建築士として起業する方法

建築に関わる仕事をしたいという人は、まずは建築士となることを目指す人が多いと思います。建築士になるには建築士資格試験に合格する必要がありますが、国土交通省が発表している令和5年4月1日のデータによる建築士の登録状況だと、一級建築士が378,337人、二級建築士が790,388人、木造建築士が18,793人の計 1,187,518人が建築士として登録されています。これだけ見るとかなりの数の人が建築士としての資格を保有していると思えるかもしれませんが、昨今は建物の老朽化が進み建て替え需要が多いこともあって、建築業界も人手不足が叫ばれています。

そんな建築業界において建築士として働いている方の中でも、自分の裁量で建物を建ててみたいと思っている人も多いことでしょう。

今回は建築士として起業する方法について見ていきたいと思います。

建築士とは?

建築士とは、建築物の設計や工事監理を行う専門資格を持つ技術者のことを指します。建築士は、建築基準法に基づき安全性や機能性、美観などを考慮しながら建物を設計し、施工が設計通りに進んでいるかを確認します。

建築士の資格には、一級建築士、二級建築士、木造建築士の三つの種類があり、それぞれ扱える建物の規模や構造に違いがあります。

一級建築士とは?

一級建築士とは、建築士資格の中で最上位に位置する資格であり、建築物の設計と工事監理に関してあらゆる規模・用途の建物を手掛けることができます。国土交通省が認定する国家資格であり、一級建築士資格を取得することで、高層ビルや商業施設、大規模な公共施設などの設計が可能になります。
一級建築士になるには、一級建築士試験に合格し、実務経験を経て登録する必要があります。試験は学科試験と設計製図試験の二段階で構成されており、建築計画や法規、構造、環境工学など幅広い知識が問われますが、特に設計製図試験では、与えられた条件をもとに建築図面を作成し、その技術力や創造力が評価されます。
一級建築士は設計のほかにも、工事が計画通りに進むように現場を監理し、安全性を確保する役割を担います。また、建築確認申請や構造計算などの法的手続きも行い、建物が建築基準法などの関連法規に適合しているかを確認します。

二級建築士とは?

二級建築士とは、比較的小規模な建築物の設計や工事監理を行うことができる国家資格のこと。都道府県知事が認定する資格で、一級建築士よりも取り扱える建築物の規模に制限がありますが、戸建て住宅や小規模な商業施設などの設計には十分な資格とされています。地域の住宅設計やリフォーム、店舗設計などの分野で活躍することが多く、建築士としてのキャリアをスタートする際の登竜門として位置づけられています。
二級建築士が設計できる建物は比較的中小規模のものに限られるため、戸建て住宅や小規模なアパート、地域の店舗などの設計を手がけることが多く、地域に密着した建築士としての役割を担います。
試験は一級建築士試験同様、学科試験と設計製図試験に分かれており、建築計画や法規、構造、施工などの基礎知識が問われます。設計製図試験では、住宅などを想定した設計課題が与えられ、受験者が実際に設計図を描く実技試験が課されます。試験の難易度は一級建築士に比べて低めであるものの、幅広い知識と設計力が求められます。

木造建築士とは?

木造建築士は、木造の小規模な建築物を専門に設計・監理できる国家資格です。資格は都道府県知事が認定し、主に戸建て住宅や小規模な木造施設の設計を担います。木造建築士が設計できる建物は延べ面積が300平方メートル以下で、階数が2階以下に限られており、鉄筋コンクリート造や鉄骨造といった他の構造物は設計できないものの、木の特性を活かした建物を手がけることで、地域に根ざした住宅設計や小規模なリフォームなどに携わることができます。

建築士として起業するメリット

建築士として独立起業することには、多くのメリットがあります。一級建築士や二級建築士、木造建築士として独立し、自分の設計事務所を構えることは、専門知識や経験を活かして自由度の高い働き方ができる魅力があります。

自分の裁量でデザインできる

自分の設計理念やデザインのこだわりを直接反映できる点は大きなメリットです。社員として働いている場合は、クライアントや上司の意向に沿って設計を行う必要がありますが、独立すれば自分の価値観やスタイルを前面に出した設計が可能になります。個性的なデザインや持続可能な建築、地域特有の文化を反映した建築など、自分の理想を形にすることが可能です。

収入アップが見込める

収入面でも大きな可能性が広がります。自らが経営者として事業を行うため、仕事を受ける量や規模に応じて収入が直接増加します。特にリピーターの獲得や口コミでの評判が広がれば、安定した収入を確保することができ、大規模なプロジェクトを手がけるチャンスも増えます。

人脈が拡大する

また、人脈の広がりが見込めるのも独立のメリットです。クライアントや施工業者、不動産関係者など、多くの人と直接関わる機会が増えるため、人脈を活かして新たな仕事やプロジェクトが舞い込むことがあります。特に地域密着型の建築士事務所を経営する場合は、地元のコミュニティとの関係が深まり、安定した仕事の依頼が続く可能性が高くなります。
独立にはリスクも伴いますが、自分の力で事業を築き上げる達成感や、社会に貢献する喜びを直接感じることができるのが、建築士として起業する大きなメリットです。

建築士としての収入

建築士として独立起業した場合の収入ですが、正直なところピンキリです。一級建築士であれば扱う物件が大きくなるため必然的に収入も大きくなりますが、二級建築士や木造建築士では扱える物件が一級建築士と比べると小さいため、数をこなさないと収入は大きく膨らみません。

それでも努力次第では年収1,000万円以上を目指すことは難しくはありません。しっかりと経験や実績を積んでいくことで確実に収入アップを実現しましょう。

レンタルオフィスを利用して事務所を開業するのもよし

建築士として独立起業するにあたり、初期投資をできるだけ抑えたいと思う人も多いはず。特に事務所代は固定費としてかなりずっしりと重くのしかかるコストの一つ。そのコストを低減するためにはレンタルオフィスを活用するのがベストです。レンタルオフィスは初期費用が掛からないところも多いですし、イニシャルコストも賃貸オフィスよりもかなり抑えることができます。オフィス備品も備わっているので、無駄なコストをかけなくていい点がポイントとなるでしょう。

まとめ

建築士として独立起業することは大きなやりがいがある一方で、多くの課題やリスクも伴います。よって事業を成功させるためには、設計スキルだけでなく経営や営業、マネジメントといった幅広い能力が求められます。

なかでもどうやって仕事を獲得するかはとても大きな課題です。独立直後は実績や知名度がないため、クライアントを確保するのが難しいこともあります。よって、開業前から人脈を広げておいたり、施工会社や不動産会社と連携を図るなど、積極的な営業活動が不可欠です。そうすれば、スタートダッシュの際に比較的早く案件を得ることができ、経営が安定していくことでしょう。自分の力で事業を築き上げる達成感や、社会に貢献する喜びを直接感じることができるのが、建築士として起業する大きなメリットに違いありません。

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