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展示会出展助成事業とは?都内中小企業が展示会出展費用を抑えて販路拡大を目指せる助成制度
展示会への出展は、新規取引先の開拓、自社商品のPR、既存顧客との関係強化、業界内での認知度向上など、企業にとって大きなチャンスになります。特にBtoBビジネスを行う中小企業にとっては、展示会の場で直接商談できることが大きなメリットです。Web広告や営業メールだけでは伝わりにくい商品の強み、実物の質感、サービスの具体的な活用方法を、来場者に直接説明できるからです。
一方で、展示会に出展するには少なくない費用がかかります。小間料、ブース装飾費、展示に必要な備品、パンフレットやカタログ制作費、会場への輸送費、場合によっては動画制作費や広告掲載費なども必要になります。出展したい気持ちはあっても、「費用負担が大きい」「本当に成果が出るかわからない」「売上が落ちている時期に大きな投資をするのは不安」と感じる企業も少なくありません。
※展示会で自社ブースを出すために、主催者へ支払う出展スペースの利用料のことです。展示会場内の一区画を借りる費用で、ブースの場所代と考えるとわかりやすいです。
そこで活用を検討したいのが、東京都中小企業振興公社の「展示会出展助成事業」です。この制度は、都内中小企業の販路拡大を支援するため、展示会出展にかかる経費の一部を助成するものです。令和8年度の募集要項では、助成限度額は最大150万円、助成率は助成対象と認められる経費の3分の2以内とされています。つまり、対象経費として認められる支出であれば、その一部について助成を受けられる可能性があります。
展示会出展助成事業の目的
展示会出展助成事業の目的は、都内中小企業の経営基盤の強化と販路拡大を支援することです。具体的には、積極的にPR展開を図る企業が展示会に出展する際、その費用の一部を助成することで、新たな商談機会の創出や売上向上につなげることを目指しています。
展示会は、単なる宣伝の場ではありません。来場者と直接会話し、商品やサービスに対する反応を確認できる場でもあります。見込み客の悩みを聞き、競合との差別化ポイントを説明し、商談につなげることができます。また、展示会で得た名刺や問い合わせ情報は、その後の営業活動にも活用できます。そのため、販路拡大を本格的に進めたい企業にとって、展示会出展は非常に有効な施策です。
ただし、展示会は費用が先に発生します。小間を確保し、ブースを整え、配布物を準備し、展示品を搬入する必要があります。成果が出るまでに時間がかかる場合もあります。その負担を軽減し、都内中小企業が積極的に販路開拓へ挑戦しやすくするのが、この助成事業の大きな役割です。
助成額は最大150万円、助成率は3分の2以内
令和8年度の展示会出展助成事業では、助成限度額が150万円とされています。助成率は、助成対象と認められる経費の3分の2以内です。たとえば、助成対象経費として認められる費用が150万円だった場合、その3分の2にあたる100万円が助成対象額の目安になります。対象経費が300万円あった場合でも、助成限度額は150万円までとなります。
ただし、注意したいのは「支払った費用すべてが対象になるわけではない」という点です。募集要項で定められた対象経費に該当し、さらに必要書類や証拠書類で確認できるものだけが対象になります。また、助成金は原則として後払いです。先に企業側が支払いを行い、展示会出展や支払いが完了した後に実績報告を行い、審査・完了検査を経て助成金額が確定し、その後に振り込まれる流れです。
そのため、助成金を受けられる可能性があるからといって、手元資金なしで展示会に出展できるわけではありません。いったん自社で費用を立て替える必要があるため、資金繰りの確認も重要です。
対象となる企業
この助成事業の対象となるのは、東京都内で実質的に事業を営んでいる中小企業者です。法人の場合は、申請日時点で東京都内に登記簿上の本店または支店があることが必要です。個人事業者の場合は、開業届などにより都内で事業を行っていることを確認できる必要があります。
また、単に都内に住所や登記があるだけでは不十分です。募集要項では「都内で実質的に事業を営んでいること」が求められています。これは、登記簿や開業届に記載された都内所在地において、客観的に都内に根付く形で事業活動が行われていることを意味します。
さらに、申請には直近2期分の確定申告書類の提出が必要です。法人であれば法人税申告書、個人事業者であれば所得税及び復興特別所得税の確定申告書などが求められます。創業間もない企業や、休眠・休業期間がある企業、決算期が11か月以下の場合などは、要件を満たさない可能性があるため注意が必要です。
売上減少・損失計上などの要件もある
この助成事業は、都内中小企業であれば誰でも申請できる制度ではありません。申請要件の一つとして、直近決算期の売上高が1期前と比較して減少している、または直近決算期で損失を計上していることなどが挙げられています。
法人の場合は、営業利益、経常利益、当期純利益のいずれかで損失を計上しているかどうかが確認されます。個人事業者の場合も、青色申告や白色申告の書類上の所得金額などで判断されます。
売上減少や損失計上に該当しない場合でも、所定の支援である「グロースサポート」の証明書を提出できる場合には、申請要件を満たせる可能性があります。ただし、募集要項では、所定の「経営分析」と「グロースサポート」は別物であると説明されています。申請前に必要な手続きを混同しないことが大切です。
都内の商工会議所・商工会などが行う経営支援。助成金申請では、売上減少や損失計上の代替要件として使える場合がある。
申請前に経営分析を受ける必要がある
展示会出展助成事業では、申請前に所定の経営分析を受け、この助成事業の利用が有効であると認められていることが必要です。具体的には、都内商工会議所・商工会、東京都商工会連合会で実施される「中小企業活力向上プロジェクトアドバンスプラス」の無料経営分析を受ける必要があります。
この点は非常に重要です。展示会に出たいからといって、すぐにJグランツで申請すればよいわけではありません。事前に経営分析を受け、必要書類を揃え、申請概要書を作成し、GビズIDプライムを取得しておく必要があります。
特にGビズIDプライムは、取得までに時間がかかる場合があります。募集要項でも、国の審査によりID発行まで時間がかかるため、余裕を持って準備するよう案内されています。申請期限の直前に準備を始めると、GビズIDが間に合わず申請できない可能性があります。
対象となる展示会の条件
助成対象となる展示会は、申請事業者の販路拡大を主たる目的とした展示会です。特に重要なのは、事業者との商談を主たる目的とする展示会であることです。一般消費者向けイベントや販売会、特定の顧客だけを対象とした催しなどは、対象外となる可能性があります。
また、主催者が発行する出展案内や出展要項が公開され、公募されている展示会である必要があります。申請企業が主催または運営に関わる展示会は対象外です。自社の役員や従業員が兼務している法人等が主催・運営に関わる展示会も対象外となります。
さらに、申請時点で販売を開始している自社商品または自社取扱商品を展示する必要があります。試作品のPRや市場調査を主目的とした出展は対象外とされています。つまり、「これから売る予定の商品を試しに見せる」ための出展ではなく、すでに販売している商品やサービスの販路拡大を目的とした出展である必要があります。
共同出展にも注意が必要です。同一小間内に複数企業で出展する場合、他社名を掲示する場合、他社商品を紹介する場合、隣接する他社小間と一体に見える装飾を行う場合などは、共同出展とみなされ、助成対象外となる可能性があります。関連会社、親会社、子会社、グループ会社であっても「他社」と扱われる点にも注意が必要です。
販売を行う出展は対象外
展示会というと、その場で商品を販売できるイベントを思い浮かべる方もいるかもしれません。しかし、この助成事業では、販売を行わない出展であることが条件とされています。目的はあくまで販路拡大や商談機会の創出であり、会場で商品を販売することではありません。
また、起業家やファンド等からの資金調達を目的とする出展も対象外です。展示会出展助成事業は、投資家向けピッチイベントや資金調達イベントのための制度ではなく、事業者との商談や取引先開拓を目的とした展示会出展を支援する制度です。
オンライン展示会については、リアルタイムで商談できるチャット機能などのオンラインシステムがあり、会期が定められていることが必要です。ただし、契約や販売を可能とするシステム・機能が実装されている場合は対象外とされています。
助成対象となる経費
助成対象経費は、大きく「展示会等参加費」と「販売促進費」に分かれます。展示会等参加費には、出展小間料、資材費、輸送費、EC出店初期登録料が含まれます。販売促進費には、印刷物制作費、動画制作費、広告掲載費、サイト制作・改修費が含まれます。
ただし、重要な条件があります。展示会等参加費のうち、「出展小間料」または「EC出店初期登録料」のいずれか、または両方の申請が必須です。資材費、輸送費、販売促進費だけの申請はできません。たとえば、パンフレット制作費だけ、動画制作費だけ、輸送費だけで申請することはできないということです。
出展小間料は、展示会に出展するための小間料が対象です。オンライン展示会の場合は、オンライン出展基本料が対象となる場合がありますが、助成限度額は20万円です。資材費は、小間内の装飾委託費、展示に必要な什器・備品等のリース代、光熱水費などが対象です。ただし、助成事業終了後も使用できる特注品や資材の購入費、タペストリー、横断幕、社名入りクロス、什器・備品の制作や購入などは対象外とされています。
輸送費は、展示品や展示用資材、配布用印刷物などを自社と展示会場の間で運送する委託費が対象です。経由地を含む輸送や、発着地が不明確なもの、レンタカー代、ガソリン代、駐車場代などは対象外です。
EC出店初期登録料は、モール型ECサイトへ初めて出店する場合の初期登録料が対象です。ただし、運用サービス、構築、デザイン、その他オプション費用などは対象外です。クラウドファンディングやフリーマーケットサイトへの登録料も対象外とされています。
販売促進費の対象範囲
販売促進費としては、印刷物制作費、動画制作費、広告掲載費、サイト制作・改修費が対象になります。
印刷物制作費は、自社や自社商品、自社取扱商品をPRするためのチラシやカタログなど、紙媒体の印刷物制作費が対象です。ただし、助成対象期間内に展示会の自社小間内で配布することが必要です。名刺、封筒、手提げ袋、うちわ、ファイル、取扱説明書など、販売促進以外の用途にも使えるものは対象外です。
動画制作費は、自社や自社商品をPRするための動画制作費が対象です。ただし、展示会の自社小間内で放映する必要があり、対象となる動画は1種類のみです。外部業者に委託せず自社で制作した動画や、素材の購入だけの契約は対象外です。
広告掲載費は、展示会主催者が発行するガイドブックや、展示会への出展を周知するための新聞・雑誌への広告掲載費が対象です。広告掲載枠に係る費用のみが対象で、デザイン費や素材制作費は含まれません。また、出展する展示会名等の記載がない広告は対象外です。
サイト制作・改修費は、自社Webサイトを初めて制作する場合、または既存の自社Webサイト全体を一新する場合の制作委託費が対象です。一部ページのみの更新や、複数サイトのうち1サイトだけの改修、別サイトを追加するだけの場合は対象外です。販売管理システム、予約・決済システム、ショッピングカート、自社ECなどの機能を含む場合も対象外となるため、通常のWeb制作費であっても内容に注意が必要です。
申請方法はJグランツのみ
申請は、国が提供する電子申請システム「Jグランツ」でのみ受け付けられます。持参、郵送、電子メールなど、Jグランツ以外の方法では申請できません。Jグランツを利用するためには、GビズIDプライムアカウントが必要です。
申請受付は全10回に分かれており、各回の最終日は16時締切です。令和8年4月1日から令和9年1月14日までの間に、規定された期間ごとに申請を行う形です。申請回によって交付決定日、出展可能開始日、助成対象期間の終了日が異なるため、自社が出展したい展示会の日程と照らし合わせて、どの回で申請すべきかを確認する必要があります。
特に注意したいのは、出展可能期間です。出展できるのは、交付決定日が属する月の翌月1日以降かつ助成対象期間内に開催される展示会です。すでに会期が迫っている展示会については、申請しても対象にならない可能性があります。展示会の日程から逆算して、早めに申請準備を進めることが重要です。
申請に必要な主な書類
申請時には、申請概要書、経営分析報告書、履歴事項全部証明書または開業届、会社案内、納税証明書、直近2期分の確定申告書類などが必要です。さらに、出展小間料を申請する場合は、展示会主催者が発行する出展要項等も必要です。
出展要項には、主催者、会期、会場、開催目的、来場対象者、小間料などが記載されている必要があります。海外展示会などで日本語以外の書類を提出する場合は、該当箇所に和訳を追記する必要があります。小間料が外貨表記の場合は、申請概要書の金額と整合するよう、適用した為替レートや算出根拠を明記する必要があります。
EC出店初期登録料を申請する場合は、ECサイトの出店登録要項が必要です。サイト制作・改修費を申請する場合は、現在の全自社サイトの全ページ、要求仕様書などが必要になります。
書類不備があると、Jグランツ上で差戻しになる場合があります。また、公社が指定する期限までに修正や追加資料の提出ができない場合、申請却下となる可能性もあります。申請後に提出書類の加筆や修正はできないため、提出前の確認が非常に重要です。
交付決定後に注意すべきこと
交付決定は、助成対象として採択されたことを示すものですが、最終的な助成金額の支払いを保証するものではありません。実際の助成金額は、事業実施後の実績報告、完了検査、書類確認を経て確定します。申請時に認められた予定額よりも、最終的な助成金額が減額される場合もあります。
交付決定後は、事務手続き説明会への参加が必須です。説明会には、実際に事務を担当する自社の社員・役員が出席する必要があります。また、出展や発注、契約、支払いなどは、交付決定時に案内される「事務の手引き」に沿って行う必要があります。
経費の支払いは、原則として助成事業者名義の金融機関口座からの振込払いです。代表者個人や社員の口座から振り込んだ費用は対象外となります。現金払いは総額10万円未満で振込が困難な場合など、一定条件を満たす場合に限られます。クレジットカード払いも、助成事業者名義のカードであり、助成対象期間内に利用日と引き落としが確認できることなど、厳しい条件があります。
実績報告と証拠書類が重要
展示会出展後は、全ての出展と支払いが完了した後、原則として2か月以内を目途にJグランツで実績報告を提出します。実績報告では、実績報告書のほか、出展等の履行確認資料、経費の支払確認資料が必要です。
たとえば、出展小間料については、展示会主催者発行の出展要項、会場案内図やガイドブック、開催時の自社小間のカラー写真などが必要です。準備中の写真ではなく、開催時の写真が求められる点に注意が必要です。資材費や印刷物制作費、動画制作費についても、実際に展示会場で使用・配布・放映していることが写真などで確認できなければ、対象外となる可能性があります。
支払確認資料としては、見積書、契約書または発注書・請書、納品書または業務完了報告書、請求書、振込控え、通帳や入出金明細などが必要です。宛先は助成事業者名であることが必要です。書類の宛名が個人名になっていたり、支払名義が異なっていたりすると、対象外となる可能性があります。
対象外経費に注意
募集要項では、助成対象外となる経費も細かく定められています。振込手数料、交通費、レンタカー代、ガソリン代、宿泊費、飲食費、雑費などの間接経費は対象外です。消費税や印紙代などの租税公課も対象外です。
また、調査、提案、打ち合わせ、コンサルタント的要素を含む経費も対象外です。助成対象期間内に契約、納品、支払いまで完了していない経費も対象外となります。親会社、子会社、グループ企業、役員や社員を兼任している会社、代表者の親族が経営する会社など、関連会社との取引も対象外です。
さらに、出展しなかった展示会に係る経費は、キャンセル料、資材費、輸送費などを含めて対象外です。申請書に記載した展示会から変更する場合には、事前にJグランツで所定の手続きを行い、公社の承認を得る必要があります。承認前に契約や支払いを行った場合、対象外となるため注意が必要です。
この助成事業を活用すべき企業
展示会出展助成事業は、都内で事業を営む中小企業のうち、売上減少や損失計上などの状況がありながらも、展示会を通じて新規取引先を開拓したい企業に向いています。特に、自社商品や自社取扱商品をすでに販売しており、展示会で具体的な商談につなげられる企業にとっては、活用価値の高い制度です。
たとえば、製造業で新しい取引先を探したい企業、BtoBサービスを展示会で紹介したい企業、海外展示会に出展して販路を広げたい企業、展示会出展に合わせてカタログや動画、Webサイトを整備したい企業などは、制度の対象となる可能性があります。
一方で、単なる広告宣伝だけを目的とする場合、一般消費者向け販売イベントへの出展、共同出展、試作品PR、市場調査目的の出展などは対象外となる可能性があります。申請前には、自社の出展目的が「販路拡大」や「事業者との商談」に合致しているかを確認する必要があります。
まとめ
令和8年度の展示会出展助成事業は、都内中小企業が展示会を活用して販路拡大を目指す際に、非常に心強い制度です。助成限度額は最大150万円、助成率は対象経費の3分の2以内とされており、展示会出展にかかる費用負担を大きく軽減できる可能性があります。
ただし、申請には多くの要件があります。都内で実質的に事業を営んでいること、直近2期分の確定申告書類を提出できること、所定の経営分析を受けていること、売上減少や損失計上などの要件を満たすこと、対象となる展示会や経費が募集要項に合っていることなど、事前確認が欠かせません。
また、申請はJグランツのみで行われ、GビズIDプライムの取得が必要です。各回の申請締切は16時であり、申請期間も決まっています。展示会の日程から逆算し、経営分析、GビズID取得、必要書類の準備、申請概要書の作成を早めに進めることが成功のポイントです。
展示会は、企業の新しい取引先開拓や売上向上につながる大きな機会です。しかし、出展費用の負担が大きいため、計画的な準備が必要です。展示会出展助成事業を上手に活用すれば、費用面の不安を抑えながら、より積極的な販路拡大に取り組むことができます。出展を検討している都内中小企業は、まず募集要項を確認し、自社が対象となるか、出展予定の展示会が条件を満たすか、必要書類を揃えられるかを早めに確認することが大切です。



