私募債(社債)とは?メリット・デメリット

企業の成長にともなって資金調達が必要でも、上場していないため融資が通らず困っている企業も多いのではないでしょうか。
私募債は、中小企業やスタートアップなど、銀行から融資を受けられない企業も資金調達ができる方法です。
そこで、今回は、私募債の特徴や発行の流れについて解説します。
資金不足で困っている企業は参考にしてください。

私募債(社債)とは?

私募債は、会社が資金調達するために発行する社債の1つです。
企業だけが発行可能な債権で、投資家に販売することで資金を借りることができます。
少数の限られた投資家にのみ購入を呼びかけるため、通常の社債を発行するより簡単にできるのが特徴です。
通常、資金調達を行うとなると、銀行などの金融機関からの融資を受けることが多いです。
しかし、企業規模や経営状況、事業収支などの審査を行って認可されなければ受けられないことがデメリットになります。
一方、私募債であれば、手続きが簡単で柔軟性が高く、資金調達がしやすいというメリットがあるのです。

私募債の資金調達が向いている企業の特徴

資金調達を検討するとき、自社にはどの方法が適しているか悩む企業は多いでしょう。
私募債による資金調達が向いている企業の特徴は、以下の通りです。

  • 小規模企業やベンチャー企業
  • 親類や取引先から信頼がある会社
  • 自社で資金管理や返済計画が可能な会社

小規模企業やベンチャー企業は、信用力が少ないため、銀行の融資を受けられないことが多いです。
私募債であれば資金調達にかかるコストを削減でき、担保や保証人が不要なのでおすすめです。
ほかにも、自社で資金管理や返済計画が可能な会社なら、費用を少なく抑えられます。
利息の支払い、返済までの資金繰りなどを自社で考え、計画を実行できる会社も私募債に向いていると言えるでしょう。

私募債の種類

私募債は、「少人数私募債」「銀行保証付私募債」「信用保証協会保証付私募債」の3種類があります。
それぞれ特徴が異なるので、詳しく解説します。

少人数私募債

少人数私募債とは、50人未満の投資家に対して発行する私募債のことです。
一般的に、企業関係者の家族や友人、取引先など、限定的な範囲の投資家に購入してもらうことが多いです。
メリットとしては、手続きが簡単で、最小限の費用で社債を発行できることが挙げられます。
そのため、起業を検討している人や、スタートアップ、中小企業が資金調達として活用するケースが多い方法です。
注意点としては、発行後の所有者も50人未満にしなければならないことで、投資家がほかの投資家に転売しないよう、転売制限がある書面を交付しておく必要があります。

銀行保証付私募債

銀行保証付私募債とは、銀行が企業に代わって社債の引受、信用保証、事務手続きを行ってくれる私募債のことです。
また、銀行で私募債を購入する投資家を探してくれるため、企業で投資家を探す手間がかかりません。
一方で、銀行に対する費用(保障費用、事務委託手数料、利息)などを払う必要がある上、銀行の審査をクリアしなければならないデメリットもあります。

信用保証協会保証付私募債

信用保証協会保証付私募債とは、銀行と信用保証協会が共同で保証する私募債のことです。
銀行保証付私募債は、銀行のみの保証料だったのに対し、銀行・信用保証協会両方に補償料を支払うため、コストがかかるのがデメリットです。
一方、発行できる金額が大きいため、多くの資金を必要とする場合には有効な手段と言えるでしょう。

私募債(社債)のメリット

私募債は、公募債と比べて手続きが簡単で、手軽に資金調達ができるのが特徴です。
この章では、私募債の具体的なメリットを解説します。

資金調達がしやすい

私募債は、返還期間や利息などを企業側で設定できるため、返済額を調整できるのが大きなメリットです。
金融機関から融資を受けると、毎月元本と利息の返済が必要ですが、私募債は利息だけを支払うため、返済額を抑えて利用できます。

発行手続きが簡単

私募債は、公募債と比べて発行手続きが簡単です。
公募債の場合、厳格な規制や1ヶ月ほどかかる有価証券届出書の提出など、手続きに時間がかかります。
一方、私募債は株主や委員会での決定で発行ができるため、手続きしやすいのが特徴です。
また、銀行保証付私募債なら、社債の管理などの業務も一任できるので、より手続きが簡略化できます。

保証人や担保の準備が不要

私募債の発行は、保証人や担保の準備する必要がありません。
金融機関の融資であれば、経営者本人と会社の信用審査や連帯保証人を立てることが必要です。
しかし、私募債であれば金融機関の審査を通過しなかった企業にも資金調達のチャンスがあります。

会社の信用力を高められる

私募債は、各機関の財務状況の審査をクリアした企業だけが発行できるので、信用力を高めることができます。
発行した社債は、証券保管振替機構に記録されるため、信用力が高い企業だと認知させる効果も見込めます。

私募債(社債)のデメリット

小規模企業にメリットの多い私募債ですが、デメリットもあります。

スケジュールの変更が難しい

私募債は、発行する時に設定された満期や返済方法を変更できません。
経営をしていくと、予期せぬ資金繰りなど、返済が間に合わない状況になる可能性も考えておきましょう。

一括返済が必要

私募債は、債券の満期になると、投資家に一括返済しなければなりません。
毎月の返済がないのがメリットの私募債ですが、3~10年の償還期には返済が求められます。
つまり、私募債によって資金調達をした場合、返済できるよう計画的に考える必要があります。
万が一、返済資金が不足した場合、金融機関からの借り入れ、新しく私募債の発行をすることも可能です。
しかし、返済総額が増えるだけということに留意しておきましょう。

大きな資金を集めにくい

私募債は1億円未満までしか調達できないため、大きな資金は集めにくいデメリットがあります。
そのため、まとまった資金を調達したい場合は、公募債や金融機関の融資を利用したほうが良いでしょう。

【私募債】発行から返還までの流れ

最後に、私募債発行から返還するまでの流れを確認しておきましょう。

事業計画書の作成、私募債発行の決議

まず、引受人を説得するためにも、事業計画書を作成します。
資金の目的と必要資金を明確にしたら、私募債を発行することを株主総会や委員会で話し合い、決定しましょう。
株主総会や委員会で決議を行う場合、議事録を作ることも忘れずに行っておく必要があります。

募集要項の作成・引受人の決定

私募債の期間や利率を決めて、募集要項を作成します。
私募債は、投資家から資金調達をするため、高利率であるほど引受人も増えやすいです。
一般的に、利率は「2~5%」、期間は「3年・5年・10年」に設定すると良いでしょう。

社債の発行・申し込みの受付

私募債を発行したら、説明会や直接訪問などの方法で勧誘を行います。
注意しなければならないのは、「私募債は勧誘した人も含めて50名未満」にしなければならないことです。
引受人希望者には、私募債の受付を行い、私募債の内容の誤認がないか審査し、問題がなければ発行手続きを行います。

社債の管理

私募債を発行したら、発行した投資家の情報を「社債原簿」に記録し、管理しておきましょう。
具体的には、以下の項目を記載しておきます。

  • 引受人の氏名・住所
  • 引受人の購入した私募債口数や金額
  • 発行日および返還期間

社債の返還

発行したときに決めた返還日が来たら、引受人に元金返還を行って完了です。

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