キャリアコンサルタントとして起業を考えるとしたら、どのような手順で進めればよいでしょうか?そもそも独立して生活していくことはできるのか?また必要な資格はあるのか?想定年収は?気になることも多々あるでしょう。
今回はキャリアコンサルタントとして起業する方法について紹介したいと思います。
目次
キャリアコンサルタントとは?
キャリアコンサルタントは、個人の職業選択やキャリア開発を支援する専門職であり、幅広いサポートを提供する仕事です。日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、キャリアプランニングや職業適性の評価、職業訓練や教育のアドバイスなど、多様な支援を行う職種です。
キャリアコンサルタントは、クライアントの個別のニーズや目標に合わせてサポートを行い、対話を通じてクライアントの状況や課題を理解し、それに応じた支援策を提案します。このプロセスでは、クライアントが自身のキャリアについて深く考えることを促し、最適なキャリアパスを見つける手助けをします。
さらに、キャリアコンサルタントは個人だけでなく、企業や教育機関に対してもサービスを提供できる点で特徴的です。たとえば、個人向けには就職や転職のサポート、キャリアアップのアドバイスを行い、企業向けには従業員の人材育成や組織開発の支援を行います。教育機関に対しては、学生の進路指導やキャリア教育にも貢献することが可能です。
キャリアコンサルタントに必要なスキルとは?
キャリアコンサルタントとして活動するためには、以下のようなスキルが必要です。
コミュニケーションスキル
キャリアコンサルタントには、クライアントの考えを正確に理解し、適切なフィードバックを行うための優れたコミュニケーションスキルが求められます。特に傾聴力は非常に重要であり、クライアントの話を丁寧に聞き、その背景や意図を深く理解することで、より適切な助言を提供することができます。
カウンセリングスキル
カウンセリングスキルは、クライアントが自己理解を深め、キャリアに関する課題を解決するために必要なスキルです。クライアントの悩みや不安を理解し、効果的に支援するためには、まず信頼関係を築くことが重要です。その上で、クライアントが安心して自分の考えを共有できる環境を構築する能力も求められます。
労働市場に関する知識
キャリアコンサルタントにとって、労働市場や業界の動向に関する最新情報を把握していることは非常に重要です。この知識を持つことで、クライアントに現実的で具体的なキャリアの選択肢を提案することが可能になります。また、求人情報や企業の動向、求められるスキルセットについて深く理解していることも求められます。
キャリアプランニングに関するスキル
キャリアプランニングを組み立てるスキルは、クライアントが長期的なキャリア目標を設定し、その目標に向けて具体的な計画を立てるために不可欠です。このスキルには、キャリア目標の設定、目標達成までのステップの分解、具体的な行動計画の作成が含まれます。クライアントが自己実現に向けて確実に前進できるよう、現実的で達成可能なプランを立てる能力がキャリアコンサルタントには求められます。
自己管理能力
キャリアコンサルタントは、複数のクライアントを同時に担当することが多いため、時間管理を含む自己管理能力が欠かせません。業務を効率的に進めることで、各クライアントに十分な時間と注意を向けることが求められます。また、自分自身のキャリアやスキルを向上させるための積極的な取り組みも重要です。自己研鑽を続ける姿勢が、信頼されるコンサルタントとしての成長につながります。
共感力
共感力とは、クライアントの感情や経験に対して深い理解を示し、寄り添う能力を指します。この力によって、クライアントは安心して自分の考えを表現しやすくなり、信頼関係を築くことができます。共感を持って接することで、クライアントは自身の気持ちや状況をより正確に伝えられるようになり、コンサルタントもその情報をもとに、より適切な支援を提供することが可能となります。
キャリアコンサルタントには資格が必要?
キャリアコンサルタントとして起業し、活動していくためには次のような資格が必要です。
キャリアコンサルタント
日本でキャリアコンサルタントとして活動するために最も一般的な資格は、厚生労働大臣が登録した試験機関であるキャリアコンサルティング協議会が認定する「キャリアコンサルタント(国家資格)」です。この資格は、平成28年から国家資格となり、登録制の名称独占資格として、守秘義務や信用失墜行為の禁止義務が課されています。そのため、資格を持たない者は「キャリアコンサルタント」と名乗ることができず、紛らわしい名称を使用することも禁止されています。
試験は筆記試験と実技試験の二つで構成されており、筆記試験ではキャリアコンサルティングに関する理論や実践の知識が問われます。実技試験では、ロールプレイ形式のカウンセリング技術が評価されます。両方の試験に合格することで、「キャリアコンサルタント」として名乗ることができるようになります。
資格取得後もスキルを維持し続けるために、5年ごとに更新が必要で、最新の知識を学び続けることが求められます。
キャリアコンサルティング技能士
キャリアコンサルティング技能士とは、キャリアコンサルティング技能試験(国家検定)に合格した人を指します。この資格は、キャリアコンサルタント試験よりもさらに上級の専門資格であり、1級と2級の区分があります。国家資格の中でも専門性が高いとされ、以下のような特徴があります。
2級キャリアコンサルティング技能士は、個人や企業に対してキャリアコンサルティング業務を実施するために必要な技能を持つことを証明する資格です。受験するには、一定の実務経験やキャリアコンサルタント資格が求められます。
1級キャリアコンサルティング技能士は、2級の上級資格で、他のキャリアコンサルタントへの指導や教育を行うための高度な技能を持つことを証明する資格です。1級を受験するには、さらに多くの実務経験が必要です。
キャリアコンサルタントとしての収入
少し古いデータですが、独立行政法人労働政策研究・研修機構が公表している「キャリアコンサルタントの活動状況」によると、キャリアコンサルタントの年収は「200~400万円」が最も多く(33.2%)、次いで「400~600万円」が21.5%と2割を占めています。これらのデータから、キャリアコンサルタントの平均年収は約400万円前後と推定されます。
一方、一般企業で働く給与所得者の平均給与は458万円(2022年度)とされているため、キャリアコンサルタントとして起業して軌道に乗ったとしても、会社員の平均年収を少し下回る程度の収入が現実的なラインと言えそうです。
そのため、キャリアコンサルタントとしていきなり起業するのはリスクが伴います。特にクライアントの獲得が難航する場合、事業が立ち行かなくなる危険性が高いです。現在企業に勤めている方であれば、在職中に副業としてキャリアコンサルタントを始めるのが安全な方法でしょう。
まとめ
キャリアコンサルタントとして起業する人は年々増加しています。私たちの働き方が多様化している現代において、自分のキャリアをどのように考え、どのような仕事に就くべきか、また自分に向いている仕事は何かを相談できるキャリアコンサルタントの存在は、今後ますます重要になるでしょう。
しかし、他の業種と比較すると、起業して活躍し、年収1,000万円を目指すキャリアコンサルタントになるには、厳しい道のりが待っています。とはいえ、1,000万円を超える収入を得ているキャリアコンサルタントも実際に存在します。挑戦し続けることで、目標に到達できる可能性もありますので、ぜひ高みを目指して起業を成功させてみてはいかがでしょうか。