
士業のひとつに「中小企業診断士」があります。その資格試験は、一次試験と二次試験を合わせた合格率が約4%程度と非常に難関であり、中小企業診断士の資格を取得することで、高いステータスを得られるといっても過言ではありません。
では、中小企業診断士とはどのような仕事をするのでしょうか?また、この資格を活かして独立起業するには、どのような手順を踏む必要があるのでしょうか?さらに、どの程度の収入が見込めるのでしょうか?
今回は、中小企業診断士として起業する方法や、その魅力について詳しく見ていきたいと思います。
目次
中小企業診断士とは?
中小企業診断士とは、中小企業の経営課題の改善や成長支援を専門とする経営コンサルタントです。中小企業が抱えるさまざまな課題に対し、現状分析を行い、最適なプランを提案し、その実行をサポートするのが主な業務です。
特徴的なのは、独立して活動している中小企業診断士が全体の約66%を占める点です。つまり、多くの中小企業診断士が資格を活かして独立起業し、企業向けのコンサルティングサービスを提供しています。
中小企業診断士の資格について
中小企業診断士を名乗るためには、中小企業診断士の資格が必要です。経営コンサルタントとして活動する場合、資格がなくてもビジネスは可能ですが、「中小企業診断士」の肩書きを使用して活動するには、必ず資格を取得しなければなりません。
資格を取得するためには、一次試験と二次試験に合格し、その後、実務補習や実務経験を経て登録を行う必要があります。一次試験の科目は「経済学・経済政策」「財務・会計」「企業経営理論」「運営管理(オペレーション・マネジメント)」「経営法務」「経営情報システム」「中小企業経営・中小企業政策」の7科目にわたり、多岐にわたる内容が問われます。
一次試験は年齢、性別、学歴に関係なく受験可能ですが、二次試験を受けるためには、当年または前年に一次試験に合格していること、または特定の省令に基づき一次試験を経ずに受験資格を持つことが条件です。二次試験は筆記試験と口述試験で構成されています。
2023年度のデータによると、一次試験の合格率は29.6%、二次試験は18.6%と報告されています。しかし、合格には約1,000時間の勉強時間が必要とも言われており、非常に難易度の高い資格試験として知られています。
中小企業診断士の仕事
中小企業診断士の実務は、企業の経営診断を通じて問題点を抽出し、改善策を提案することが主な役割です。具体的には、財務分析による資金繰り改善、マーケティング戦略の立案、生産性向上のための業務プロセスの見直し、新規事業の計画策定など、幅広いサポートを行います。また、補助金や融資の申請支援、事業承継や事業再生のサポートなど、経営者が直面する重要な意思決定を支援することも重要な業務の一つです。
中小企業診断士は、独立してコンサルタント業務を行うケースが多い一方で、企業に勤めて自社の経営改善に取り組むこともあります。また、金融機関や公的機関、商工会議所、地域振興機関などで専門家として活動し、地域経済の活性化や中小企業のネットワーク構築に貢献する診断士もいます。
中小企業診断士として起業するのに求められるスキル
中小企業診断士として独立起業するには、資格を持っているだけでは十分ではありません。仕事を安定的に獲得し、クライアントの信頼を得るためには、次のようなスキルを身につけておくことが重要です。
経営に関する幅広い知識
中小企業診断士には、経営全般に関する幅広い知識が求められます。経営戦略、マーケティング、財務・会計、人事、生産管理、情報システム、経営法務など、経営に必要な知識を網羅的に理解しておく必要があります。
ただし、独立起業したばかりの診断士は、実際に経営を経験したことがない場合も少なくありません。そのため、経営者からの信頼を得るには、自身が中小企業診断士として事業を継続的に運営し、説得力を持たせることが重要です。実務を通じて学んだ知識を活用し、クライアントの課題解決に貢献することで、信頼と実績を築いていく必要があります。
マルチな分析力
中小企業診断士には、企業の現状を正確に把握し、課題を見つけ出すための高度な分析力が求められます。たとえば、財務データや市場動向を読み解き、企業が抱える課題の根本原因を明らかにする能力が必要です。
さらに、分析結果に基づいて、実行可能な改善策を提案し、それを実現するための問題解決能力も不可欠です。診断士としての役割は、単に問題を指摘するだけでなく、具体的な行動計画を示し、企業の成長を支援することにあります。
コミニケーションスキル
中小企業診断士だけでなく、あらゆるビジネスパーソンにとって、対人コミュニケーションスキルは欠かせません。特に、中小企業診断士には、経営者や従業員との信頼関係を築く力が求められます。日々の円滑な連絡はもちろん、具体的な提案を分かりやすく伝えるプレゼンテーション能力や説得力も非常に重要です。
どれだけ豊富な知識を持っていても、それを適切に伝えるスキルがなければ意味がありません。もし自分のコミュニケーションスキルに課題を感じている場合は、日常の会話ややり取りの中で、相手に自分の意図を正確に伝えるにはどうすれば良いかを意識し、改善を心がけることが必要です。
中小企業診断士としての収入
中小企業診断士は専門性の高い仕事であり、平均年収は500万~800万円とされています。独立起業した診断士の場合、成果に応じて収入が増えるため、年収1,000万円を超える人も少なくありません。
しかし、収入が伸び悩む診断士がいるのも事実です。集客力の不足や実績の少なさから仕事を獲得できず、独立後に業績不振で廃業するケースもあります。士業全体では廃業率が約6割とも言われ、事業を継続することの難しさを理解しておく必要があります。
収入を安定させ、顧客を増やすためには、専門スキルだけでなく営業力や集客力を身に付けることが重要です。最近ではSNS、ブログ、動画を活用してプロモーションを行う診断士も増えていますが、こうした手法が苦手な場合は、アウトソーシングや人脈づくりに注力するのも一つの方法です。特に、紹介を通じて顧客を増やす努力をすることが大切です。
例えば、一般社団法人中小企業診断協会に加盟すると、研修やセミナーを通じて情報交換の機会が得られます。一定のコストはかかりますが、営業コストとして前向きに投資を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
中小企業診断士は、経営層に対して経営改善のアドバイスを行うことが多く、資格保有者の年齢層は比較的高めとされています。しかし、近年では若い経営者も増えており、同世代の若い中小企業診断士によるアドバイスを求める層も一定数存在します。
独立起業を目指す際には、年齢を気にせず、自信を持ってチャレンジしてみることをおすすめします。経験や知識を活かし、中小企業の成長を支援することで、やりがいと成功を手にするチャンスが広がります。