東京都内のマンション価格高騰が叫ばれている現在、マンションの居住率の上昇や老朽化、管理組合員の高齢化などの課題に対応する専門的な知識を持つマンション管理士の必要性が高まっています。今後さらに需要が増加すると考えられます。
しかし、マンション管理士として独立起業しようとネット検索してみても「マンション管理士は儲からない」「やめとけ」といった声が掲載されているのを見かけるため、マンション管理士を目指してよいのか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
今回はマンション管理士として起業する方法について見ていきたいと思います。
目次
マンション管理士とは?
マンション管理士とは、マンションの管理に関する専門知識を持ち、マンションの管理組合や住民に対して適切なアドバイスを行う国家資格者のことを指します。主にマンションの維持・管理に関するさまざまな問題について、法的・技術的な側面から助言を行い、管理運営が円滑に行われるようサポートするのが仕事です。
公益財団法人マンション管理センターが実施している国家資格「マンション管理士」に合格することでマンション管理士になることができますが、令和5年度の実績で10.1%とかなり低い合格率であることから、比較的難関資格として知られています。
マンション管理士試験は
- 区分所有法など法令に関する科目
- 管理組合の運営に関する科目
- 建築基準法等・建築設備に関する科目
- マンション管理適正化法に関する科目
これら4つの科目から出題が行われます。
マンション管理士と管理業務主任者との違い
マンション管理士と管理業務主任者はよく比較される資格です。どちらもマンションの管理に関わる資格ですが、役割や業務内容には明確な違いがあります。
まずマンション管理士ですが、管理組合のコンサルタントとして活動し、管理規約の作成・改定、大規模修繕計画の立案、管理費の適正化など、管理組合が抱える課題に対して中立的な立場で助言を行います。マンションの維持管理や運営全般について、法律や建築、会計など幅広い知識を駆使して問題解決にあたることが特徴です。住民間のトラブル解消や管理会社との交渉をサポートすることも多く、マンション全体の資産価値を守るためのアドバイザー的な存在となっています。
一方の管理業務主任者ですが、管理会社に所属して業務を遂行する立場であり、主に管理受託契約の締結や重要事項説明を行います。マンションの管理委託契約を適切に進めるため、契約の内容を説明し管理業務が円滑に進むよう責任を持ちます。管理会社が管理業務を受託する際には必ず管理業務主任者を設置する必要があり、管理会社側の立場で管理組合と関わることが多い点が特徴となります。
つまり、マンション管理士は管理組合の味方として助言やサポートを行う独立した専門家であるのに対し、管理業務主任者は管理会社の一員として契約や業務を管理する役割を担う存在です。
マンション管理士の需要が増えている理由
昨今マンション管理士の需要が高まっている背景には、いくつかの社会的要因が関係しています。
マンション管理の複雑化
東京都市部を中心にマンションの居住率が上昇している現在、住民の多様化に伴い管理運営が複雑化しており、管理規約の見直しや住民間の合意形成などで専門的な知識を必要とする場面が増えています。特にタワマンの場合、建物に住む住人の数も多く、意思の統一が難しいのが現状です。そこでマンション管理士が調整役として管理会社との間に入り、適切な処置を施すことが求められています。
マンションの老朽化
全国的にマンションの老朽化が進んでいます。新築から10年~15年で到来する大規模修繕や設備改修計画の際には、建築や法務の専門知識が不可欠となっています。マンション管理士はその役目を担います。
住民の高齢化
管理組合の役員を担う住民の高齢化も年々進んでおり、管理業務の負担が重くなっていることも大きな要因です。役員のなり手不足が深刻化する中で、第三者の専門家が管理組合をサポートするニーズが高まっています。
それ以外にもマンションの管理を巡る住民間のトラブルや、修繕積立金の使途に関する意見の対立など、利害調整の必要性も増しており、このような状況下において、公平かつ中立な立場で助言を行うマンション管理士の役割が一層求められるようになっています。
これらの要因が重なり、マンション管理士の需要は今後ますます拡大していくと考えられます。
マンション管理士の仕事内容
マンション管理士の具体的な仕事内容には次のようなものがあります。
1.管理規約・細則の作成・改定
マンション管理士は、マンションごとの事情に合わせて管理規約や細則を作成・改定します。法改正やマンションの状況に応じて、管理組合と協議しながら必要な見直しを行っていくのが仕事です。
2.長期修繕計画の立案・見直し
また、マンションの老朽化に備えて修繕計画を作成するのも仕事です。建物診断の結果を基に修繕の必要性を提案し、修繕積立金の額が適切かを精査して、資金不足を防ぐアドバイスを行っていきます。
3.管理会社との契約見直し・交渉支援
さらに管理会社と住民の間に立って契約内容の適正さをチェックする仕事もあります。サービス内容や費用が妥当かを確認し、必要に応じて管理会社の変更や入札を提案します。
4.住民間のトラブル解消
ほかにも、騒音やペット問題など住民間のトラブルを中立的な立場で調整して法的根拠や規約に基づき、感情的な対立を避けながら解決に導いたり、管理組合の会計を確認して収支バランスや無駄な支出がないかを精査します。不足があれば積立額の見直しを提案し、将来の財務計画を立てます。
もちろん、これらの業務はマンション管理士がいなくてもマンションの理事会で管理会社を使って行っていくことは可能ですが、住人側の知識の欠如により、マンション管理会社に都合の良い形で運営が進められることも多いため、マンション管理士にスポットがあっている現状があることは知っておきましょう。
マンション管理士としての収入
マンション管理士の収入は、勤務形態や経験、地域などによっても大きく異なります。通常マンション管理士は管理組合と顧問契約料を結ぶことでもらうことができますが、独立起業した場合の平均収入は300万円程度とあまり高くはありません。しかし、管理するマンションが多くなればなるほど収入は高くなります。
収入を高くするためには、当然営業力や高度な知識が必要となりますが不動産関連の宅建などの資格を保有していると箔をつけることも可能です。
まとめ
マンション管理士は管理組合の運営全般をサポートし、住民の暮らしやすい環境を守るために多方面で活動しています。適切な管理や修繕を通じて、マンションの資産価値を維持・向上させることができ、地域社会の発展にも寄与する大事な仕事です。仕事は多岐にわたりますが、その分やりがいも多く、自分の努力が直接成果として表れる仕事と言えるでしょう。