インターネットが当たり前に使われている現在では、ITデバイスから個人情報を誰もが簡単に入力し、安全に処理されているかのようにふるまっています。しかし、実際には個人情報が盗まれ、名簿業者に高額売買されている実態を忘れてはなりません。
そんな中、情報セキュリティは現代社会において極めて重要な役割を果たしています。デジタル化が進む中、膨大な情報が日々ネットを駆け巡りさまざまな危機にさらされています。その結果、プライバシーの保護やビジネスの信頼性、さらには国家の安全保障にまで影響を及ぼすこともあり得るのです。
そこで登場するのがセキュリティ技術者です。誰もが安全にネット環境やシステムを利用できるよう、日夜監視やサイバー攻撃対策を施しています。
今回はセキュリティ技術者として起業する方法について見ていきたいと思います。
目次
セキュリティ技術者とは?
セキュリティ技術者(セキュリティエンジニア)とは、コンピュータシステムやネットワークの安全性を担保する仕事を担う人を指します。
昨今、サイバー攻撃も多様化し、従来のセキュリティ対策をいとも簡単にかいくぐり高度なウィルスを仕込まれたりすることも増えています。
そんな中セキュリティ技術者の主な役割は、サイバー攻撃やデータ漏洩、悪意のある活動からシステムやデータを保護すること。システム障害やデータの喪失は、業務の停止や経済的損失を引き起こし、顧客や取引先からの信頼を失う原因となり得るため、セキュリティ技術者の役割は非常に大きいものとなります。
セキュリティ技術者の役割
セキュリティ技術者の主な役割としては次のようなものがあります。
セキュリティシステムの設計・構築
セキュリティ技術者は、セキュリティ対策の計画を組織のニーズに合わせてファイアウォール、侵入検知システム、暗号化技術などのセキュリティシステムを設計します。そして、設計したセキュリティシステムを実際に導入し、適切に機能するよう設定・調整します。
脆弱性診断とペネトレーションテスト
どのようなサイトやシステムでも脆弱性はあります。そのような脆弱性の高い箇所を事前に把握しておくためにもテストを行い脆弱性の診断をしておく必要があります。
ペネトレーションテストとは、組織の情報システムやネットワーク、ウェブアプリケーションなどに対し、外部攻撃を模擬してセキュリティ上の脆弱性を検出・評価するためのテスト手法のこと。実際の攻撃者が利用する技術や手法を用いてシステムの防御力を検証して、セキュリティ対策の効果を確認することが目的です。
セキュリティポリシーの策定・運用
またセキュリティ技術者は、組織全体で遵守すべきセキュリティルールやガイドラインを作成することを担うこともあります。サイトやシステムを利用する従業員に対し、セキュリティ意識を高めるためのトレーニングやセミナーを実施することで、セキュリティへの甘い考えを改めさせるのが目的です。
セキュリティ監視とインシデント対応
セキュリティ技術者は、システムやネットワークを常時監視して、不審なアクションを早期に発見する役割を担います。万が一、セキュリティ侵害が発生した場合には、速やかに防御策を施し、被害を最小限に抑えることが求められます。
最新情報の収集と対策
セキュリティ技術者は、常に新たなサイバー脅威や攻撃手法に関する情報を収集しておかなければなりません。昨年まで使えたセキュリティ対策が今年は使えないといったことは普通に起こります。最新の脅威に対応するため、セキュリティ対策を継続的に見直し更新していかなければなりません。
セキュリティソフトウェアの開発・カスタマイズ
既存のマルウェア対策ソフトに頼り切るだけでなく、必要に応じて自社向けのセキュリティツールやスクリプトを開発することも、セキュリティ技術者に求められることのひとつです。
セキュリティ技術者として起業するには?
セキュリティ技術者として独立起業する場合には、サーバやOS、セキュリティ関連、ネットワークなどの幅広い知識が必要です。一般的にはセキュリティ技術者はIT業種の中では何か構築していくという職種ではなく、保守・サポートがメインとなります。そのため、システムやアプリ構築のスキルのあるエンジニアが、開発とセットでセキュリティ対策をサービスメニューに組み込むとビジネス的にはうまく回る可能性が高いです。
セキュリティ技術者に必要なスキルや資格
セキュリティ技術者として独立していくのに持っておいたほうが良いスキルや資格には次のようなものがあります。
ITに関する高度な知識
まず、ネットワークの理解はセキュリティ技術者に不可欠です。たとえば、TCP/IPやルーティング、ファイアウォール、VPNなどのネットワーク技術に精通していることが最低限必要です。また、オペレーティングシステムの知識も持っておきたい知識のひとつ。Windows、Linux、UNIXなどのOSの内部構造やセキュリティ設定について理解しておきましょう。さらに、SSL/TLSやSSH、PKIなどのセキュリティプロトコルや暗号化技術の知識も持っておきたい知識です。
資格
ITの基本的な知識やセキュリティを問う資格として次のような資格を持っておくと便利です。
情報処理安全確保支援士試験(登録セキスペ)・・・経済産業省が認定する情報セキュリティの国家資格
基本情報技術者試験(FE)・・・ITの基礎知識を証明する国家資格
応用情報技術者試験(AP)・・・基本情報技術者試験の上位資格でより高度なIT知識が求められる
情報セキュリティマネジメント試験(SG)・・・情報セキュリティの管理やガバナンスに関する国家資格
CISSP(Certified Information Systems Security Professional)・・・国際的に認知された高度なセキュリティ資格
CompTIA Security+・・・セキュリティの基礎知識をカバーするベンダーニュートラルな資格
Microsoft Certified: Azure Security Engineer Associate・・・Azure環境でのセキュリティ実装能力を証明する資格
セキュリティ技術者としての収入
セキュリティ技術者が独立起業して生計を立てていく場合、平均年収は約600~1,500万円程度が見込めると言われています。もともとIT技術者は年収水準が高い傾向にありますが、稼げる額に1,000万円近い幅があるのは、営業力のあるエンジニアかそうでないかといったこと、もともと属していた会社の肩書きを活用したネットワークがあること、資格の有無、技術レベルの差などが挙げられます。
これらの要素が複合的に合わさったうえで収入レベルは決まるものの、やはり重要となるのは営業力です。どんなにスキルが備わっていても仕事が取れなければ意味がありません。独立起業した際には、技術スキル向上はもちろん、コミュニケーションスキルも磨いていく必要があります。
まとめ
年々高度化及び重症化するサイバー攻撃ですが、情報セキュリティはビジネスの継続性を確保する上でとても重要です。システム障害やデータの喪失は、企業の業務の停止や経済的損失を引き起こし、顧客や取引先からの信頼を失う原因となりますので、それらを守れるセキュリティ技術者の存在は、今後更なるニーズが見込めることが予想されます。
セキュリティ技術者として独立起業するのであれば今がチャンスです。