屋号は個人事業主が事業を行う際につける名前です。自由につけることができ、開業時の申請書や確定申告書類を書く際に用いられます。
屋号があることで屋号つき銀行口座を開設できるので、自分の名前を公開したくないクリエイターなどにはメリットがあります。
そこで、今回は屋号の基本情報や、つけることで得られるメリットについて解説します。
目次
屋号は個人事業主が任意で決められる名称のこと
屋号とは、個人事業主がビジネスで使用する「個人事業につける名前」のことを指します。
たとえば、塾なら「○○塾」や、弁護士なら「○○弁護士事務所」といった、事業イメージがつきやすい屋号をつけるのが一般的です。
屋号は必須ではない
個人事業主になると必ず屋号が必要というイメージがありますが、屋号をつけなくても個人事業主として活動は可能です。
実例を挙げると、店舗を構えて何かを販売する個人事業主の多くは屋号を決めていることが多く、屋号がそのまま店舗や事務所名として使用されています。
一方、パソコンを使用して仕事をする方など、店舗を持たない個人事業主の場合、屋号を付けていないケースが多いです。
屋号をつけるタイミング
屋号は税務署へ「開業届の提出」もしくは「確定申告」のタイミングで、登録することができます。開業届の書類には屋号を記入する欄があり、記入して提出すれば正式に屋号として登録されます。
また、開業届の提出時に屋号を登録しなくても、毎年2月16日~3月15日に行う確定申告で屋号を登録することも可能です。開業届と同じように、確定申告書のなかに「屋号」を記入する欄があるため、記入して提出すれば登録ができます。
そのため、開業時には決めていなくても、後から屋号を付けたくなったときには、毎年の確定申告のタイミングで登録するようにしましょう。
屋号と商号・雅号の違いとは
屋号と似た言葉で「商号」「雅号」がありますが、それぞれの違いについて解説します。
屋号と商号の違い
屋号は個人事業主として使う名称ですが、商号は法人に用いられる名前ということが最も大きな違いです。
商号は法人登記で設定する「会社名」のことで、法人にのみ用いられるため、個人事業主では商号は使いません。
屋号は任意なので設定が必須ではありませんが、商号は法人登記に必ず設定が必要です。
また、商号は法人格である名前を含んだ「○○会社」のように設定しますが、屋号では「法人格」を含んだ名前を使うことができない(「〇〇会社」と使えない)といった違いもあります。
屋号と雅号の違い
雅号は、作家や画家、書家、芸能関係者などが本名以外に使う名前のことで、「芸名」や「ペンネーム」と呼ばれています。
個人事業主の屋号登録では、屋号と雅号は同じように取り扱われますが、雅号は一個人に、屋号は事業全体に対して付けられる名前といった違いがあります。
屋号がビジネスで必要なシーン
屋号がビジネスで必要になる具体的なシーンについて、具体的に見ていきましょう。
開業届・確定申告書などの届出書類
税務署に提出する届け出や申告書類などには、屋号の記載欄が設けられています。
とはいえ、屋号の記載欄が設けられていても記載は任意のため、決めていない場合には記載しなくても問題はありません。
請求書・領収書
取引先や顧客に対し、請求書や領収書を提出する際に、屋号があれば記載するのが一般的です。
屋号があると専用口座も屋号名で作れるため、本名を公開しなくてもよいので安心です。
名刺・ポスター・看板へ記載
名刺やポスター、看板でアピールするときにも、屋号を利用できます。
たとえば、猫グッズを扱うお店なら「猫グッズ専門店○○」など、屋号を記載することで事業の内容を伝えやすくなりより効率的にアピールできるでしょう。
屋号をつけるメリット
屋号は個人事業を行うのに必須ではありませんが、得られるメリットもいくつもあります。
屋号をつける主なメリットは以下の3つです。
- 事業内容や店舗名を認知してもらえる
- 法人化するときに商号として継続利用できる
- 屋号つきの銀行口座を作成できる
それぞれ具体的に見ていきましょう。
事業内容や店舗名を認知してもらえる
屋号があることで、事業内容をわかりやすく伝えられるというメリットがあります。
屋号は基本的に事業内容をベースに決められることが多く、顧客にも信頼できると思ってもらいやすいです。特に店舗運営をする場合は、店舗名を顧客に認知してもらうことでリピーター獲得にもつながります。
法人化するときに商号として継続利用できる
将来的に法人化を見据えているなら、屋号として早い段階から認知させることで、法人化したあともスムーズに展開することができます。
法人化の予定がある場合は、個人事業主の段階から屋号を決めて取引先や顧客に認知させ、そのまま屋号を法人の商号に利用することをおすすめします。
個人事業主のときの屋号を法人の商号として継続利用することで、築いた信頼やブランドイメージも引き継げるというメリットがあります。
屋号つきの銀行口座を作成できる
金融機関では屋号付きの口座開設ができるので、プライベート口座と区別することが可能です。これにより、経理処理や税務申告する際の作業が明確になり、管理しやすくなります。
また、屋号つき銀行口座を開設することで、クライアントへの請求書や領収書も「屋号」で作成できるので、本名を知られたくない人も安心です。
屋号をつけるデメリット
屋号をつけるデメリットは、「業務のイメージが限定されてしまう」ということが挙げられます。
通常、屋号は自分の業務内容から付けますが、あまりに限定的な内容だと将来的に他のビジネス展開をしたときに仕事を獲得しにくくなるということもあるでしょう。
そのため、「何でも屋」として幅広く活動を考えている場合は、屋号をつけないほうがよいと言えます。
しかし、屋号を決めることで「分野に特化した事業者」というイメージがつき、専門家としてアプローチしやすくなるというメリットもあります。つまり、業務の範囲が定まっていない段階では屋号をつけず、ある程度事業内容の方向性が決まったら、屋号をつけてマーケティングするということも視野に入れておくと良いでしょう。
屋号をつけるときの注意点
屋号をつけるときに注意したいポイントについて確認しておきましょう。
分かりやすい屋号をつける
屋号は、顧客や取引先にもアピールする重要なポイントなので、分かりやすい屋号にすることが重要です。
たとえば、難しい漢字を使ってみたり、長すぎる屋号にしてみたりと、覚えにくいものは望ましくありません。
わかりやすい屋号とは、ひと目で事業内容がわかる屋号にすることです。たとえば、飲食店でスパイスと無添加野菜を押しているなら「スパイスと無添加野菜の○○」などにすると、お店のイメージもつきやすくなるでしょう。
屋号をつけるときには顧客や取引先の目線になって考えることで、より効果的な屋号が付けやすくなります。
競合他社や有名企業と被らないようにする
屋号は他の競合他社や有名企業と区別する機能もあり、かぶらないようにすることも重要です。
同じような屋号を用いると、「真似した」と勘違いされトラブルの元になったり、サービスを認知してもらいにくくなるので避けた方が良いでしょう。
ただし、同じ業種のサービスの場合、名前が似通ってしまうことは起こりうるため、多少似ている範囲であれば問題にはなりません。
まとめ
今回は屋号についての基本情報や、つけるメリットについて解説しました。
屋号は個人事業主が個人で行う事業に対してつける名前のことですが、必ずつける必要はありません。実際、店舗を持たないビジネスをしている個人事業主では屋号を持たずに活動している人も多いです。
しかし実店舗を運営している個人事業主の場合、店舗名にそのまま反映することが多いため、ほとんどの場合屋号を使ってビジネスを経営しています。
また、屋号をつけることで屋号つき銀行口座を開設できたり、認知度が上がるなどのメリットもあります。
具体的な事業内容が決まったら屋号をつけて活動することで、将来的に法人化したときにも転用できて、スムーズな事業展開が可能となるでしょう。