日本を取り巻くさまざまな要因も重なり、日本では増税がいろんな形で実施されています。当然負担すべき費用に関しては増税で賄うことも受け入れる国民も多いと思いますが、なぜ増税しなければならないのか?よくわからない理由で増税が進むのは納得できないという人もいることでしょう。
今回は増税が行われる理由について、また増税におけるメリット・デメリットについて見ていきたいと思います。
増税とは?
税金は国や自治体が公的サービスや社会保障を行うにあたり、必要となる財源・資金です。その資金を獲得するために税金という形で我々国民から徴収され使われます。
財務省によると現在日本には国税・地方税合わせて以下のような税金が存在します。
国税
所得税
法人税
地方法人税
特別法人事業税
復興特別所得税
相続税・贈与税
登録免許税
印紙税
消費税
酒税
たばこ税
たばこ特別税
揮発油税
地方揮発油税
石油ガス税
航空機燃料税
石油石炭税
電源開発促進税
自動車重量税
国際観光旅客税
関税
とん税
特別とん税
地方税
住民税
事業税
不動産取得税
固定資産税
特別土地保有税
法定外普通税
事業所税
都市計画税
水利地益税
共同施設税
宅地開発税
国民健康保険税
法定外目的税
地方消費税
地方たばこ税
ゴルフ場利用税
軽油引取税
自動車税(環境性能割・種別割)
軽自動車税(環境性能割・種別割)
鉱区税
狩猟税
鉱産税
入湯税
日本は現在少子高齢化が進んでおり、国民の数は減少の一途をたどる一方です。「人が減っているのだからお金がかかる部分は少なくなるのではないか」と考えられなくもありませんが、にもかかわらず増税が行われるというのはある意味数の論理からすると矛盾しているように感じます。
実際のところなぜ、増税が必要となるのでしょうか。これは社会保障費が大きなウェイトを占めているためだと言われています。少子高齢化が進むということは、労働人口は今後ますます減少し、働かない世代が増えるにもかかわらず、医療や介護、年金といった部分にお金がかかることを意味しています。2022年には出生率が80万人を割り、当初の想定より11年も早いペースで人口減少が起こっています。2030年には日本の人口の1/3が65歳以上の高齢者となる「超高齢化社会」が訪れます。現在1億2000万人ほどの人口は2050年には1億9,500万人に減少し、65歳以上の高齢者は3,700万人に上ります。その比率は約40%となると言われています。
また、総務省の発表した情報によると、生産年齢人口は2030年には6,700万人、2050年には4,930万人まで激減します。つまり、高齢者を少ない生産人口で支える構造を実現するためには今の段階から増税という形で財源を確保しなければ、社会保障が破綻することが予測されるのです。
増税のメリット・デメリット
では増税が行われるとどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?それぞれ見ていきましょう。
増税のメリット
増税が行われれば、当然ながら税収が増加します。税金として私たちが思い浮かべるのは所得税や消費税といった身近な税金です。会社を経営している人であれば法人税もあるでしょう。この3つは国税の中でも比重が大きい税金であり、安定した財源となり得ます。ただし、これらの税金の大半は現役世代である生産人口が負担しており、現役を引退した高齢者の税負担が少ないことから、現役世代からの不満が高まることは避けられません。そのため、消費税のように全世代から均等に徴収できる財源も無視できません。
日本では1989年から消費税が3%導入され、1997年には5%、2014年には8%、2019年には10%(軽減税率8%)となりました。将来的には税率のさらなる上昇が予想されており、その背景には少子高齢化社会があることを忘れてはなりません。
増税のデメリット
一方で、増税のデメリットについても考える必要があります。増税による税負担は、私たちの消費を減退させる傾向があります。なぜなら、物を購入する際に消費税がかかるため、できるだけ安いものを購入しようとする流れが生まれるからです。また、収入を増やそうと努力しても、法人税や所得税で大きな税金が取られてしまうならば、働くモチベーションが低下する可能性もあります。
日本の景気が不景気だと言われるようになったのは、バブル崩壊後からですが、その原因の根底には消費税の導入があるとされています。したがって、景気の改善を図るためには消費税を廃止すれば良いという主張も存在しますが、それは現実的には容易ではありません。生産人口の減少だけでなく、新たな財源が必要であり、消費税は廃止されないのです。
また、増税が進むと、現在の低所得者にとっては税負担が大きくなります。所得税に関しては日本では累進課税制度が採用されており、収入に応じて税負担が異なります。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円~194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万円~329万9,000円 | 10% | 9万7,500円 |
330万円~694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
695万円~899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1,799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円~3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
しかし、消費税は一律であり、収入が高くても低くても同じ利率で税負担を行わなければならないため、低所得者の税負担は高いものとなってしまうのです。そのような背景もあり、現在10%の消費税率でありながら、「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」を対象にとして消費税の軽減税率制度(8%)が実施されています。軽減税率は、スーパー等で肉や魚、野菜などを購入する場合には、軽減税率の8%が課税。その一方で、飲食店にて食事をしたり、コンビニ弁当を購入してイートインする場合には、標準税率となる10%課税となります。
増税と子供・子育て支援
2023年、岸田文雄内閣は「異次元の少子化対策に挑戦する」という決意のもと、増税(予定)資金を少子化対策に活用すべくかじ取りを行い始めました。現在日本を取り巻く近隣諸国に対する防衛費問題も上がっている中、少子化対策として、
(1)児童手当といった経済的支援の強化
(2)学童保育や病児保育、産後ケアといった支援の拡充
(3)働き方改革推進
を打ち出しています。
なお、「異次元の少子化対策」を掲げ2024年度から3年間かけ「こども・子育て支援加速化プラン」を集中的に取り組むと発表。児童手当については、第3子以降の児童手当の増額対象をこれまで「3歳~小学生」としていたものの、「0歳~高校生」に拡大するかたちで調整、支給額は月3万円とする方針を掲げています。
これらの予算についてですが、児童手当拡充には1兆2000億円ほどを確保するとのこと、加えて保育支援に8,000億~9,000億を、働き方改革推進に7,000億、年間で3兆円を投入する方向が検討されています。しかし、これらのプランに対しての財源は不透明なものとなっており、今後私たちの税負担はさらに増えていくことが想定されます。
そんな矢先、児童手当の拡充をする一方で扶養控除廃止の案が浮上。高校生の子供の児童手当をもらっても控除されなくなる額が多くなり、実質税負担が増えるという現象が懸念されています。なお年収850万円以上の世帯においては現在より税負担が増える案であるため、本当に少子化対策になるプランであるかどうかに疑問が持たれているようです。
増税が目に見える形で私たちの生活に幸福をもたらすのであれば仕方ないと思える反面、一部にとってはメリットどころかデメリットしか見えないようでは、増税を素直に受け入れることはできないでしょう。政府にはクリーンな政治のもとに政策を実行してもらいたいものです。