
2025年に新設された補助金のひとつに「中小企業成長加速化補助金」があります。売上高100億円超を目指して中小企業の設備投資を支援するこの補助金はいったいどのようなものなのでしょうか?また、どのような企業が補助金受給対象となっているのでしょうか?
本記事では、中小企業成長加速化補助金の概要や仕組みについて見ていきたいと思います。
目次
中小企業成長加速化補助金とは?
「中小企業成長加速化補助金」は、売上高100億円超を目指して中小企業の大胆な設備投資を支援する制度です。補助率は50%となっており、上限はなんと最大5億円。
申請開始日時は2025年5月8日とすでに始まっていますが、申請終了日時は2025年6月9日と残り僅か。事業終了期限は2029年3月31日までとなっていますので、まずは申請準備を急ぎましょう。
中小企業成長加速化補助金概要
対象者 | 売上高100億円を目指す中小企業 ※売上高が10億円以上100億円未満である必要があります |
補助率 | 1/2以内 |
補助上限額 | 最大5億円 |
対象経費 | 建物費(拠点新設・増築等)、機械装置費(器具・備品費含む)、ソフトウェア費、外注費、専門家経費 |
補助対象要件 | 1.「100億宣言」を行っていること 2.投資額1億円以上(専門家経費・外注費を除く補助対象経費分) 3. 一定の賃上げ要件を満たす今後5年程度の事業計画の策定(賃上げ実施期間は補助事業終了後3年間) |
申請方法 | 電子申請(jGrantsを利用) |
補助事業期間 | 交付決定日から24か月以内 |
中小企業成長加速化補助金の対象者
中小企業成長加速化補助金は、その名の通り将来的に大企業並みのスケールを目指す成長意欲の高い中小企業を対象とした補助金です。一般的に、中小企業といえば地域に根ざした堅実な経営スタイルを思い浮かべる方も多いでしょうが、本補助金の対象となるのはすでに一定の売上規模がありさらに飛躍的な成長を目指している企業であって、本補助金はスタートアップや1人会社を対象としたものではない点に注意が必要です。
具体的には、直近の決算期または過去3期の売上高平均が10億円以上100億円未満であることが条件であり、事業基盤がすでに確立しており、設備投資や業務拡大に向けた次の一手を模索している企業が対象です。
また、単なる設備投資だけではこの補助金の対象にはならず、企業として「売上高100億円以上を目指す」という強い成長ビジョンについてポータルサイトを通じ、「100億宣言」として公に発信する必要があります。単なる申請書類上の意思表示ではなく、社会的に自社の成長目標を掲げることで、覚悟と責任を持って挑戦することが求められます。
なお、補助の対象となる事業は「1億円以上(税抜)の大規模な投資」でなければなりません。これは、ちょっとしたIT導入や小規模な設備更新は対象外で、本気で規模拡大に取り組むかどうかが審査の前提となることを示しています。そして、事業完了後の3年間にわたって従業員への賃上げを一定水準以上維持することも要件に含まれます。単に企業の成長を後押しするだけでなく、その成果を雇用や地域経済に還元するという「社会的な成長」を求める国の意図が表れていると言えます。
当然ながら補助対象事業は日本国内で行われる必要があります。国が支援する以上、国内産業の活性化と競争力向上につながる取り組みである必要があります。
中小企業成長加速化補助金の対象経費
中小企業成長加速化補助金では、売上高100億円超を目指して行う設備投資やシステム導入、拠点整備などにかかる費用のうち、将来的な成長に資するものが対象です。対象となるのは以下のような経費です。
建物費
工場や事業所など、ビジネス拠点の新築・増改築・改修・取得に関する費用が経費対象となります。たとえば、新工場の建設や本社機能の拡張、物流拠点の整備など物理的な生産・事業拠点の強化を目的とした投資が含まれます。
機械装置費(器具備品費を含む)
生産ラインや業務効率化に関わる機械装置、特殊設備などの導入にかかる費用は経費対象です。たとえば、製造装置、包装機、精密測定機器、ロボットアームなどの設備投資全般が該当します。オフィス機器や業務用の器具・備品も一部対象です。
ソフトウェア費
事業の効率化、DX化に向けて導入される業務システムやアプリケーションの購入・開発費用も経費対象となります。ERPや生産管理システム、顧客管理など、業務の最適化や拡張性の向上に寄与するIT投資が該当します。
外注費
補助対象事業の実施にあたり、一部業務を外部の専門業者に委託する場合の費用も経費対象です。たとえば、製造工程の一部を外注する、またはシステム開発を外部に委託する場合などがこれにあたります。
専門家経費
専門家経費とは、中小企業の成長を支援するために、外部のコンサルタントやアドバイザー等の専門家を活用した場合の費用です。経営戦略の立案支援、海外展開のアドバイス、財務管理の指導など、専門性の高い支援が対象となります。
なお、商品仕入れ代や汎用的なパソコンや文房具などの消耗品、従業員の人件費(給与・賞与等)、飲食・接待費や旅費交通費、補助事業の目的に直接関係しない費用は経費対象外となります。
中小企業成長加速化補助金申請の流れ
中小企業成長加速化補助金を活用するためには、事前準備から補助金の受給に至るまで段階的なプロセスを踏む必要があります。
まず準備段階として、電子申請に不可欠な「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。申請から取得までには1〜2週間程度かかるため、取得していない方は早めの対応が必要です。
並行して行うべき重要な作業が「100億宣言」で、自社が将来的に売上高100億円超を本気で目指していることを公的に表明する必要があります。単なる形式的な手続きではなく、経営者としての意思表明とも言える重要な儀式となります。
準備が整った企業は申請を行います。電子申請システム「jGrants」から必要書類を提出することになりますが、事業計画書、直近の決算書、補助対象となる設備の詳細、100億宣言の内容などの提出が必要です。期限は6月9日18時までと厳密に定められており、期日を過ぎた場合はどんなに有望な計画でも審査対象とはなりませんので注意しましょう。
提出された申請内容は、書類審査を通して精査されます。最終的な採択結果が9月上旬に公表される予定となっており、選ばれた企業はそこで交付申請に進むことが可能。正式な契約締結を経て補助事業がスタートします。
事業実施期間は最長24か月となっていますので、その間に計画通りの設備導入やシステム構築などを行いながら、定期的に進捗報告を行います。事業が完了した際には、成果を示す実績報告書を提出、それが承認された段階で補助金が精算され、実際の支払いが行われます。なお、支給は後払い方式であるため、企業側には一定の資金繰りの備えも求められる点は注意が必要です。
事業終了後は3年間にわたり、賃上げ要件などが実際に履行されているかどうかがフォローアップされますので気を抜くことができません。
まとめ
中小企業成長加速化補助金は、単なる費用軽減のための制度ではなく、企業の長期的かつ本格的な成長戦略に対して公的にリスクをシェアする支援の仕組みとなっています。一見すると条件は厳しく見えるかもしれませんが、明確な成長ビジョンと大胆な投資計画を持つ企業にとってはまさに飛躍のチャンスとなる制度といえるでしょう。是非対象となる企業は、早急に資料を揃えて申請することをおすすめします。