「年収の壁」対策支援奨励金まとめ

日本では、配偶者の年収が一定額を超えると税金や社会保険の負担が増え、手取り収入が減るという「年収の壁」が存在します。この年収の壁は、パートやアルバイトで働く主婦(主夫)にとって影響が大きく、働く時間や収入を調整する要因の一つとなっており、社会問題になっています。

企業側にとっても人員不足を助長する原因と言われ、この対策の一環として政府は配偶者の収入要件がある家族手当を見直す企業に対し、奨励金を交付する制度を実施しています。

「年収の壁」対策支援奨励金とは?

「年収の壁」対策支援奨励金とは、「年収の壁」の原因の一つとなっている「配偶者の収入要件がある家族手当」について、3か月の手当見直し取組期間のうちに、次のいずれかの見直しを行うことで、1事業主あたり10万円の奨励金(1回のみ)が交付されます。

  • 配偶者手当(家族手当)の収入要件を撤廃する
  • 配偶者手当(家族手当)を廃止し、他の手当に振り替える
  • 配偶者手当(家族手当)を廃止し、基本給に繰り入れる

配偶者手当(家族手当)は、企業が従業員の家族構成を考慮して支給する手当のひとつで、扶養する配偶者がいる従業員に対し支給される手当のことを指します。従業員の家庭を支援し、生活の安定を図るために支給されるもので、企業によって金額は異なりますが、5,000円から30,000円程度に設定されています。

「年収の壁」対策支援奨励金事業に参加するメリット

企業が『年収の壁』対策支援奨励金事業に参加することで得られるメリットには、次のようなものがあります。

従業員の福利厚生が向上し満足度がアップ

配偶者手当(家族手当)の見直しなどを通じ、従業員が働きやすい環境を整備することができます。その結果、企業への信頼度や定着率の向上につなげることができます。

「年収の壁」や「就業調整」などの社会問題解決に貢献

働き手が収入制限を気にせず、能力を活かして働ける環境を整えることで、社会全体の労働力不足解消に寄与します。

働く意欲のある人が活躍できる社会づくりを支援

配偶者の収入制限を理由に就業を制限していた人々が、より自由に働ける機会を提供できます。それにより、女性のキャリア形成を支援し、ダイバーシティ推進に貢献します。

「年収の壁」対策支援奨励金の対象企業の要件

「年収の壁」対策支援奨励金の交付対象となる企業の要件は細かく指定されており、以下12の要件に該当する中小企業事業主(ただし個人事業主含む)でなければなりません。

  1. 本店又は主たる事業所が都内にある中小企業事業主であること
  2. 就業規則に「配偶者の収入要件がある家族手当」の規定があること。また、その就業規則を労働基準監督署に届出ていること
  3. 事前エントリー日から過去5年以内に「配偶者の収入要件がある家族手当」の支給実績があること。また、支給実績のある日付以降に就業規則の当該手当の記載を削除したことがないこと
  4. 東京都政策連携団体の指導監督等に関する要綱(平成 31 年3月 19 日付 30 総行革監第 91号)に規定する東京都政策連携団体、事業協力団体又は東京都が設立した法人でないこと
  5. 交付申請日の前日から起算して過去5年間に重大な法令違反等がないこと
  6. 交付申請日の前日から起算して過去5年間に国・都道府県・区市町村及び東京しごと財団等の助成事業において、不正受給による不支給決定又は支給決定の取り消しを受けたことがないこと
  7. 労働関係法令について、次のアからキを満たしていること
    ア.従業員に支払われる賃金が、東京都地域の最低賃金額(地域別、特定(産業別)最低賃金額)を上回っていること
    イ.固定残業代等の時間当たり金額が時間外労働の割増賃金に違反していないこと、また固定残業時間を超えて残業を行った場合は、その超過分について通常の時間外労働と同様に、割増賃金が追加で支給されていること
    ウ.法定労働時間を超えて労働者を勤務させる場合は、「時間外・休日労働に関する協定(36協定)」を締結し、全労働者に対し、協定で定める上限時間(特別条項を付帯した場合はその上限時間)を超える時間外労働をさせていないこと
    エ.労働基準法に定める時間外労働の上限規制を遵守していること(原則として、時間外労働は月45時間以内、年360時間以内。臨時的な特別な事情がある場合は、時間外労働・休日労働の合計が月100時間未満、複数月平均80時間(年6か月まで)、時間外労働が年720時間以内(ただし、いずれも特別条項付きの36協定締結が必要。))
    オ.労働基準法第39条第7項(年次有給休暇について年5日を取得させる義務)に違反していないこと
    カ.前記以外の労働関係法令について遵守していること
    キ.厚生労働大臣の指針に基づき、セクシュアルハラスメント等を防止するための措置をとっていること
  8. 法人都民税及び法人事業税(個人事業主の場合は、個人都民税及び個人事業税)の未納がないこと
  9. 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭23年法律第122号)第2条第1項に規定する風俗営業、同条第5項に規定する性風俗関連特殊営業、同条第11項に規定する特定遊興飲食店営業、同条第13項に規定する接客業務受託営業及びこれらに類する事業を行っていないこと
  10. 連鎖販売取引、ネガティブ・オプション(送り付け商法)、催眠商法、霊感商法など公的資金の助成先として適切でないと判断する業態を営むものではないこと
  11. 暴力団員等(東京都暴力団排除条例(平成23年東京都条例第54号。以下「条例」という)第2条第3号に規定する暴力団員及び同条第4号に規定する暴力団関係者をいう)、暴力団(同条第2号に規定する暴力団をいう)及び法人その他の団体の代表者、役員又は使用人その他の従業員若しくは構成員が暴力団員等に該当する者でないこと。
  12. 事前エントリー受付期間中に事前エントリーを行い、申請可の連絡をEメールにて受け取っていること

上記1~12のすべてを満たした場合でも、公益財団法人東京しごと財団の理事長が適正と認めない場合、交付対象とならないことがあるため注意が必要です。

「年収の壁」対策支援奨励金事業のスケジュール

「年収の壁」対策支援奨励金事業は令和6年5月15日(水)~令和7年2月28日(金)まで事前エントリー受付を行っており、募集企業数は、年10回の募集で各回100社、計1,000社が対象です。

現在、第10回(最終回)の受付が行われており、令和7年2月28日(金)23時59分に終了となります。期限が非常に近く早めのエントリーが必須となっています。

なお、事前エントリー受付期間終了後、抽選が行われます。エントリーをして直ちに交付申請できるわけではない点に注意しましょう。事前エントリーの結果はメールで通知され、当選した事業主のみ交付申請を行うことができます。交付申請の期限は、当選メール受信から1か月以内に行わなければなりません。

その後、実績報告提出までのスケジュールは以下の通りです。

  • 交付決定:令和7年4月頃
  • 取組期間(3か月以内):令和7年5月~7月頃
  • 実績報告提出期限:令和7年8月頃

「年収の壁」対策支援奨励金交付申請時提出書類

事前エントリーに当選した場合、交付申請書類の提出が必要です。。

  1. 「年収の壁」対策支援奨励金交付申請書(様式第1-1号)
  2. 「配偶者の収入要件がある家族手当」見直し計画書(様式第1-2号)
  3. 誓約書(様式第2号)
  4. 印鑑証明書(原本)
    【法人の場合】印鑑証明書(法務局で発行されたもの)
    【個人の場合】印鑑登録証明書(代表者の方の居住する区市町村で発行されたもの)
    ※発行日から3か月以内のもの
    ※電子申請の場合は不要
  5. 納税証明書(原本)※申請日時点で納期が確定した直近のもの
    【法人の場合】(1)法人都民税、(2)法人事業税(いずれも都税事務所発行)
    【個人の場合】(1)個人都民税(区市町村発行)、(2)個人事業税(都税事務所発行)
    ※法人・個人いずれの場合も(1)(2)両方が必要です
  6. 会社概要がわかるもの
    【法人の場合】履歴事項全部証明書(原本)(※発行日から3か月以内のもの)
    【個人の場合】個人事業の開業・廃業等届出書の写し
  7. 最新の就業規則一式 ※労働基準監督署届出済印(受付印)が押されたもの
  8. 賃金台帳の写し

必要書類は以上です。提出期限に遅れないよう、前もって準備しておきましょう。

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