イギリスのマナー解説!旅行前に知るべきポイント

日本とは異なる国々には、それぞれ独自のマナーが存在します。そのため、その国を訪問した際、日本では当たり前の行為であっても、その国の文化ではタブーとされていることがあり、思わずそれをしてしまって注意されたり恥をかいたりする場合があります。

特に「イギリス」は、紳士の国とも称されるほどマナーを重んじる文化を持つ国です。そのため、イギリスを訪れる際には、最低限のマナーを理解しておくことが大切です。

本記事では、イギリスにおけるマナーについて詳しくお伝えします。これからビジネスでイギリスを訪れる予定のある方や、ご家族でイギリス旅行を計画している方は、ぜひ参考にしてください。

イギリスとはどんな国?

イギリスは、正式名称を「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」(The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)と言います。この国はヨーロッパ大陸の北西岸沖に位置する主権国家で、イングランド、スコットランド、ウェールズ、そして北アイルランドという4つの国で構成されています。それぞれの国には独自の文化や伝統があり、イギリス全体の多様性を形成しています。

首都はロンドンで、ロンドンは世界的にも金融、文化、観光の中心地として広く知られています。ロンドンには歴史的な建造物が多く、観光客にとっても魅力的な都市ですが、同時にイギリスの政治経済の要でもあります。イギリスの政治体制は立憲君主制を採用しており、議会制民主主義の下で国が運営されています。現在の君主はチャールズ3世で、2022年にエリザベス2世が崩御した後に即位しました。このように君主制が現在も維持されている点は、イギリスの歴史的伝統を感じさせる一面です。

イギリスは非常に長い歴史を持ち、世界に多大な影響を与えてきた国の一つです。科学、文学、音楽、政治など、多岐にわたる分野で優れた功績を残しており、その影響は現在も続いています。例えば、アイザック・ニュートンやチャールズ・ダーウィンなどの科学者、ウィリアム・シェイクスピアやチャールズ・ディケンズといった作家が世界に与えた影響は計り知れません。

また、イギリスの公式言語は英語で、特にイギリス英語は世界中で使用されています。英語が国際共通語として定着している背景には、かつてイギリスが築いた広大な大英帝国の影響が大きいとされています。そのため、英語を話せることは、イギリスに限らず世界の多くの地域でコミュニケーションの手段として役立つスキルと言えるでしょう。

さらに、イギリスは2020年に欧州連合(EU)から離脱したことでも話題となりました。この「ブレグジット」は世界中で注目を集め、その後の経済や政治にさまざまな影響を与えています。現在でも、国際連合安全保障理事会の常任理事国であり、北大西洋条約機構(NATO)やG7といった主要な国際組織のメンバーとして、世界の舞台で重要な役割を果たしています。

こうした背景から、イギリスはその歴史的・文化的な側面だけでなく、現在も国際社会での存在感を持ち続ける重要な国と言えるでしょう。

イギリス訪問時に守るべきマナー

イギリスを初めて訪れる方にとって、現地の文化やマナーを理解しておくことは大切です。特にイギリスでは伝統や礼儀を重んじる習慣が根付いており、知っておくべきマナーがいくつかあります。ここでは、イギリスを訪問する際に知っておくべき具体的なマナーについてご紹介します。

テーブルマナー

イギリスでのテーブルマナーは、洗練された食文化と長い歴史に基づいており、特にフォーマルな場では細かなルールが重視されます。以下に、代表的なマナーを挙げますので、訪問前に目を通しておきましょう。

ナイフとフォークの持ち方

ナイフとフォークの持ち方は、日本でもある程度馴染みのある食事のマナーですが、イギリスではさらに厳格に守られています。基本的に、フォークは左手に、ナイフは右手に持ちます。この持ち方は、食事中に一貫して使用されるため、フォークを右手に持ち替えることはありません。ナイフを使って食材を切る際は、一口大に切り分けてからフォークで口に運ぶのが基本であり、フォークに刺さった食材をそのままかじることは避けるべきです。
特に注意したいのは、ナイフとフォークを持ち替えないという点です。食べ物を切るときも、フォークは常に左手で使い続けます。この部分は、最初は少し慣れないかもしれませんが、何度か実践するうちに自然と身につくでしょう。
また、フォークを口に運ぶ際には、フォークの背中を上にして食べるのがイギリス流のスタイルです。この持ち方と食べ方は、アメリカのスタイルとは異なります。アメリカでは、ナイフを一度置いてからフォークを右手に持ち替える方法が一般的です。イギリスではこれをせず、一貫して両手でナイフとフォークを使用するのが伝統的なマナーです。
こうした細かな所作も、イギリスでは礼儀正しい振る舞いと見なされるため、ぜひ習慣化しておくことをお勧めします。

パンの食べ方

パンを食べる際は、直接かじるのではなく、一口大にちぎってから食べるようにしましょう。バターを塗る際も、パン全体に一度に塗るのではなく、ちぎった部分に少量ずつ塗るのがイギリスでのマナーです。こうした小さな所作も、イギリス文化では礼儀として重要視されています。

スープの飲み方

スープはスプーンを自分から遠ざける方向にすくうのが基本です。そして、スプーンを静かに口元へ運び、音を立てずに少量ずつ飲みます。急いで飲むとスープがこぼれたり、音が出やすくなるため、ゆっくりとしたペースを心がけましょう。また、スープが熱い場合でも息を吹きかけて冷ますのはマナー違反とされています。

食事中のエチケット

食事中のエチケットも大切です。例えば、口に食べ物を入れたまま話すことや、大きな音を立てて食べることは避けましょう。会話をする際は、口の中の食材がすべてなくなってからにするのが基本です。また、食べ物を咀嚼する際も音を立てないように注意が必要です。こうした行為はイギリスでは非常に無作法とみなされるため、特に気をつけましょう。

飲み物の飲み方

飲み物を飲む際には、口元を軽くナプキンで拭ってからグラスに口をつけるのが一般的なマナーです。ナプキンは食事中、膝の上に広げて使用し、必要に応じて口元や手元を拭くようにします。食事が終わった後は、ナプキンを軽く畳み、テーブルの左側に置いておくと良いでしょう。

食事が終わったサイン

食事が終わったことを示すサインとして、ナイフとフォークを平行に揃え、プレートの中央に置きます。一方、ナイフとフォークをプレートの縁に斜めに置くと、まだ食事中であることを示します。このような細かな所作もイギリスでは重要視されるため、食事を終える際に忘れないよう心がけましょう。

チップのマナー

海外では、提供されたサービスに対してチップを支払うことが一般的ですが、イギリスでは他国と比べてやや独特な習慣があります。場面ごとに適切な対応が求められるため、事前に基本的なルールを把握しておくと安心です。特に、過度なチップは相手に戸惑いを与えることがあるため、適正な金額を理解しておくことが大切です。

飲食店の場合

レストランなど、ウェイターやウェイトレスがテーブルサービスを提供する飲食店では、食事の料金に加えて10~15%をチップとして渡すのが一般的です。ただし、レシートにすでにサービス料(Service Charge)が記載されている場合は、追加のチップを渡す必要はありません。この場合、支払いの際に「サービス料は含まれていますか?」と確認すると安心です。
一方、カフェやバー、パブのようなセルフサービスに近い場所では、基本的にチップを渡す必要はありません。ただし、特に素晴らしいサービスを受けたと感じた場合には、少額のチップを置くことで感謝の気持ちを伝えるのも良いでしょう。

タクシー

イギリスでタクシーを利用する際、チップを渡すことは一般的ではあるものの、義務ではありません。多くの場合、運賃よりも少し多めに支払うことで感謝を示すことができます。たとえば、運賃が28.50ポンドだった場合、30ポンドを渡して「Keep the change」(お釣りは取っておいてください)と言えば十分です。このような方法はスマートで、運転手に感謝の意を伝える簡単な手段です。

ホテル滞在時

ホテル滞在時にチップを渡すべき場面もいくつかあります。たとえば、チェックインやチェックアウト時にポーターが荷物を運んでくれた場合には、1〜2ポンドを渡すのが一般的なマナーです。また、ルームサービスを受けた場合や特別な依頼をした場合には、数ポンドを渡すと丁寧です。
ただし、日々のルーム清掃に対するチップは、イギリスでは必須ではありません。しかし、長期滞在をする場合や、特に行き届いた清掃や特別な配慮を受けた場合には、ベッドサイドテーブルやデスクに数ポンドを置いて感謝を伝えると良いでしょう。

レディファースト

レディファーストは、女性に対して礼儀正しく接する紳士的な行動を指し、イギリスの社交文化において長い歴史を持つ概念です。たとえば、男性が女性のためにドアを開けて通りやすくする、椅子を引いて座りやすくする、または車道側を歩いて安全を確保するなどの行為がその典型例とされています。このような行動は、礼儀と気遣いを表すものとして社会的に尊ばれてきました。

しかし、近年では男女平等やジェンダー意識の向上に伴い、レディファーストの捉え方が大きく変わりつつあります。もはや性別に基づく礼儀だけではなく、誰に対しても敬意を持ち、親切に接することが求められる時代になっています。たとえば、男性から女性への一方的な配慮だけではなく、性別や年齢、立場にかかわらず、互いに思いやりを持つ行動が重視されています。

そのため、イギリスでの滞在中には「レディファースト」の精神を広く捉え、人種や性別を問わず、全ての人に対して礼儀正しく接することを心がけましょう。たとえば、後ろに人がいればドアを押さえておく、年配の方がいれば先に通す、重い荷物を持つ人を手助けするなど、小さな行動の積み重ねがイギリスでの良い印象につながります。

イギリスの文化では、相手への気遣いや親切が社会の潤滑油となっており、こうした行動が自然な形で行われています。訪問者である私たちも、この精神を取り入れることで、より豊かな交流やポジティブな体験を得られるでしょう。

まとめ

イギリスにおけるマナーの基本は、他者への敬意と思いやり、そして控えめで礼儀正しい振る舞いにあります。こうしたマナーは、日常生活のあらゆる場面で重要視されており、相手への配慮が自然と求められる文化が根付いています。

イギリスを訪れる際には、飲食時の細やかなテーブルマナーや適切なチップの習慣、レディファーストの精神など、場面ごとのマナーを理解し、実践することが大切です。これらを身につけることで、現地の人々との交流がより円滑になり、滞在を心地よいものにすることができるでしょう。

また、イギリスでは性別や地位に関係なく誰もが互いに敬意を払うことが重視されています。こうした精神を持って接することで、イギリスの文化に馴染み、相手にも好印象を与えることができます。

これらのマナーを事前に学び、滞在中に実践することで、イギリスの文化を尊重しつつ、自身の旅や滞在をより豊かなものにしましょう。相手への気遣いや礼儀正しい態度は、イギリスの文化を楽しむ鍵となります。

おすすめの記事