する際の費用
知的財産権等関連経費:特許権など知的財産権の取得にかかる費用
広告宣伝・販売促進費:新製品やサービスのPR、販売促進活動にかかる費用
このような経費に直接的に該当する支出が行われた場合には補助の対象となりますが、事業計画に沿った内容のものでない場合には、経費として認められず補助対象外となってしまいますので注意しましょう。また対象となる経費の範囲については、補助事業の実施期間内に発生しかつ支払いが完了しているもののみが対象です。
中小企業新事業進出補助金以外の令和6年度補正予算案における中小企業・小規模事業者等関連予算について
政府は、中小企業新事業進出補助金以外にも持続的な賃上げを実現するための生産性向上・省力化・成長投資支援としていくつかの支援事業に取り組んでいます。
基本的な課題認識や対応の方向性については、物価高や構造的な人手不足など、厳しい経営環境に直面する中小企業・小規模事業者の「稼ぐ力」を強化するため、予算・税・制度などの政策手段を総動員して支援することとし、それらを通じて、賃上げ原資を確保し、持続的な賃上げにつなげることを目指すとのこと。
具体的な施策としては、次のようなものがあります。
生産性向上支援の拡充
中小企業・小規模事業者の設備投資、販路開拓、IT導入、事業承継などを支援する目的で、「ものづくり補助金」「IT導入補助金」「持続化補助金」「事業承継・M&A補助金」を拡充していきます。
具体的には、最低賃金近傍の事業者に対する支援として、補助率を1/2から2/3に引き上げ(ものづくり補助金、IT導入補助金)したり、設備投資や取引実態に合わせ、補助上限・枠・要件の見直しを実施し、より使い勝手の良い、政策効果の高い支援制度に再編します。
中小企業成長加速化補助金の創設
売上高100億円を目指す中小企業等への設備投資や、中小機構による多様な経営課題(M&A、海外展開、人材育成など)への支援を実施していきます。
中堅・中小成長投資補助金の拡充
地域の雇用を支える中堅・中小企業が、人手不足などの課題に対応するために行う工場等の新設などの大規模投資を支援していきます。
100億企業育成ファンド出資事業
売上高100億円超を目指す中小企業等へリスクマネー供給を実施していきます。
補助金を受け取るために必要なこと
補助金を受け取るためには、まず自社が補助対象となるかどうかを確認する必要があります。補助金の対象は、主に中小企業や小規模事業者、個人事業主であり、新規事業への挑戦や設備投資、生産性向上を目指す事業が求められます。具体的には、既存事業とは異なる新たな分野への進出や新製品の開発、新たな市場への参入などが該当します。
また、補助金の公募が開始されたタイミングで、必要な申請書類を揃える必要があります。よって事業計画書の作成が重要であり、自社の強みや新規事業の内容、期待される成果、投資の必要性などを明確に記載しなければなりません。さらに、付加価値の向上や生産性向上、賃上げなど、補助金の目的に沿った計画であることを示すことが求められます。
なお、申請の際には、設備投資費用や外注費、技術導入費など補助対象となる経費を具体的に記載し、見積書などの証拠書類を添付します。加えて、補助事業を遂行するためのスケジュールや資金計画も示し、事業の実現可能性をアピールすることが重要です。
公募期間内に申請を完了した後は審査が行われます。審査は、事業の新規性や成長可能性、地域への経済波及効果などが評価のポイントとなりますが、採択されれば、補助金交付の決定が通知され事業が開始できます。事業実施中は、支出内容を記録し事業終了後には実績報告を提出することになります。補助事業が計画通りに進み、報告が適切に行われた場合、補助金が交付されますが、計画未達成や不正が発覚した場合は、補助金の返還が求められることもあるため、事業の進捗管理や報告義務を怠らないことが重要となります。
2025年度に向けて、新規事業を検討されている方は、補助金をうまく活用して事業を軌道に乗せることも考えてみましょう。