新規事業への進出によって企業の成長・拡大を図ろうと考えている中小企業の方に向けた「中小企業新事業進出補助金」。これは、中小企業等が既存事業とは異なる新たな市場や高付加価値事業への進出を支援するための制度です。
この中小企業新事業進出補助金の第1回公募期間が発表され、令和7年4月22日(火)~令和7年7月10日(木)18:00までに応募申請することが決定されています。応募受付開始は6月中旬、補助金交付候補者の採択結果発表は令和7年10月頃が予定されています。採択された事業者は、発表日から2か月以内に交付申請を行わなければなりません。
これから準備される方はこの期間内にすべての資料を準備して提出しなければなりませんが、検討される方は、ぜひこの記事を参考に補助金申請に必要な情報を確認していただければと思います。
目次
中小企業新事業進出補助金の概要
中小企業新事業進出補助金は次のような内容のものとなります。
補助金対象者
補助金対象者は、日本国内に本社および補助事業の実施場所を有する中小企業等と定められていますが、ここでいう中小企業に該当するのは、
(1)資本金または常勤従業員数が下表の数字以下となる会社または個人であること
業種 | 資本金 | 常勤従業員数 |
製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウェア業または情報処理サービス業 | 5,000万円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
(2)「中小企業者等」に含まれる「中小企業者」以外の法人であること
- 「中小企業等経営強化法(平成11年法律第18号)」第2条第1項第6号~第8号に定める法人(企業組合等)
- 「法人税法(昭和40年法律第34号)」別表第2に該当する法人(一般財団法人及び一般社団法人については、非営利型法人に該当しないものも対象となる)
- 「農業協同組合法(昭和22年法律第132号)」に基づき設立された農事組合法人
- 「労働者協同組合法(令和2年法律第78号)」に基づき設立された労働者協同組合
- 法人税法以外の法律により公益法人等とみなされる法人
のいずれかの法人に該当していること。ただし、従業員数が300人以下に限る
(3)特定事業者の一部
常勤従業員数が次の表の数字以下となる会社または個人のうち、資本金の額又は出資の総額が10億円未満であること
業種 | 常勤従業員数 |
製造業、建設業、運輸業 | 500人 |
卸売業 | 400人 |
サービス業又は小売業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 300人 |
その他の業種(上記以外) | 500人 |
- 生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会の直接または間接の構成員の3分の2以上が、常時300人(卸売業を主たる事業とする事業者については400人)以下の従業員を使用する者であり、10億円未満の金額をその資本金の額または出資の総額とするものであるもの
- 酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会、酒販組合、酒販組合連合会、酒販組合中央会の直接または間接の構成員たる酒類製造業者の3分の2以上が、常時500人以下の従業員を使用する者であり、10億円未満の金額をその資本金の額または出資の総額とするものであるもの
(酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会の場合)
その直接または間接の構成員たる酒類販売業者の3分の2以上が、常時300人(酒類卸売業者については400人)以下の従業員を使用する者であり、10億円未満の金額をその資本金の額または出資の総額とするものであるもの - 内航海運組合、内航海運組合連合会の直接または間接の構成員たる内航海運事業を営む者の3分の2以上が常時500人以下の従業員を使用する者であり10億円未満の金額をその資本金の額又は出資の総額とするものであるもの
- 技術研究組合の直接又は間接の構成員の3分の2以上が、常勤従業員数が次の表の数字以下となる会社または個人のうち、資本金の額又は出資の総額が10億円未満であるまたは企業組合、協同組合であること
(4)対象リース会社
中小企業等がリースを利用し機械装置またはシステムを導入する場合、中小企業等がリース会 社に支払うリース料から補助金相当分が減額されることなどを条件として、中小企業等とリース会社の共同申請を認め、機械装置またはシステムの購入費用についてリース会社を対象に補助金を交付することが可能となります。
補助率
中小企業新事業進出補助金の補助率は「1/2」です。
補助金額
中小企業新事業進出補助金の補助金額は従業員数に応じて次の通りに定められています。なお、賃上げ特例の適用による補助上限額の引上げを受ける事業者の場合には、かっこ内の補助上限額が適用されます。
従業員数 | 補助金額 |
従業員数20人以下 | 750万円~2,500万円(3,000万円) |
従業員数21~50人 | 750万円~4,000万円(5,000万円) |
従業員数51~100人 | 750万円~5,500万円(7,000万円) |
従業員数101人以上 | 750万円~7,000万円(9,000万円) |
補助事業期間
中小企業新事業進出補助金の補助事業期間は、交付決定日から14か月以内となっています。ただし採択発表日からは16か月以内です。
補助対象となる経費
中小企業新事業進出補助金の補助対象となる経費ですが、機械装置・システム構築費、建物費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、広告宣伝・販売促進費に限定されます。これ以外の経費に関しては補助対象外となりますので注意しましょう。
- 家賃、水道光熱費、通信費などのランニングコスト
- 自社の人件費
- 税理士報酬や訴訟費用
- 自動車・船舶・航空機の購入費
- フランチャイズ加盟金
- 再生可能エネルギー発電設備(売電目的の場合)
中小企業新事業進出補助金の申請要件について
中小企業新事業進出補助金の申請には、次の基本要件を満たす3~5年の事業計画を策定する必要があります。
新事業進出要件
「新事業進出指針」に示す「新事業進出」の定義に該当する事業であること。つまり自社にとって新製品または新サービスを新たな顧客に提供する新たな挑戦であること
付加価値額要件
補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、付加価値額(または従業員一人当たり付加価値額)の年平均成長率が4.0%以上増加する見込みであること
賃上げ要件
補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、以下のいずれかの水準以上の賃上げを行うこと
- 一人当たり給与支給総額の年平均成長率が、事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上増加すること
- 給与支給総額の年平均成長率が2.5%以上増加すること
※目標値未達の場合、補助金返還義務が生じます
事業場内最賃水準要件
補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、毎年事業所内最低賃金が補助事業実施場所都道府県における地域別最低賃金より30円以上高い水準であること
※目標値未達の場合、補助金返還義務が生じます
ワークライフバランス要件
次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表していること
金融機関要件
補助事業の実施にあたって金融機関等から資金提供を受ける場合、資金提供元の金融機関等から事業計画の確認を受けていること
賃上げ特例の適用
賃上げ特例の適用を受ける場合の追加要件として、大幅な賃上げを行う事業者は、補助上限額の引き上げが適用されますが、この特例を受けるには、補助事業実施期間内に「給与支給総額を年平均6.0%以上増加させること」「事業場内最低賃金を年額50円以上引き上げること」が必要です。
※目標値未達の場合、補助金返還義務が生じます
まとめ
中小企業新事業進出補助金は、新事業への挑戦を目論む中小企業を支援するための制度です。その際にかかる設備投資や関連経費の一部を補助することで、中小企業等の成長・拡大を促進してくれます。
補助金の申請には複数の要件を満たす必要があるだけでなく、事業計画書をはじめ、決算書、収益事業を行っていることを証明する書類(法人の場合は確定申告書別表一・法人事業概況説明書の控え、個人の場合は確定申告第一表・青色申告決算書(または収支内訳書))、固定資産台帳など、準備に時間がかかる書類もあります。申請を予定している方は、早めの準備と対応を心掛けましょう。