少子高齢化の影響もあり、企業の採用が難しくなっている現在では人材派遣サービスを利用する企業も増えています。
そのため、これから起業する人の中には人材派遣サービスで起業を考えている人もいるのではないでしょうか。
ただし、よくテレビのCMなどで目にする人材派遣サービスは大企業のもので、個人での起業はできないのではないか?と思っている人はいないでしょうか?実は個人でも人材派遣サービスでの起業は可能です。
今回は人材派遣サービスで起業する方法について見ていきたいと思います。
目次
人材派遣サービスとは?
人材派遣サービスとは、企業が必要とする人材を派遣会社が雇用し、一定期間その企業に派遣して働かせるサービスを言います。
企業が派遣会社に依頼し、必要なスキルや経験を持った人材を紹介してもらうことができることから、短期的なプロジェクトや一時的な業務の増加に対応しやすいのが特徴です。
人材派遣サービスを利用する派遣社員は派遣会社に雇用されている形となり、給与や福利厚生なども派遣会社から支払われます。
一方で、派遣先企業は派遣社員に対して、指示や仕事の管理を行いますが、直接の雇用主ではないため、採用や人事管理に関する手間やコストを抑えることができるメリットがあります。
人材派遣サービスで起業するためには?
人材派遣サービスで起業すること自体は個人でも可能でありますが、実際にはいろいろと制約がありかなり大変です。
許可取得のための厳格な要件を満たす準備が不可欠なこと、また労働法の知識や労務管理のノウハウ、営業力なども必要となります。
次に紹介するのが一般的な人材派遣サービス立ち上げの手順となります。
事業計画の策定
最初に人材派遣サービス業のビジネスモデルや対象とする業界、ターゲット顧客層を明確にする事業計画を策定します。
事業を成功させるためのマーケット分析や、資金計画も含めて慎重にプランを立てましょう。この事業計画は次に紹介する融資の際などに必要となります。
資金の準備
起業して人材派遣サービスを始めるには一定の初期資金が必要です。派遣業の許可申請には一定の財産要件があり、事業所ごとに基準資産額(資産総額-負債)が2,000万円以上あること、現金預金が1,500万円以上あることが必要です。
なお、基準資産額は負債総額の1/7以上であるとされています。
このような資金的な条件から、一般的な起業よりも多くの事業資金が必要となり、自己資金や融資を利用して資金を調達する必要があります。
ただし、派遣元事業主の中でも特に規模が小さく、派遣労働者の人数が少ない事業者となる小規模派遣元事業主であれば、基準資産額は通常より低く設定されているため参入しやすくなっています。
人材派遣業の許可取得
日本国内で人材派遣サービス業を行うには、厚生労働省から「労働者派遣事業許可」を取得しなければなりません。申請には次の要件が必要となります。
許可申請書類の提出
労働者派遣事業許可申請書、添付書類(登記簿謄本、事業計画書、財産要件を満たす資料など)を管轄の労働局に提出すること。
財産要件
資本金と現金預金の条件を満たすこと。
事務所の整備
派遣事業を行う事務所が適切な環境で運営されるかも重要です。20㎡以上の広さの事務所が必要であること、派遣元責任者の資格等が必要です。
社会保険の加入手続き
人材派遣サービスの会社は派遣社員の雇用主となるため、労働基準法や社会保険の法令を守る必要があります。
健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険といった社会保険に必ず加入し、派遣社員に対して適切な労働条件を提供する体制を整えなければなりません
適切な労働管理の準備
派遣社員の労働時間管理や給与計算、契約管理を行うための体制が必要です。これには、適切な管理ソフトの導入や、労務管理の専門知識を持つスタッフの採用が重要です。
営業活動の開始
人材派遣サービス会社を立ち上げたら、派遣先となる企業との取引を開始するために営業活動を行わなければなりません。
ターゲットとなる業界や企業にアプローチし、必要な人材を提供するための契約を提携します。
インターネットを活用した求人サイトや直接訪問を通じた営業が有効とされています。
人材の確保と派遣
人材派遣サービスには当然派遣できる社員が必要です。
派遣する人材を集めるため、求人広告やWebサイトなどを活用して登録者を募ります。
派遣先企業のニーズに合ったスキルや経験を持つ人材を適切にマッチングさせることが成功の鍵となります。
派遣する社員のフォローアップ
人材派遣サービスは派遣したらそれで終わりではありません。
常に派遣社員の労働条件や働きやすさを定期的に確認し、必要に応じてサポートやフォローアップを行います。
また、派遣先企業との良好な関係を維持するため、定期的な報告やフィードバックの提供も行う必要があります。
人材派遣サービスに必要な資格
人材派遣サービスを運営してくためには、「派遣元責任者」の資格が必要です。
人材派遣サービス業者は、派遣元事業主として派遣元責任者を選任し、派遣登録労働者を適切に管理することが労働者派遣法で定められています。
なお、派遣労働者100人に1人の割合で派遣元責任者が義務づけられています。
派遣元責任者になるためには、雇用管理経験や、講習を受講して派遣元責任者講習受講証明書を取得していることなどが条件に挙げられています。
最終的には、厚生労働省より労働者派遣事業の許可をもらえれば事業を開始できます。
ただし、ここまでにおよそ3か月程度はかかるため、逆算して準備を進める必要があります。
人材派遣サービスとしての収入
人材派遣サービス業は、設備投資対象が人間ということもあって、利益率が高い業種と考えられています。
オフィスも最低限にしておけば(ただし20㎡以上のスペースが必要)よいので、イニシャルコストおよびランニングコストはあまりかかりません。
一般的に人材派遣を行った会社の利益率は約3割と言われており、優秀な人材を企業に派遣すればするほど、その手数料収入は高くなります。
もちろん、起業後にはさまざまな、コストや税金等がかかってきますので、一概には言えませんが、軌道に乗れば年収1,000万円を超える収入を得ることは難しいものではありません。
ただし、一番難しいのがやはり派遣社員の確保でしょう。
多くの派遣社員は他とのかけもちで登録し、声がかかったらその会社に出向くというスタイルでサービスを利用しているのが現状です。
ですから、実際に企業とのマッチングを果たせてもすでに他で働き始めてしまった、といったニアミスは起こり得ます。
それを避けるためにも、数多くの派遣社員の登録を促す必要があるため、広告宣伝費は不可欠です。
まとめ
人材派遣サービス業を起業するためには、派遣元責任者等の資格を含め厳格な要件を満たす必要があります。
それに加えて、労働法の知識や労務管理のノウハウ、営業力なども必要です。
これらの点を考えると、立ち上げは一人で行ったとしても完全個人で運営していくのはかなり大変な業種といえるかもしれません。
人材派遣サービス業を拡大発展させていくためには、仲間となる人材を見つけ役割分担を行い、それぞれが得意な領域を担ってもらえるようにしていくことが重要です。