
「レジを新しい消費税率に対応させたい。でも、買い替えや設定のやり直しにお金がかかる」。そんなお店の負担を軽くするために案内されているのが、デジタル化・AI導入補助金の「消費税率引き下げ対策」です。対象となるレジの導入や改修について、国が費用の一部を補助する仕組みです。
名前に「AI」と付いているため、何か難しいシステムを使わなければならないように感じるかもしれません。今回の対策は、店頭で使うレジや、注文・請求書を扱うシステムの対応が中心です。まずは「うちのレジを、このまま使い続けられるか」という身近なところから考えてみてください。
税率が下がるとレジにも準備が必要になる
今回の支援の背景には、飲食料品の消費税率を引き下げる政府方針があります。政府が示した案は、現在8%の軽減税率が適用されている飲食料品について、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、税率を1%にするという内容です。
ただし、2026年10月18日時点で確認できる国税庁の案内は、これから法案が国会で審議され、可決・成立することを前提とした説明です。「すでに法律が成立し、すべて決まった」と受け取らないようにしてください。レジの支援も、この政府方針への準備として公表されています。
たとえば、食品と日用品を一緒に売っているお店を考えてみましょう。税率が変われば、商品ごとの税率設定や、レシートに印字する税額などを確認する必要があります。仕入れや請求書のシステムとつながっていれば、その連携にも目を向けなければなりません。
設定を変えるだけで済む機種もあれば、販売会社による改修や、機器そのものの入れ替えを検討する場合もあるでしょう。そこで、税率変更への対応にかかる費用を支援し、営業の準備を進めやすくしようというのが、この対策の狙いです。
個人商店や小さな会社も相談できる
主に想定されているのは、中小企業や小規模事業者です。デジタル化・AI導入補助金は、もともと個人事業主も対象に含む制度ですから、「株式会社にしていないから関係ない」と決めつける必要はありません。
今回の案内にも、小規模事業者向けの補助率が示されています。食品店や持ち帰りのお弁当屋さんなど、日々の会計にレジを使っている事業者にとって、確認する価値のある内容です。ただし、食品を売っているという理由だけで利用が決まるわけではなく、事業者と導入内容の両方が条件に合う必要があります。
なお、公表チラシには「中堅企業も一部対象」との案内もあります。その具体的な範囲を含め、今回の対策の詳しい対象条件は、今後の公募要領で確認することになります。公募要領とは、申請できる人、対象になる費用、提出書類などをまとめたルールの説明書です。
買い替える方法と今あるレジを改修する方法
支援の方法は、大きく二つに分かれています。書類では「類型」という言葉が出てきますが、ここでは「どの方法でレジを対応させるかによる区分」と考えれば十分です。
スマートレジへ切り替える
一つ目は「スマートレジ類型」です。従来のレジから、タブレットなどに専用のソフトを入れて使うレジへ切り替える方法です。スマートレジでは、製品によって売上の集計や商品別の確認なども行えます。日々の集計に手間をかけているお店なら、税率への対応と一緒に、閉店後の作業を見直す機会にもなります。
対象として案内されているのは、レジ用ソフトの購入費や利用料、関連するシステムの改修費などです。レジを動かすパソコンやタブレットの購入費にも、別の補助上限が設けられています。
POSレジなどを新しい税率に対応させる
もう一つは「POSレジ類型」です。POSレジは、会計と一緒に、何がいくつ売れたかといった販売情報を記録するレジです。こちらは、POSレジや受発注・請求書管理などのシステムを改修し、新しい税率に対応させる方法が中心です。POSレジシステムの購入費なども案内に含まれています。
今の機器で十分対応できるなら、まず改修にいくらかかるのかを調べるとよいでしょう。「補助金があるから新品にする」と決める前に、今のレジを直す費用と、新しくする費用を比べる方が、自分のお店に合う方法を選べます。
また、案内にある「役務」は、設定作業、使い方の研修、マニュアル作成、保守サポートなど、人に作業してもらう費用のことです。導入後のサービスや、使いこなすための支援も最大2年間対象とされています。何がどの期間まで含まれるのか、見積書で確認しておきましょう。
補助金はいくら出るのか
金額を見るときは、「費用の何割を補助するか」と「補助金がいくらまで出るか」を分けて読むと分かりやすくなります。前者が補助率、後者が補助上限額です。
| 対象 | 公表されている補助率 | 補助上限の目安 |
| ソフト・設定などの費用 | 補助額50万円以下の部分は3/4。小規模事業者は4/5 | 対象機能が一つの場合は50万円 |
| ソフト・設定などで補助額が50万円を超える部分 | 2/3 | 対象機能が二つ以上の場合は、ソフト・役務を合わせて350万円 |
| スマートレジに使うPC・タブレット | 1/2 | 20万円 |
| POSレジ類型のレジ購入費 | 1/2 | 20万円 |
3/4は75%、4/5は80%、1/2は50%です。ソフトなどは、受け取る補助金の額が50万円を超える部分から補助率が変わります。「購入費が50万円を超えたら2/3になる」という計算ではありません。レジ本体やタブレットは別計算で、補助率は1/2です。
また、ここでいう「機能」は、会計・受発注・決済のことです。会計は帳簿や経理、受発注は注文のやり取り、決済は代金の支払いを扱う仕組み、と読み替えてください。上限350万円を使えるかどうかは、この区分で二つ以上の機能があるかを確認します。
「最大350万円」という数字は、申請すれば一律にその金額を受け取れるという意味ではありません。自分のお店で必要な費用を出し、そのうち補助対象として認められる分から計算します。
50万円の導入なら自己負担はいくらになるか
計算の例を見てみましょう。小規模事業者のお店が、次の内容でスマートレジを導入するとします。金額は税抜とし、ここに挙げた費用がすべて補助対象として認められた場合の例です。
- レジ用ソフトや初期設定などの対象経費が40万円
- レジに使うタブレットの対象経費が10万円
ソフトや初期設定は40万円の4/5なので、補助金は32万円。タブレットは10万円の1/2なので、5万円です。合わせて37万円が補助される計算となり、税抜50万円に対する自己負担は13万円になります。
ただし、消費税や補助対象にならない追加費用は、この13万円とは別に考える必要があります。実際の補助額は公募要領と費用の確認によって決まりますので、この例は自分の見積もりを読むための目安にしてください。
もう一つ、お金の用意で気をつけたいことがあります。補助金は原則として、事業を実施し、支払いなどを確認した後に受け取る仕組みです。今回の事前着手でも、導入を先に進めてから申請します。「最終的な自己負担が13万円なら、手元のお金も13万円あれば足りる」とは限りません。先に支払う金額と、その支払日を確かめておいてください。
補助金は、条件に沿って利用すれば原則として返済不要です。
今回は先に導入してから申請する方法もある
この対策で特に覚えておきたいのが「事前着手制度」です。言葉を短くすれば、「対象になるレジの導入や改修を先に行い、後から補助金を申請できる特例」です。
通常のデジタル化・AI導入補助金では、国から交付決定という正式な通知を受ける前に発注・契約・支払いをすると、補助を受けられません。しかし、税率変更への準備を間に合わせるため、今回の対策では、2026年9月15日以降の対象となる導入・改修について、事後の申請を認めると案内されています。
公表資料に載っている日程は、次のとおりです。
- 導入・改修の対象期間は、2026年9月15日から2027年3月までの方向で調整中
- 申請受付は、2027年1月頃に始まる予定
- 申請受付の終了時期は、2027年3月までの方向で調整中
ここでいう「調整中」は、締切日まで確定したという意味ではありません。現時点で「2027年3月31日までに申し込めば大丈夫」と決めつけず、正式な日付が出たら確認してください。通常枠などで現在案内されている締切りと、この消費税率引き下げ対策の受付時期も区別する必要があります。
先に買う場合は製品の確認と書類の保管を
事前着手が認められるからといって、店頭やネットで好きなレジを買い、領収書だけ出せばよいわけではありません。公表チラシでは、あらかじめ事務局に登録されたスマートレジやPOSレジなどの製品が対象とされています。申請要件を満たしている限り交付対象になるという案内ですが、製品や費用が条件に合うかどうかの確認は必要です。
販売会社に相談するときは、見積もりを頼む段階で「消費税率引き下げ対策の事前着手制度を使いたい」と伝えると、話が行き違いにくくなります。そのうえで、導入する製品の登録状況、対象になる費用、必要な書類を確認してください。
改修費や設定などの作業費については、複数の見積もりが必要になる場合があります。一社と契約してから慌てることがないよう、見積もりを何社分そろえる必要があるのかも、契約前の確認事項に入れておきましょう。
書類は、見積書、仕様書、契約書、納品書、請求書、領収書、振込の記録など、取引に関するものを一式残しておきます。電子メールで受け取った書類も同じです。後から申請するときに、「何を、いつ、いくらで導入して、どう支払ったか」を説明できるようにするためです。
まずは今のレジの型番を調べるところから
制度を利用するか迷っているなら、最初に今のレジのメーカーと型番を確認し、販売店や保守会社に連絡してみてください。聞きたいのは、新しい税率に対応できるか、設定変更や改修で済むか、費用はいくらか、ということです。
買い替えも検討する場合は、導入時の金額だけでなく、月々の利用料や保守費用まで並べて比べます。たとえば、月額1万円のサービスなら、1年で12万円、3年で36万円です。最初にいくら補助されるかに加えて、その後も無理なく払えるかを見ておくと、選び方が変わります。
実際にレジを使う従業員に画面を触ってもらうのもよい方法です。売上の集計が便利でも、会計のたびに操作に迷うようでは、忙しい時間帯の負担が増えてしまいます。毎日使う人が扱いやすく、困ったときに相談できるかまで確かめたいところです。
今回の詳しい申請ルールは、今後公表される公募要領で示されます。購入前の確認には、デジタル化・AI導入補助金の公式サイトと販売会社を使い、制度全体の相談が必要なら、地域の商工会・商工会議所などにも問い合わせてみてください。
補助額を先に決めて買い物を始めると、必要以上の設備を選んでしまいがちです。今のレジで困っていることと、税率変更のために必要な作業を書き出し、それに合う見積もりを取る。その順番なら、補助金を使うことで、お店の出費や毎日の手間がどれだけ減るのかを判断しやすくなります。



