日本政策金融公庫による「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を徹底解説

新型コロナウイルス流行の影響に伴い、一時的に業況が悪化したり、売上が落ち込んだりした方は少なくないと思われますが、その対策や新たな施策のために、助成金や補助金を活用している方はかなりいるのではないでしょうか。実はそれ以外にも「貸付」を利用する方法があることはあまり知られていないのですがご存じでしょうか?

たとえば、日本政策金融公庫では、コロナ禍で業況悪化した方向けに、『新型コロナウイルス感染症特別貸与』を行っており、その資金は設備資金や長期運転資金に充てることが可能となっています。

そこで今回は、日本政策金融公庫による『新型コロナウイルス感染症特別貸与』の概要や、審査の内容などについて詳しくご紹介していきます。

日本政策金融公庫とは?

はじめに、「日本政策金融公庫」とはどのような機関なのか、ご説明しておきましょう。
日本政策金融公庫は、経済発展・産業振興・国民生活の安定といった政策目標を達成する目的で創設された機関です。国が定めた政策に基づき、主に創業支援や中小企業の事業支援などを行っています。

基本理念の中には、「民間金融機関の補完」という役割が含まれているのも特徴のひとつ。一般の金融機関が行う金融事業を保管しつつ、国の中小企業・小規模事業者政策、農林漁業政策に基づき、法律・予算で決められた範囲内で金融機能を発揮している政府金融機関となっています。

日本政策金融公庫の『新型コロナウイルス感染症特別貸与』の概要

現在、日本政策金融公庫が行っている『新型コロナウイルス感染症特別貸付』では、

  • 国民生活事業
  • 中小企業事業

の2つが対象となっています。

それぞれの概要を見ていきましょう。

国民生活事業

国民生活事業では、新型コロナウイルス感染症の影響により、一時的に業況悪化を来している方を対象とした「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を取り扱っています。

対象者は、「新型コロナウイルス感染症の影響を受け、一時的な業況悪化を来しており、下記の(1)または(2)のいずれかに該当し、かつ中長期的に業況が回復し、発展することが見込まれる方」です。

(1) 最近1ヵ月間の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高が、前4年のいずれかの年の同期と比較して5%以上減少しているケース
(2) 業歴3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合等は、最近1ヵ月間の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高(業歴6ヵ月未満の場合は、開業から最近1ヵ月までの平均売上高)が、下記のいずれかと比較して5%以上減少している方

  • 過去3ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)の平均売上高
  • 令和元年12月の売上高
  • 令和元年10月から12月の平均売上高

資金の使途としては、「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う社会的要因等により必要とする設備資金および運転資金」に活用することが可能です。

融資の限度額は8,000万円(別枠)であり、利率は基準利率が適用されます。ただし、6,000万円を限度として融資後3年目までは基準利率-0.9%、4年目以降は基準利率となっていますので、注意しておきましょう。返済期間は、設備資金が20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金が20年以内(うち据置期間5年以内)です。担保に関しては、無担保で貸与できます。

一部の対象者については、基準利率-0.9%の部分に対して中小企業基盤整備機構から利子補給を受けることにより、当初3年間が実質無利子となりますので、利用を考えている方は窓口で相談してみると良いでしょう。

申し込みは、インターネットで24 時間 365 日申請が可能です。郵送による手続きを希望する場合には、申込みに必要な書類を準備のうえ、最寄りの支店まで郵送すれば受け付けてもらえます。また、わざわざ支店の窓口に行かずとも、「提出書類・お申込手続き」から必要書類がダウンロードできます。

中小企業事業

中小企業事業では、新型コロナウイルス感染症の影響により、一時的に売上の減少など業況悪化をきたしているものの、中長期的にはその業況が回復し、かつ発展することが見込まれる中小企業者を支援しています。

対象者は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、下記のいずれにも当てはまる方となっています。

(1) 最近1ヵ月間の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高が、前4年のいずれかの年の同期に比し5%以上減少していること。またはこれと同様の状況にあること(※)

※業歴が3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合などは、最近1ヵ月間の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高(業歴6ヵ月未満の場合は、開業から最近1ヵ月までの平均売上高)が、下記のいずれかと比較して5%以上減少していること

  • 過去3ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高
  • 令和元年12月の売上高
  • 令和元年10月~12月の平均売上高

(2) 中長期的に見て業況が回復し、かつ発展することが見込まれること

資金の用途は、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う社会的要因等により必要とする「設備資金」および「長期運転資金」となります。さらに長期運転資金には、建物等の更新に伴い一時的に施設等を賃借するために必要な資金を含んでいるのがポイントです。

融資限度額は、直接貸付で6億円、利率(年)は基準利率(※上記URL参照)となります。ただし、3億円を限度として融資後3年目までは基準利率-0.9%(注2)、4年目以降は基準利率となっていますので気を付けておきましょう。返済期間は20年以内(うち据置期間5年以内)で、無担保で借りることができます。一部の対象者は、基準利率-0.9%の部分に対して中小企業基盤整備機構から利子補給を受けることで、当初3年間が実質無利子となります。

融資の申込みに関しては、日本政策金融公庫各支店の中小企業事業の窓口で行うことが可能です。まずは、事業を営む所在地を担当する支店にご連絡してみることをおすすめします。

支店の住所・電話番号などはこちらから確認できます。また、支店の窓口に来店せずとも、公庫のホームページにある「お申込手続き・提出書類」から必要書類がダウンロードできますので、活用してみると良いでしょう。

日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸与の審査は簡単?

インターネットやSNSなどを見ると、「日本政策金融公庫の融資審査は甘い」という表現を見かけることが多々あります。確かに、日本政策金融公庫の融資審査では、しっかりと融資を受けられる条件を揃えていれば民間の金融機関よりも比較的審査が通りやすいようです。

しかし、それはあくまで「着実に準備をしてきた場合」に限ります。当然ながら、必要な準備を整えていない方には審査が下りることはありません。なぜなら、事業計画の作成や貯蓄の備え、面談対策ができていなければ、金融機関からは「返済能力の低い企業」とみなされることが少なくないためです。とはいえ、事業計画の策定や面談対策などを確実に進めていれば、審査が下りる可能性は格段に高まります。審査が下りるかどうかを不安視するよりも、しっかりと準備を進めることに注力することが大切です。

まとめ

今回は、日本政策金融公庫の『新型コロナウイルス感染症特別貸与』について詳しく見ていきました。この特別貸与を利用すれば、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う社会的要因等により必要とする設備資金や運転資金として活用することが可能となります。

しっかりと申請準備を進めておけば、審査が下りる可能性も高まりますので、売り上げ減少などの業況悪化などで悩んでいる方はぜひ申請してみてはいかがでしょうか。

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