国から交付されるお金といえば「給付金」や「補助金」、「助成金」などがあります。これらは基本的に返済が不要となっているものの、誰でも受けられるものではなく審査や要件が必要となるものです。一般的には、どれも似たようなイメージがあることから、その違いについてあまり気にしたことがない人もいるかもしれません。しかしそれぞれ支給される金額帯も異なりますし、手間がかかります。
今回は、給付金、補助金、助成金の違いについて、それぞれの特徴などを交えてお伝えしていきます。
給付金、補助金、助成金とは?
給付金 | 補助金 | 助成金 | |
目的 | 緊急時の救済 | 設備投資など | 雇用や労働環境改善 |
対象者 | 法人、個人事業主、一般 | 法人、個人事業主 | 法人、個人事業主 |
審査・要件 | ゆるい | 厳しい | 厳しい |
支給 | 即時 | 後払い | 後払い |
管轄 | 国、地方自治体 | 経済産業省 | 厚生労働省 |
給付金、補助金、助成金の3つのどれも国や地方公共団体、民間の団体からお金が支給されるものです。
ここからは3つの違いについて細かく見ていきます。
給付金
給付金とは、国や地方自治体が法人企業や個人事業主、一般国民に対してお金を支給するものです。給付金だけは一般も対象となるケースとなっています。2020年に蔓延したコロナウイルスにより、事業停止や時短営業を強いられた飲食店や商業施設は大きな話題になりましたが、国民を含め企業などが事業継続を目的とした支援金として、給付金をもらったことは記憶に新しいと思います。
コロナ禍で支給された給付金として以下のようなものがありました。
持続化給付金
持続化給付金は、コロナ禍で減収を強いられた法人が事業継続できるために支給された給付金です。法人企業はもちろん個人事業主も給付対象とされ、2019年以前より事業収入が得ている企業でその後も事業継続の意思があり、かつ月の売上が対前年度比50%以上の減少があった場合、法人で最大200万円、個人事業主で100万円の支給を受けることができました。事業計画書の提出等が不要であったため、売上の推移を示した書類の提出で受けられるといった簡便さが魅力ではありましたが、その結果多くの不正受給が横行するなど、多くの問題を抱えた給付金となりました。
特別定額給付金
特別定額給付金は、コロナによる外出制限や出勤停止などによる緊急経済対策として、一般国民を対象に行われた給付金のことです。内容としては住民基本台帳に記載されている全国民に対して、一律で10万円の給付金が給付されるものとなりました。
補助金
続いて補助金ですが、補助金は経済産業省や地方自治体が管轄していることが多いもので、国や地方自治体の政策目標に合わせて行われる法人または個人事業主に向けた支援制度のことを言います。支援というと申請した金額の全額を支給してもらえると思いがちですが、基本的には事業で必要となる金額の全額が補助されることはなく、半額、1/3の支給といった形で提供されます。
補助金の申請については、
- 審査がある
- 審査については事前に行われるものと、対象者となって補助が受けられる場合に事後の検査を受ける2種類のチェックがある
- 予算が上限に達した場合には、要件を満たしていたとしても補助が受けられない場合がある
- 補助金の申請が少ない場合には2次募集がある場合もある
といったことがある点は覚えておきましょう。
なお、補助金には以下のようなものがあります。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者等が今後複数年にわたって相次いで直面するであろう制度変更等に対応するために取り組む販路開拓などにかかる経費の一部を補助すること。地域雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上、また持続的発展を図ることを目的としたものです。
補助上限は通常枠で50万円、賃金引上げ枠、卒業枠、後継者支援枠、創業枠で200万円が補助、補助率は2/3(ただし、賃金引上げ枠のうち赤字事業者は3/4)です。補助対象者は、従業員20人(ただし商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)の場合は5人)以下の法人または個人事業主が対象で、さらに対象となる経費は、機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)、旅費、開発費、資料購入費、雑役務費、借料、設備処分費、委託・外注費などとなっています。2023年度は3月と6月、9月に申請受付が行われます。
IT導入補助金
IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者等を対象とした業務効率化を実現するITツール導入経費を補助することを目的としたものです。補助を希望する事業者は、指定されたIT導入支援事業者と共同したうえで申請を行わなければなりません。補助対象は通常枠の場合、A類型の場合には5~150万円まで、B類型の場合は150~450万円までとなっており、補助率は1/2となっています。補助の対象となるのはソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費などとなります。
助成金
助成金とは、主に国が事業者の雇用対策および労働環境改善を実現するために支援するお金を言います。先ほどの補助金は設備投資向けのものでしたが、この助成金は人に対して支援・支給されるお金になります。主には雇用関係の支援となりますが、一部研究開発における支援のものもあります。
助成金は受給要件を満たしており、不正を行っていない企業であれば高確率で受給できますが、雇用関係の助成金のほか、地方自治体が個人向けに行っている助成金も存在します。
ちなみに、助成金には以下のようなものがあります。
雇用調整助成金
雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)は、経済的理由により事業活動が縮小してしまった企業にて、労働者に一時的な休業を実施するなどして雇用維持を図った場合、雇用主が従業員に対して支払った休業手当の一部を助成するものです。労働者に直接払われるものではなく、雇用主に支給されます(※この内容は令和4年12月1日から令和5年3月31日までの経過措置期間(緊急対応期間にコロナ特例を利用した事業主が対象となる)における制度概要となります)。
支給の対象は以下の通りです。
- 新型コロナウイルス感染症の影響により経営環境が悪化し、事業活動が縮小していること。
- 最近1か月間の売上高または生産量などが前年同月比10%以上減少していること(※)。
- 労使間の協定に基づき休業などを実施し、休業手当を支払っていること。
※比較対象とする月についても、柔軟な取り扱いとする特例措置あり。
※判定基礎期間の初日が令和4年9月までの休業については5%以上減少していること。
コロナ禍においては差し支え額が最大15,000円まで引き上げられたほか、契約書の提出は不要となっていました。
トライアル雇用助成金
トライアル雇用助成金は、安定した就職が難しい求職者を3か月雇用した場合に助成金を受け取れる制度です。求職者の就業機会および雇用機会を増やすことを目的として、ハローワークや民間職業紹介事業者等の紹介により雇用する場合に活用できます。
このトライアル雇用の対象者は以下の通りです。
- 45歳以上の中高年齢者
- 45歳未満の若年者
- 母子家庭の母
- 父子家庭の父
- 季節労働者
- 中国残留邦人等永住帰国者
- 障がい者
- 日雇い労働者/ホームレス
雇用主は以下の条件を満たすことで助成金を受け取る資格を得ることができます。
- 1週間当たりの所定労働時間が30時間(日雇労働者、ホームレス、住居喪失不安定就労者の場合は20時間)を下回らないこと。
- 一定期間解雇をしたことのない事業主であること。
なお、トライアル雇用助成金は月額最大4万円(ただしシングルマザー・シングルファザーの雇用の場合には5万円)が助成されます。