日本でもフランス料理を楽しむ機会はあると思いますが、フランス現地で仕事のために訪れる機会がある方にとって、フランス料理を食べる場面で恥をかかないようにすることは重要です。そのため、普段からフランス料理の食べ方について研究しておくことをお勧めします。
実際に、フランス料理のフルコースのように次々とたくさんの料理が提供される場面では、どのように食べるのが正しいマナーなのでしょうか。また、料理を食べる際のマナーだけでなく、それ以外に注意すべきポイントはあるのでしょうか。
本記事では、フランス料理を楽しむ際に役立つマナーについて詳しく解説していきます。
目次
フランス料理とは?
フランス料理は、中国料理やトルコ料理と並ぶ「世界三大料理」のひとつとして知られています。フランス料理と聞くと、高級感漂うイメージを抱く方も多いかもしれませんが、フランス人が日常的に高級料理ばかりを食べているわけではありません。
フランス料理にはさまざまな種類があり、その内容も幅広いです。たとえば、高級レストランで提供される洗練された華やかな料理(オートキュイジーヌ)や、家庭的でカジュアルな雰囲気が楽しめるビストロ料理があります。また、プロヴァンス料理やブルターニュ料理など、地域ごとに特徴のある伝統的な料理もフランス料理の一部です。
一般的に日本人が「フランス料理」と聞いて思い浮かべるのは、オートキュイジーヌが多いでしょう。しかし、フランス料理はそれだけにとどまらず、フランスの文化や地域性を反映した多彩なスタイルを持っています。
フランス料理の飲み物
フランス料理では、飲み物の選び方や飲み方が非常に重要とされています。料理に合った適切な飲み物を選ぶことは、フランス料理をより一層楽しむためのポイントであり、また基本的なマナーでもあります。
ワイン
フランス料理といえば、やはりワインが定番です。料理との相性を考えてワインを選ぶことで、食事の楽しみが一層深まります。たとえば、シャルドネやソーヴィニヨン・ブランといった白ワインは、魚介類や白身肉、クリームソースを使った料理との相性が抜群です。一方で、ピノ・ノワールなどの赤ワインは、赤身肉や煮込み料理、熟成チーズによく合います。また、ロゼワインはそのさっぱりとした味わいから、前菜やサラダ、夏にぴったりの料理によくマッチします。
ワインを楽しむ際には、まずグラスを軽く回して中の香りを確認することがマナーです。そして、一口飲む前に香りを楽しみ、その後でゆっくりと味わうことで、料理との調和を感じることができます。このようにワインの種類と料理の組み合わせを理解することで、フランス料理の魅力をさらに引き出すことができるでしょう。
シャンパン
特別な席やお祝いの場では、シャンパンがよく選ばれます。シャンパンはその特別感から、前菜や魚料理、軽いデザートなどと相性が良く、コース料理の中でも幅広く楽しめます。ただし、炭酸が含まれているため、飲みすぎるとお腹が膨れてしまいやすいので注意が必要です。
料理と飲み物のマリアージュ(組み合わせ)を楽しむことは、フランス料理の魅力を引き立てる大切な要素のひとつです。
フランス料理の服装
フランス料理を楽しむ際の服装は、訪れるレストランのグレードやシチュエーションに合わせて選ぶことが大切です。
高級フランス料理店では、男性の場合、スーツやジャケットの着用が基本です。ネクタイやポケットチーフでアクセントを加えることで、より洗練された印象を与えられます。靴は革靴が適しており、デニムやスニーカーのようなカジュアルすぎる服装は避けるのがマナーです。女性の場合は、エレガントなワンピースやドレスがふさわしく、落ち着いた色合いと上品さを意識するとよいでしょう。シンプルで洗練されたアクセサリーやヒールのある靴を取り入れることで全体をまとめつつ、過度な肌の露出は控えるのが適切です。
一方で、ビストロやブラッスリーといったカジュアルな雰囲気のレストランでは、男性はポロシャツやチノパン、女性はシンプルなワンピースやカジュアルなブラウスとパンツなど、リラックスしたスタイルで問題ありません。靴はローファーやレザースニーカー、女性ならフラットシューズなどが適しており、スポーティすぎるものや派手な柄の服装は控えるのが無難です。
さらに、フランス料理店では、季節感を取り入れたコーディネートもポイントです。春には柔らかな色合いや軽やかな素材、冬には落ち着いたトーンや暖かみのある素材感を選ぶなど、服装で季節の雰囲気を表現するのもフランス流の楽しみ方です。
最後に、事前にレストランのドレスコードを確認しておくことが重要です。その場にふさわしい服装を心掛けることで、料理とともに特別な時間をより一層楽しむことができるでしょう。
フランス料理の食べ方
フランス料理のコース料理は、個々の料理を楽しむだけでなく、提供される順序や一連の流れも含めて味わうことが重要です。以下に、一般的なフランス料理の食べ方やマナーについて詳しく解説します。
食前酒とパン
コース料理の始まりには、食前酒が提供されることが多く、シャンパン、白ワイン、軽いカクテルなどが一般的です。これにより、食欲が刺激され、コースへの期待感が高まります。また、パンが最初に提供される場合もありますが、パンは主菜と一緒に食べるのが基本です。初めからパンを食べ過ぎてしまうと、後半の料理を楽しめなくなるため、注意しましょう。
オードブル(前菜)
最初に出されるオードブルには、サラダ、魚介類、パテなどが含まれることが多いです。これらはナイフとフォークを使い、一口サイズにカットして食べます。フランス料理では、口の中で異なる味や食感を楽しむことが重要ですので、ソースや付け合わせとともに少しずつ食べるのがポイントです。
スープ
スープは、スプーンを使い奥から手前にすくうようにして飲みます。その際、スープ皿を手に持たないのが基本的なマナーです。スープが少なくなった場合には、スプーンを軽く傾けてすくうようにしましょう。スープの香りや味わいをゆっくり楽しむことも大切です。
魚料理
魚料理では、白身魚や甲殻類などが出されることが一般的です。専用のナイフとフォークが提供される場合もあり、骨がある場合でも丁寧に取り除きながら食べます。ソースを残さず味わうため、少しすくいながら食べると料理の風味を最大限に堪能できます。
肉料理
メインディッシュの肉料理では、牛肉、鶏肉、鴨肉などが提供されます。ナイフで一口サイズに切り分け、フォークで少しずつ食べるのが基本です。付け合わせの野菜やソースを一緒に食べることで、料理全体のバランスを楽しむことができます。特にフランス料理では、肉の焼き加減に注目され、Saignant(セニャン:レアに近い)やÀ Point(ア・ポワン:ミディアムに近い)といった焼き加減が一般的です。これらは肉の旨みや柔らかさを引き出すための最適な焼き加減とされていますので、注文時に知っておくと便利です。食べ終わったナイフとフォークは平行に揃えて皿の右側に置くのがマナーです。
デザート
最後に提供されるデザートには、ケーキやフルーツ、クリームを使った料理などがあります。デザート専用のスプーンやフォークを使い、上品に食べるよう心掛けましょう。デザートには、コーヒーや紅茶がセットで提供されることもありますので、食後のひとときをゆったりと楽しむのがおすすめです。
フランス料理のマナーを意識しながら食事を進めることで、料理の魅力を最大限に味わうことができます。また、こうした一連の流れを通じて、フランス料理特有の優雅な時間を満喫することができるでしょう。
フランス料理のナプキンの使い方
フランス料理を楽しむ際、ナプキンの使い方にもマナーが求められます。以下に、正しい使い方と注意点をまとめました。
座席に着いたら
席に案内されたら、まず最初にナプキンを膝の上に置きましょう。この動作は、飲み物や料理が提供される前に済ませるのが基本です。ナプキンを広げる際は、大きく広げすぎず、膝を軽く覆う程度にたたむのがポイントです。
食事中の使い方
ナプキンは主に口元や指を軽く拭うために使用します。例えば、ソースや油が付いた場合には、柔らかく押さえるようにして拭くとよいでしょう。こすったり、大きな動きで拭ったりするのは避けるべきです。また、ナプキンを食器やカトラリーを拭くために使うのは、マナー違反とされていますので注意してください。
席を外す際のマナー
食事中に一時的に席を外す場合には、ナプキンをテーブルの左側か椅子の上に軽くたたんで置きます。このとき、ナプキンを広げたり、乱雑に置いたりしないようにしましょう。
食事後のナプキンの置き方
食事が終わったら、ナプキンをきれいにたたむ必要はありませんが、軽く整えて座っていた席のテーブルの左側に置きます。ナプキンを丸めたり、汚れた面を見せるように置いたりするのはマナー違反とされています。また、椅子の上や皿の上に置くことも避けるのが無難です。
ナプキンは食事中の細やかな気配りを表すアイテムでもあります。その使い方ひとつで、より洗練された印象を与えることができるため、正しいマナーを身につけておくとよいでしょう。
フランス料理の支払い
フランスのレストランでは、日本のように食事が終わると自動的に会計伝票がテーブルに置かれる仕組みは一般的ではありません。支払いの際には、自分からスタッフに声をかける必要があります。「L'addition, s'il vous plaît(ラディスィオン、シルヴプレ)」とフランス語で言うか、英語で「Check, please」と伝えるとスムーズです。
サービス料とチップの扱い
フランスのレストランでは、法律でサービス料(Service compris)が料金に含まれているため、基本的に追加でチップを支払う必要はありません。これは伝票に「Service compris」と明記されていることが多いので確認してみましょう。
ただし、料理やサービスに特に満足した場合や高級レストランで特別なもてなしを受けた場合には、感謝の気持ちとしてチップを渡すこともあります。この場合、総額の5~10%程度を目安に、現金で渡すのが一般的です。チップを渡すタイミングは、スタッフが会計を済ませた後や帰り際に直接手渡すのが自然です。
フランスではチップの習慣が日本とは異なるため、無理に多く渡す必要はありません。気持ちを表す範囲で適切に対応することが、スマートなマナーと言えるでしょう。
まとめ
フランス料理を楽しむ際には、これまでに紹介したナプキンやカトラリーの使い方、飲み物の選び方、支払い方法といったマナーだけでなく、さらに気を付けるべきポイントがいくつかあります。たとえば、「食事中にスマートフォンを使用しない」「口に食べ物が入った状態で話さない」「料理をシェアしない」「落としたカトラリーを自分で拾わない」といった行動は、フランス料理に限らず、どの国の料理でも避けるべきマナー違反とされています。
これらのマナーを守ることで、自分自身が料理を心から楽しめるだけでなく、一緒に食事をする相手やレストランのスタッフにも心地よい時間を提供できます。また、フランス料理の文化や食事作法を学ぶことは、その国の文化を理解する第一歩でもあります。
最低限のマナーを身に付け、余裕をもって食事を楽しむことができれば、フランス料理を味わう時間がさらに特別なものとなるでしょう。