中小企業庁は、令和6年6月25日(火)より「中小企業省力化投資補助事業」(カタログ型省力化補助金)について申請受付を開始しました。中小企業省力化投資補助事業とは、IoTやロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品をカタログに掲載し、中小企業等が選択して導入できるようにすることで、簡単かつ即効性がある省力化投資を促進する事業を意味します。
中小企業省力化投資補助金の特徴としては、
- 省力化製品が対象であること
- 自社の課題やニーズに合わせて製品を選ぶことができること
- 導入を支援する販売事業者が申請および手続きをサポートしてくれること
- 補助率が1/2であること
が挙げられていますが、この中小企業省力化投資補助事業について、2024年6月現在どのような状況にあるのかについてここでは説明していきます。
目次
中小企業省力化投資補助事業とは?
中小企業省力化投資補助事業は、カタログに登録された省力化製品を導入し、販売事業者と共同で取り組むことを目的とした事業です。そのため、公募要領に記載された要件を満たさなければ補助対象となりません。また、交付決定を受けた場合においても、全額を受け取ることができるとは限らない点には注意が必要です。
なお、交付決定から実績報告を行うまでを「補助事業期間」、また交付決定を受け、補助事業が終了してから3回目の効果報告を提出するまでを「事業計画期間」と呼びます。補助事業終了後の3年間で、毎年申請時と比較して労働生産性を年平均成長率(CAGR)3.0%以上向上させる事業計画を策定し、採択を受けた場合は、その計画に取り組む必要があるのが、この中小企業省力化投資補助事業における基本要件となります。
中小企業省力化投資補助金の補助額
補助事業者が規定する賃上げ目標を達成した場合、補助上限額が( )内の数値に引き上げられます。また、補助対象経費の総額に補助率をかけた額が補助上限額を上回る場合、補助上限額の範囲内で補助金が交付されます。補助上限額の設定は、応募・交付申請時点での従業員数によって決定されます。
補助対象 | 補助上限額 | 補助率 | |
補助対象としてカタログに登録された製品等 | 従業員数5名以下 | 200万円(300万円) | 1/2以下 |
従業員数6〜20名 | 500万円(750万円) | ||
従業員数21名以上 | 1,000万円(1,500万円) |
賃上げ目標についてですが、「事業場内最低賃金を45円以上増加させる」「給与支給総額を6%以上増加させる」ことができた場合、補助上限額が表中( )内の額に引き上げられます。
製品カタログ
令和6年6月18日時点における中小企業省力化投資補助事業としてカタログに掲載される製品カテゴリは以下の通りです。
製品カテゴリ | 対象業種 | 対象業務プロセス | |
A | 清掃ロボット | 飲食サービス業、宿泊業、製造業、卸売業、小売業 | 清掃業務 |
B | 配膳ロボット | 飲食サービス業、宿泊業、製造業、卸売業 | 配膳業務、搬送業務 |
C | 自動倉庫 | 倉庫業、卸売業、小売業、製造業 | 保管・在庫管理、入出庫 |
D | 検品・仕分システム | 倉庫業、卸売業、小売業、製造業 | 資材調達、加工・生産、検査、保管・在庫管理、入出庫 |
E | 無人搬送車(AGV・AMR) | 倉庫業、卸売業、小売業、製造業 | 資材調達、加工・生産、検査、保管・在庫管理、入出庫 |
F | スチームコンペクションオープン | 飲食サービス業、小売業、宿泊業 | 調理 |
G | 券売機 | 飲食サービス業 | 注文受付、請求・支払、顧客対応 |
H | 自動チェックイン機 | 宿泊業 | 受付案内、予約管理、請求・支払、顧客対応 |
I | 自動精算機 | 飲食サービス業、小売業 | 請求・支払、顧客対応、注文受付 |
J | タブレット型給油許可システム | 小売業 | 給油 |
K | オートラベラー | 製造業、倉庫業、卸売業、小売業 | 加工・生産、梱包・加工、保管・在庫管理 |
L | 飲料補充ロボット | 小売業 | 飲料補充業務 |
M | デジタル紙面色校正装置 | 印刷・同関連業 | 印刷 |
N | 測量機 | 建設業、専門・技術サービス業 | 調査・測量、施工、検査 |
中小企業省力化投資補助金申請のステップ
中小企業省力化投資補助金事業は次のステップで行われます。注意すべき点は、この補助金への応募・交付申請は販売事業者と共同で行う必要があることです。単独では申請できないことを念頭に置いておきましょう。また、交付決定前に購入した省力化製品は補助対象外となりますので、購入タイミングに注意しましょう。
STEP1:補助金の理解
「公募要領」から補助金制度の概要、対象となる経費、スケジュール、補助対象事業者に該当するかどうかを確認します。
STEP2:gBizID取得
補助金申請は電子申請が必須です。そのため、gBizIDプライムアカウントの取得が必要です。もしgBizIDをお持ちでない場合、またプライムアカウントでない方の場合は、「gBizID」よりアカウントを取得しておきましょう。
STEP3:カタログから製品選定
製品カタログより希望する対象製品を選定します。対象製品の詳細ページに記載されている「販売事業者一覧」より販売事業者を選定し、掲載されているサポート窓口電話番号かサポート窓口メールアドレス宛に連絡しましょう。
STEP4:販売事業者と共同申請
補助金申請は製品販売事業者と共同で事業計画を策定する必要があります。中小企業等と販売事業者は、共同事業実施者として公募期間内に販売事業者と共に申請受付システムで申請を行う必要があります。なお、中小企業の方々は販売事業者からの招待をもって専用フォームからの申請が可能です。
ちなみに、選定する製品が複数あり、複数の事業者から購入する場合には、それぞれの販売事業者に対して個別に申請を行わなければなりません。ただし、複数の別製品の購入は当面の間対象外となっています。
以上の条件をもとに、「申請における留意事項」に掲載されている提出書類を確認し、準備を行う必要があります。提出書類は次の通りです。
全事業者共通
1.【指定様式】従業員名簿(中小企業判定用)
2.貸借対照表(前期・前々期)
3.損益計算書(前期)※個人事業主で白色申告の場合は収支内訳書
損益計算書(前々期)
法人
4.履歴事項全部証明書 発行から3カ月以内のもの
5.法人税の納税証明書(その2)直近3期分
6.【指定様式】役員名簿
7.【指定様式】株主・出資者名簿
個人事業主
8.確定申告書の控え 第一表 直近1期分
9.所得税の納税証明書(その2)直近1期分
人手不足※設問の回答によっていずれかの提出が必要
10. 【指定様式】時間外労働時間
11. 【指定様式】従業員減少の確認用
12.求人募集したことを証明する書類
大幅な賃上げ対象者
13.最低賃金者の賃金台帳
省力化計画 ※販売事業者が添付
14.【指定様式】省力化効果判定シート
中小企業省力化投資補助金の補助事業第1回公募スケジュール
2024年6月25日に第1回公募の応募・交付申請期間がスタートしましたが、申請締め切りは2024年7月19日(金)17:00が予定されています。採択・交付決定日は2024年8月下旬が予定されていますが、変更になる場合もありますので、スケジュールについては逐一確認しておくようにしましょう。
中小企業省力化投資補助事業は、令和8年9月末頃までの間に複数回の公募を行い、補助事業の申請を受け付けるものとされています。それに伴い、カタログへの製品登録は公募受付期間終了の半年前程度まで随時行われます。今後目当ての製品が登録される場合もありますので、今すぐに申請するのではなくしばらく様子見の姿勢を取るのも一つの方法です。
なお、補助金の応募・交付申請時に確認する資料は次のものがありますので、気になる方は参照ください。
- 公募資料
- (別紙)公募要領新旧対照表
- 交付規定
- 応募・交付申請の手引き
- 申請における留意事項