働き方改革が大手企業を中心に広がりを見せ、テレワークやリモートワークの導入が進んでいます。その中で、週休3日制が注目されていることをご存知でしょうか?この制度は、2021年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」で「選択的週休3日制」が盛り込まれたことから脚光を浴びています。
週休3日制はどのような制度で、企業はこれを受け入れられるのでしょうか?メリット・デメリットを検討しながら詳しく解説していきます。
目次
週休3日制とは何か?
週休3日制は、1週間のうち3日間を休日にする制度で、実働日数を4日に短縮します。現在、多くの企業では週休2日制が一般的ですが(シフト制を導入している企業を除く)、大手企業を中心に週休3日制の導入が検討されており、今後の動向が注目されています。
この制度によって働き方が大きく変わるため、その実態を詳しく見ていきましょう。
労働時間が1日増加するケース
週休3日制にした場合、週休2日制と同じ労働時間を維持するためには、現在の1日8時間×5日=40時間を週40時間÷4日=1日10時間にすることが考えられます。これにより収入は変わらないものの、1日の労働時間が2時間増加し、拘束時間が長くなります。結果として、出勤時間が早まるか、退勤時間が遅くなるかのどちらかが選択されることになります。
労働時間が変わらないケース
1日8時間労働のままで休日が1日増える場合、現在の1日8時間×5日=40時間から、1日8時間×4日=32時間に減少します。このケースでは収入が1日分(月に4~5日相当)減少してしまいます。
労働時間が変わらず収入も変わらないケース
労働時間は1日8時間のままで、休日が1日増えるものの、月収は変わらないというケースもあります。つまり、時給換算で金額が上がることになります。
大手企業を中心に、週休3日制の導入が前向きに検討されていますが、導入可能な企業では、「労働時間が1日増加するケース」か「労働時間が変わらないケース(ただし収入が減少する)」が選択される可能性が高いです。労働者にとっては、「労働時間が変わらず収入も変わらないケース」が理想ですが、企業側は、財政負担の増加を避ける傾向にあります。
週休3日制の導入による企業のメリット・デメリット
企業が週休3日制を導入する理由には、経費節減などの実利的な要素があります。また、人材不足が深刻化する日本では、他社と比較して働きやすい職場環境や福利厚生をアピールするため、週休3日制を競争優位性として活用したいと考える企業も存在します。景気後退が続く中、副業を許可する企業も増えていますが、自社で給与を上げられないため、副業で収入を得ても退職しないで欲しいという期待もあるでしょう。
しかしながら、週休3日制の導入により、時間的制約が強まり調整が難しくなったり、勤務形態が異なる従業員の管理が複雑になるリスクもあります。おそらく週休3日制になっても金曜日から日曜日まで全員が休みになることは難しく、平日の稼働日の中から休みを選択する柔軟な形が取られることが予想されます。特定の曜日に休む従業員が多い場合、日程調整が必要になるなど、休日調整が新たな業務として追加される可能性も否定できません。
従業員が週休3日制で得られるメリット・デメリット
従業員にとってのメリットは、休日が1日増えることで精神的・肉体的な負担が軽減されることや、プライベートな時間が増えることです。また、副業として他の企業でアルバイトをする人や、クラウドソーシングなどを利用して独立して仕事を見つける人も出てくるでしょう。勉強に時間を充ててスキルアップを図る人や、キャリアアップのための転職準備に取り組む人も現れる可能性があります。
デメリットとしては、給与が減少することや、1日の拘束時間が増えることによる負担増が挙げられます。また、週休3日制が特定の部署に限定される可能性もあります。顧客のニーズに応えるために常時稼働が原則となる営業職の場合、週休3日制が導入されると働きにくくなることも考えられます。
週休3日制は大企業だけが実施可能?
今のところ、週休3日制を検討しているのは大企業が中心で、中小企業には導入のハードルが高い状況です。中小企業では優秀な人材の確保が難しく、週休3日制を採用するメリットが少ない一方で、負担が増える可能性があります。大企業に比べて給与水準が低い中小企業では、週休3日制の導入によってさらに給与が下がり、企業の存続が危ぶまれることもあります。実際に、大企業でも週休3日制の導入は実験段階であり、一部の企業に限定されています。
- SOMPOひまわり生命
- TOKYO BIG HOUSE
- アルペン
- イートアンド
- オムロン
- オリコ
- こどもの森
- スカイマーク
- ネクストビート
- ファミリーマート
- みずほフィナンシャルグループ
- ヤマト運輸
- ユニクロ
- リクルート
- ワコール
- 塩野義製薬
- 元湯 陣屋
- 佐川急便
- 信州ビバレッジ
- 大和ハウス工業
- 電通
- 東芝
- 東邦銀行
- 日本IBM
- 日本KFCホールディングス
- 日本マイクロソフト
- 日立製作所
- 味の素AGF
日本ではまだ導入実績が少ない週休3日制ですが、海外ではスペインやベルギーなどヨーロッパを中心に導入計画が進行・検討されています。
週休3日制には課題が多い
週休3日制は確かに人生を豊かにするためにはある意味素晴らしい制度ですが、実際には多くの課題が存在します。まず、週休3日制は大企業のみが導入しやすい制度であり、中小企業では導入が難しいという現実があります。中小企業では、優秀な人材の確保が難しく、週休3日制を取ることでメリットが少なく、負担増につながる可能性が高いためです。また、中小企業の給与水準が大企業に比べて低いこともあり、週休3日制導入によりさらに給与が下がってしまうこともあり得ます。
さらに、週休3日制導入には優秀な人材の流出が起こる可能性があります。週休3日制を取れる大企業に魅力を感じた優秀な人材が、中小企業から流出することで、企業の成長や発展が阻害される可能性があります。また、労働時間を減らすことで、企業の生産性が低下し、他国との競争力が低下することも懸念されます。さらに、AIやIT技術の発展により、人件費の軽減がますます進むことで、労働格差が広がる可能性もあります。
現在の日本のように、少子高齢化が進む社会において、週休3日制導入が一般的に浸透するには、まだまだ時間がかかると考えられます。しかし、コロナ禍によって、労働環境の見直しが求められるようになってきています。企業は、労働者主体に合わせた柔軟な労働環境の整備が必要であり、これからの企業には臨機応変に対処する能力が求められるでしょう。
週休3日制は労働者のワークライフバランスや労働生産性の向上に寄与する一方で、企業における業務量や人件費の増加などのデメリットも存在します。そのため、企業ごとに適切な労働時間制度を検討し、労働者と企業双方にとって最適な働き方改革を実現することが重要です。