土地家屋調査士は士業の一つですが、司法書士や弁護士、税理士、社会保険労務士などに比べるとマイナーなイメージの業種です。しかし、独立しやすいことや廃業しにくいことで知られており、ひそかな人気のある職業の一つです。
そんな土地家屋調査士として起業してみようと考えている場合、どのようなステップで起業準備をするとよいのでしょうか?また土地家屋調査士の年収はどれくらいが見込めるのでしょうか?
今回は土地家屋調査士として起業する方法について見ていきたいと思います。
目次
土地家屋調査士とは?
土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記の専門家として土地や建物の境界や面積を測量し、登記するための資料を作成する役割を担っています。不動産の表題登記に必要な申請を唯一代理できる専門家です(表題登記とは、土地や建物の所在地や形状、面積、所有者の情報などを公的に記録し、不動産の基本的な情報を明らかにするための手続きのこと)。
土地家屋調査士の主な仕事には、土地の測量と境界確認があります。土地の境界を明確にして面積を測量することで、土地を分ける分筆や、複数の土地をまとめる合筆の際に必要な手続きを行います。
さらに、新しく建てた建物や増改築をした建物について登記簿に記録する建物の表示登記も土地家屋調査士が行います。建物の所在や構造、面積などを公的に証明するために必要となる重要な仕事で、不動産の現状を調査し登記内容と実際の状態が一致しているかを確認する作業は土地家屋調査士ならではの業務と言えるでしょう。
ほかにも、土地の境界が不明確な場合には「筆界特定制度」を利用して境界を特定する手続きの支援も行います。具体的には、土地の境界を巡るトラブルが発生した際に、中立的な立場で調査を行い、公正な解決を図る役割を果たします。
土地家屋調査士は不動産の権利関係を明確にし、安全で円滑な不動産取引を支える重要な役割を担っています。
土地家屋調査士になるには?
土地家屋調査士になるためには、国家資格である「土地家屋調査士試験」に合格し、その後登録を行う必要があります。試験は法務省が毎年1回実施しており、筆記試験と口述試験が行われます。筆記試験では、測量に関する知識や作図が問われる午前の部、不動産登記法や民法などの法律知識が求められる午後の部があります。この筆記試験に合格した人だけが、土地家屋調査士として必要な知識を確認する口述試験を受けることができるのです。
なお、試験に合格したら日本土地家屋調査会士連合会に登録し、土地家屋調査士会に入会する必要があります。そして、土地家屋調査士事務所などで実務経験を積むことが一般的な流れです。土地家屋調査士は実務経験がなくても登録可能ですが、実際の測量や登記の現場では法律だけでなく専門的な技術が必要とされるため、研修を受けたり現場で経験を積んだりすることが重要視されています。こうした過程を経て、土地や建物の登記に関する専門家としての道を歩むことができるようになります。
土地家屋調査士として必要なスキル
土地家屋調査士として必要なスキルは、専門的な知識や技術に加えてコミュニケーション力や問題解決能力など多岐にわたります。
測量技術
土地家屋調査士に最も必要なのが測量技術です。土地の境界や面積を正確に測定して、作図する能力は必然的に求められます。さらに測量機器の操作や測量ソフトの活用スキルも必要です。測量結果は登記に直接影響するため、精度の高い作業が要求されます。
法律に関する知識
不動産登記法や民法などの法律知識も土地家屋調査士には必要です。土地や建物の登記は法律に基づいて行われるため、正確な法的知識を持ち得ていなければなりません。特に、登記に関する手続きや法改正への対応力はなくてはならないスキルです。
コミュニケーションスキル
土地家屋調査士に限らずすべての職業においてコミュニケーションスキルは重要です。土地の境界を確定する際には、隣接する土地の所有者と協議し合意を得る必要があるため、交渉力や調整力が要求されます。さらに相手の立場を理解し、円滑に話を進めるコミュニケーション能力は絶対に必要です。
問題解決能力
たとえば、土地の境界が不明確だったり、隣接地とのトラブルが発生した場合には、法的手続きや筆界特定制度を活用しながら解決に導くスキルが必要です。単に知識だけ持っていても、それを活用できるスキルを持ち得ていないと宝の持ち腐れです。そのため、何かしらの解決手段を提示できるスキルも身に付けておきましょう。
土地家屋調査士として起業するメリット
土地家屋調査士として独立起業をするにあたり、次のようなメリットがあるということを知っておきましょう。
安定した職業
土地家屋調査士は、不動産市場がある限り需要が続く安定した職業であるため、自らの技術と知識を活かして地域に貢献できる点が大きなメリットです。資格を活かして独立することで、専門性を武器に長く活躍できる職業と言えるでしょう。
独立すれば自由度が高まる
起業して自分のオフィス構えることにより、業務の自由度が高まり、自分のペースで仕事ができる点もメリットのひとつ。案件受託の選択やスケジュール管理を自分で行うことができ、ライフスタイルに合わせた働き方が可能です。
ちなみに行政書士や宅地建物取引士など、不動産に関わる資格を取得することで、対応できる業務の範囲を広げることが可能になります。
収入面でのアップが見込める
独立起業すれば受注する案件の数や規模に応じて収入を増やせる可能性があります。特に、土地の分筆や建物の新築など不動産取引が活発な地域では安定した仕事の需要が見込まれます。顧客からの直接依頼を受けることで、利益率を高く保つことができるのも独立の魅力です。
初期投資が比較的少ない
独立起業は、初期投資が比較的少ない点も魅力です。土地家屋調査士として起業する際には、必要な機器やソフトウェアの購入はありますが、大規模な事務所を構える必要はありません。自宅やレンタルオフィスなどの小規模なオフィスでスタートすることができるため、リスクを抑えつつ事業を開始できます。
土地家屋調査士としての収入
一般的に土地家屋調査士としての平均年収は500〜600万円であると言われています。国家資格として独占業務に携われることもあり収入は高めに設定されていますが、独立起業すればさらに上を目指すことが可能です。経験や実績を積めば年収1,000万円も夢ではありません。
まとめ
土地家屋調査士は景気の変動に左右されやすい職種です。景気が良い時には住宅建築や公共工事が活発になり、表題登記や測量の依頼も増加しますが、景気が悪くなると不動産取引が減少し、それに伴って業務の機会も少なくなります。
そのため、景気の先読みをしつつ、安定して収入が獲得できるような仕組みづくりはとても重要です。
土地家屋調査士としての本業に邁進することはもちろん、経営ノウハウも蓄積しながら、独立起業を成功に導くことが土地家屋調査士としての成功につながります。