【最新2024年】中小企業経営強化税制まとめ

中小企業の経営力強化や投資をサポートする制度の一つに「中小企業経営強化税制」があります。現在この制度を活用していない企業でも、今後設備投資を検討する際にこの制度の対象となる場合には、税制上で大きなメリットを受けられる可能性があります。特に資金繰りの改善や経費削減を図りたい企業にとって、この税制の活用は重要なポイントとなるでしょう。

ここでは、「中小企業経営強化税制」について、制度の概要や適用条件、具体的なメリットなどをわかりやすくまとめて解説していきます。

中小企業経営強化税制とは?

中小企業経営強化税制(正式名称:中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)とは、青色申告を行っている中小企業が、経営力向上計画の認定を受け、2017年(平成29年)4月1日から2025年(令和7年)3月31日までの期間内に、新品の特定経営力向上設備を取得、製作、または建設し、国内の法人の指定事業で利用した場合に、特別償却(即時償却)または税額控除を受けられる制度です。

少し難しい内容ですが、簡単に説明すると、中小企業者が経営力向上計画の認定を受け、その計画に基づいて新品の設備を取得し、国が指定する事業で使用する場合、以下のどちらかの税メリットを受けられます。

  1. 設備等の特別償却(即時償却)
  2. 取得価格の最大10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人の場合は7%)の税額控除

また、税額控除の金額は、中小企業経営強化税制と中小企業投資促進税制の控除額の合計となり、その事業年度の法人税または所得税額の20%が上限です。限度額を超える場合は、翌事業年度に繰り越して控除を受けることが可能です。

経営力向上計画認定を受けることのできる一定の中小企業者とは?

ここでいう中小企業者とは、以下の条件を満たす企業や団体を指します。

  • 資本金または出資金の額が1億円以下の法人
  • 資本または出資を有しない法人で、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
  • 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主
  • 協同組合等

これらの中小企業者が、「中小企業等経営強化法」に基づき、事業分野別指針を参考にして人材育成や設備投資、経営力の向上を目指す「経営力向上計画」を策定し、申請・認定を受けることで、様々な税制優遇をはじめとする支援を受けることができます。中小企業等経営強化法は、中小企業の経営革新や先端設備導入を促し、経営力を向上させて収益性を高めるために国が後押しする法律であり、この認定を得ることで企業はさらに成長を目指せる環境を整えることができます。

中小企業経営強化税制によってどんなメリットが得られるのか?

大企業であれば潤沢な資金があるため、設備投資の資金繰りについての心配は比較的少ないかもしれませんが、多くの中小企業では設備投資を行う際、資金繰りを十分に考慮し、慎重に判断する必要があります。たとえば、建物や工場、設備といった有形固定資産、またはソフトウェアや特許権などの無形固定資産を取得した場合、通常は分割で支払う形で減価償却費として処理することになります。この場合、投資にかかった費用を一括で損金として計上することはできず、耐用年数に応じて少しずつ経費に計上していく必要があります。そのため、投資額全体のうち毎年計上できる経費はごく一部に限られます。

しかし、中小企業経営強化税制を活用することで、税制上の優遇措置を受けられ、設備投資の全額を取得した年度に一括で経費として計上できる即時償却が可能になる場合があります。また、税額控除を活用することで、設備投資に伴う税負担を大幅に軽減することもできます。これにより、資金繰りの改善や経営の安定化が図られ、積極的な設備投資がしやすくなるメリットがあります。

税制優遇対象となる設備にはどのようなものがある?

中小企業経営強化税制では、税制優遇の対象となる設備がいくつかの分類に分けられており、それぞれの対象設備によって4つのカテゴリーに分類されています。これらの分類に基づいて、企業が取得する設備が税制優遇の対象となるかどうかが決まります。

類型 要件 確認者 対象設備 その他要件
生産性向上設備(A類型) 生産性が旧モデル比平均1%以上の向上する設備 工業会等 ・機械装置(160万円以上)
・工具(30万円以上)
A類型の場合、測定工具または検査工具に限る
・器具備品(30万円以上)
・建物付属設備(60万円以上)
・ソフトウェア(70万円以上)
A類型の場合、設備の稼働状況等に係る情報収集機能および分析・支持機能を有するものに限る
・生産等設備を構成するもの
※事務用器具備品・本店・寄宿舎等に係る建物付属設備、福利厚生施設に係るものは該当しません
・国内への投資であること
・中古資産、貸付資産でないこと等
収益力強化設備(B類型) 投資収益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備 経済産業局
デジタル化設備(C類型) 可視化、遠隔操作、自動制御化のいずれかに該当する設備
経営資源集約化に資する設備(D類型) 修正ROAまたは有形固定資産回転率が一定割合以上の投資計画に係る設備

「指定事業の用に供した場合」における指定事業とは?

中小企業経営強化税制は、2025年(令和7年)3月31日までの期間内に、新品の特定経営力向上設備を取得・製作・建設し、国内にある法人の指定事業に使用した場合に、当該設備を使用した日を含む事業年度において特別償却(即時償却)または税額控除が認められる制度です。ここでいう「指定事業」とは、以下の業種が該当します。

製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、採石業、砂利採取業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブ、その他これらに類する事業については生活衛生同業組合の組合員が営むもののみが認められ、それ以外は除外されます)、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、こん包業、郵便業、損害保険代理業、不動産業、情報通信業、駐車場業、物品賃貸業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、教育、学習支援業、医療、福祉業、協同組合(他に分類されないもの)、サービス業(他に分類されないもの)

※ただし、娯楽業(映画業を除く)や性風俗関連特殊営業に該当する事業は対象となりません。

上記に該当する中小企業であれば、中小企業経営強化税制の優遇が受けられる可能性がありますので、自社が当該指定事業に当てはまるか不安のある場合には、一度中小企業税制サポートセンターなどに確認してみるとよいでしょう。

中小企業経営強化税制を利用するためにはどうすればよいの?

中小企業経営強化税制を利用するには、まず2025年(令和7年)3月31日までに「経営力向上計画」の認定を受ける必要があります。その後、導入を検討している設備が中小企業経営強化税制の対象となるかどうかを確認し、さらに対象設備がどの類型(AからD)に該当するかを把握したうえで手続きを進めることが必要です。

経営力向上計画の認定を受けるためには、中小企業庁のホームページから申請書をダウンロードします。必要な書類は「【記入用】経営力向上計画認定申請書(様式第1)」と「経営力向上計画チェックシート」です。業種によっては申請書の記載例が用意されているので、該当ページを参考にしながら書類を作成するとスムーズに進められます。

特別償却・税額控除の適用を受けるには?

「特別償却」の適用を受けるためには、確定申告書に加え、償却限度額の計算に関する明細書を添付し、さらに経営力向上計画に係る認定申請書の写しと、経営力向上計画の認定書の写しを一緒に提出する必要があります。これらの書類を確定申告時に正しく添付して申告することで、特別償却が適用されます。

一方、「税額控除」の適用を受けるには、控除額を確定申告書に記載し、その計算に関する明細書を添付します。さらに、経営力向上計画に係る認定申請書の写しと認定書の写しも必要です。これらの書類を添付し、適切に申告することで、税額控除の適用を受けることができます。

まとめ

中小企業経営強化税制は、対象となる中小企業が活用することで、特別償却(即時償却)や取得価格の最大10%(企業規模によっては7%)の税額控除を受けられる非常に有利な制度です。設備投資を計画している企業にとって、資金繰りの改善や経費削減に大きなメリットをもたらします。

この制度を利用するためには、経営力向上計画の認定を令和7年3月31日までに受ける必要があり、その認定期間内に取得し使用された設備が対象となります。期限が迫っているため、中小企業経営強化税制の活用を検討している企業は、できるだけ早めに準備を始め、計画的に進めることが重要です。適切な設備投資を行い、税制優遇を最大限に活用しましょう。

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