保険代理業として起業する方法

保険に加入するには、保険会社に直接申し込む方法のほか保険代理店から申し込む方法があります。保険代理店は複数の保険会社の商品を取り扱っていることから、さまざまな保険を比較検討する目的で相談する人も少なくありません。

そんな保険代理業は少々特殊な業種なので、この業種で起業しようと考えている方は「自分でもできるのだろうか?」不安に感じることもあるでしょう。

今回は保険代理業として起業する方法について見ていきたいと思います。

保険代理業とは?

保険代理業とは、保険会社と契約を結んで保険商品を販売する業務のことを指します。保険代理店は、保険会社の代わりに顧客へ保険商品の説明や提案を行い契約の手続きをサポートしていきます。複数の保険会社と提携している代理店も多く、顧客のニーズに合わせてさまざまな保険商品を比較・選択することができるのが特徴です。

また、保険契約後のフォローや、保険金の請求手続きのサポートなど、アフターサービスも重要な役割の一つです。保険に関する専門知識を活かし、顧客にとって最適なプランを提案することが求められることから、保険代理業は単なる販売業ではなく顧客の人生設計やリスク管理に深く関わる仕事であるとも言えるでしょう。

保険代理店と保険会社の違い

保険代理店と保険会社の違いは、その役割と立場にあります。保険会社は保険商品を開発・販売し、保険契約を直接引き受ける主体です。保険料の設定や保険金の支払い、リスクの引き受けなど、保険の根幹となる業務を担っています。簡単に言えば、保険会社は保険そのものを作り出し、提供する側です。

一方保険代理店は、保険会社と契約を結び、保険商品を代理で販売する役割を果たします。保険代理店は顧客に対して保険商品の説明や提案を行い、保険契約の手続きをサポートしますが、契約の最終的な締結やリスクの引き受けは保険会社が行います。つまり、代理店は保険会社の代理人として動く立場であり、あくまで保険会社の商品を顧客に紹介する仲介者のような存在です。

保険代理店の種類

保険代理店にはいくつかの種類があり、それぞれ取り扱う保険会社の数や運営の形態によって分類されます。主なものは次の2つです。

1.専属代理店(専業代理店)

専属代理店とは、特定の保険会社と契約しその会社の保険商品だけを取り扱う代理店を言います。いわば保険会社の「直営店」のような存在で、販売する商品が限定される代わりに、その保険会社の商品知識が豊富で手厚いサポートが受けられます。
専属代理店は、特定の保険会社との信頼関係が深く、キャンペーンや特典などが提供されることもあります。大手保険会社の看板を掲げることが多く、ブランドの信頼性を活かして営業を行うことができる点がメリットです。

2.乗合代理店(複数保険会社の取り扱い)

乗合代理店とは、複数の保険会社と契約して多様な保険商品を取り扱う代理店です。顧客のニーズに応じ、複数の保険会社の中から最適な商品を選び提案できるのが最大の特徴です。
乗合代理店の場合、保険の比較検討が容易にでき、ライフスタイルや状況に応じた柔軟な提案ができます。特に独立系の代理店が多く、特定の保険会社に偏らず、中立的な立場で顧客にアドバイスを行えるのが強みといえるでしょう。

保険代理業で起業するメリット

保険代理業で起業するメリットはいくつかありますが、代表的な理由については次のようなものがあります。

収入が安定しやすい

保険代理業で起業するメリットは、安定した収益基盤を築きやすい点にあります。なぜなら、保険は我々の生活に欠かせないもので、不測の事態に備えるため多くの人が必要とし加入しています。そのため、経済状況に左右されにくく、長期的に安定した需要が見込めるのが特長です。契約が続く限り、保険料の一部が継続的に収益となる「ストック型ビジネス」である点は大きな魅力と言えるでしょう。
また、自身の努力次第で大きく成長できる点も特徴のひとつ。保険代理店は扱う商品や提携する保険会社を選ぶことができ、多様な商品を提供できれば、幅広い顧客ニーズに応えることができます。複数の保険会社と契約することで、他社と差別化を図り、顧客にとって最適なプランを提案しやすくなります。

人脈を増やしやすい

保険代理業は人脈が命。人脈や信頼関係が収益に直結しやすいビジネスでもあります。顧客との関係を深めることで、紹介や口コミによる新規契約が増えることも珍しくありません。一度信頼を得られれば顧客が家族や知人を紹介してくれるケースも多く、安定した顧客基盤を築くことが可能です。

保険代理業として起業する場合のデメリット

上記のように保険代理業にて起業することには多くのメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットも存在します。独立して事業を始める際には、次のような課題やリスクを理解しておくことが重要です。

収益化まで時間がかかる

保険代理業は、収益が安定するまで時間がかかります。保険代理店の収益モデルは、契約が続く限り収入が発生するストック型ビジネスである反面、新規契約の獲得がなければ収益が伸び悩むこともあります。特に起業直後は顧客基盤が乏しく、営業活動に多くの時間と労力を費やすことが往々にしてあります。信頼関係の構築には時間がかかり、すぐに結果が出るわけではありません。

資格や登録が必要

保険代理業を行うには、生命保険における募集人資格や損害保険における募集人資格などの取得が必須です。さらに金融庁への保険募集人登録や保険会社との契約も必要となります。これらの手続きは面倒であるだけでなく、相応の時間と費用がかかってしまいます。また、保険代理店としての活動には法令遵守が求められ、定期的な研修や試験の受験が義務付けられています。

営業力やコミュニケーション力がないときつい

保険商品は目に見えないため、顧客にその必要性を理解してもらうためには高いコミュニケーション能力や提案力が必要です。特に競争が激しい市場では、他の代理店との差別化が求められ、強力な営業スキルがないと顧客を獲得しづらくなります。
さらに保険契約は長期にわたるため、契約後のアフターフォローや保険金請求時のサポートなど、顧客との関係が継続的に続きます。契約者が増えるにつれて対応業務も増加し、個人で運営する場合にはキャパシティの問題が発生することがあります。

景気や社会情勢の影響を受けることも

保険は景気が悪化したり、顧客の生活環境に変化があると保険料の見直しや解約が増えることがあります。特に法人向けの保険では、取引先の経営状況に左右されることがあり、安定した収益を確保するためにはリスク分散が不可欠です。
また、保険会社の方針変更に左右される点にも注意が必要です。保険代理店は保険会社との契約に基づいて運営されるため、保険会社が方針を変更した場合、代理店の運営方針にも影響が及びます。たとえば、特定の商品が販売停止になったり報酬体系が変更されたりすることもあり、収益に直結する可能性があります。

保険代理業としての収入

保険代理業として独立起業した場合の平均年収はおよそ500万円~600万円といわれていますが、当然ながら生命保険、損害保険、介護保険と言った具合に扱う保険の種類によって収入は大きく変わります。また、営業力によっても収入に差がつきます。当然営業力のある人であれば年収3,000万円以上稼ぐ人もいますが、その一方で顧客開拓ができなければ市場から退場を余儀なくされる場合もある厳しい世界です。

まとめ

保険代理業の良さは、人々の安心や将来の備えをサポートできる社会的意義の高さにあるといっても過言ではありません。保険は、万が一の事故や病気、災害などに備えるための重要な商品であり、保険代理業は、顧客が不安を抱える場面で最適な保険を提案し、リスクに備える手助けをすることで、安心を提供する役割を果たすことができます。

顧客が「保険に入っていて良かった」と感じる瞬間に立ち会えることは、保険代理業における仕事の大きなやりがいとなることでしょう。

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