ビジネス用語の中には、日本語でなく英語をベースにしたものが数多く存在します。そのような言葉は普段使っている人にとってはなじみのあるものですが、業種・業態によっては「どのような意味の言葉なの?」と知らない言葉もあるのではないでしょうか。
今回紹介する「コンセンサス」という言葉はビジネスシーンでよく使われる言葉の一つです。本記事では、コンセンサスについてお伝えしていきます。
目次
コンセンサスとは?
コンセンサスとは(Consensus)、複数の関係者が意見の一致に達することを指します。完全な全員一致ではなく、大多数が納得し反対意見があったとしても、全体として「これで進めよう」という合意が得られた状態を意味します。主にビジネスや政治の分野で、重要な意思決定を行う際に重視されます。
ビジネスにおけるコンセンサスとは、プロジェクトや意思決定の過程で関係者全員が一定の理解や納得感を持って合意に至ることを指します。企業活動においては、プロジェクトの立ち上げや方針転換、新規事業の推進などでさまざまな意見が出ることが一般的です。そうした場面でコンセンサスを形成することで、関係者全員が納得感を持ち、後々の反発や誤解を防ぐことができます。また、合意形成を経ることでチーム全体のモチベーションや責任感が高まり、プロジェクトがスムーズに進行しやすくなります。
一方で、コンセンサスを重視しすぎると意思決定に時間がかかり、競争が激しい市場環境では機会損失を招く可能性もありますので、ビジネスではスピードと合意形成のバランスを取ることが重要です。特に、経営者やリーダーが最終判断を下しつつも、関係者の意見を尊重するプロセスが求められます。
コンセンサスを取らないデメリット
ビジネスでコンセンサスを取らずに物事を進めると、関係者の間で意見の食い違いや認識のズレが生じやすくなります。その結果、計画の途中で反対意見が出たり、手戻りが発生して進行が遅れる可能性があります。特に重要な意思決定において合意が得られていない場合、プロジェクトそのものが停滞したり、中断に追い込まれるリスクが高まります。
関係者の中には、自分の意見を無視されたと感じることで、モチベーションの低下や不満が生まれることもあるかもしれません。それがチームの連携や協力体制に悪影響を及ぼし、全体の士気が下がる要因にもなり得ます。さらに、後になって問題が表面化すると「誰が責任を取るのか」という責任の押し付け合いが発生しやすく、組織の信頼関係にもひびが入ります。
特に複数の部署や立場の異なるメンバーが関与する場合、事前にしっかりと合意を形成しておかないと、方向性の不一致が原因で無駄なコストや時間が発生し、結果的にパフォーマンスが大きく低下します。
コンセンサスを得るためには
コンセンサスを得るためには、まず利害関係者全員が議題について十分に理解し、自分の意見を率直に述べられる環境を整えることが重要です。最初の段階で情報を共有し、何が求められているのかを明確にすることで、誤解や意味のない意見の対立を防ぐことができます。
そして、関係者一人ひとりの意見を丁寧に聞き、異なる立場や価値観を尊重しながら共通点を見出していきます。全員の意見が完全に一致する必要はありませんが、納得できるラインを見極める柔軟さは必要です。反対意見が出た場合でも否定せず、対話を重ねることで「折衷案」や「妥協点」を探る姿勢が大切です。
また意見を調整する際は、議論の焦点を絞り込み、必要以上に細部にこだわらないこともポイント。最終的な目標を共有し、大枠で合意が取れる状態を目指すことで、スムーズに意思決定を進めることができます。さらに、議論の進捗や合意内容を記録しておくことで、後から問題が生じた際にもスムーズに対応できるようになります。
コンセンサスと同じような意味を持つ言葉
コンセンサスと同じような意味を持つ言葉としては、次のようなものがあります。ニュアンスの違いはあるもののいずれも「合意形成」や「意見の一致」に関連した用語です。
合意
物事について関係者が同意すること。最もシンプルで広く使われる表現です。
協調
互いに協力し、歩み寄ることで調和を図ることを意味します。意見の違いがあっても、共通の目的に向かうことを重視します。
同意
相手の意見や提案に賛成することを示します。法的文脈でも使われることが多い言葉です。
承認
提案や計画に対して許可や賛成を与えること。上層部が決定を認める際にも使われます。
了解
相手の考えや意図を理解して認めること。必ずしも積極的な賛成を意味しない場合もあります。
妥協
互いの意見や主張を一部譲歩しながら合意に至ること。全員が納得できる最終地点を探る場合に使用します。
納得
相手の説明を理解し、同意する気持ちを持つこと。個人の感情面での同意を示します。
コンセンサスを使用した例文
コンセンサスは次のような文脈の中で使用されます。間違った使い方をしないように例文を覚えておくと、いざという時に困らなくて済みます。
「新規プロジェクトの立ち上げに際して、チーム全員のコンセンサスを得ることが重要だ。」
「事業方針の転換には、経営陣だけでなく現場の意見も取り入れた上でコンセンサスを形成する必要がある。」
「会議では様々な意見が出たが、最終的には全員が納得できる形でコンセンサスに至った。」
「クライアントとの契約条件について、双方のコンセンサスが得られた段階で正式に契約を締結することになる。」
「プロジェクトの進行スピードを上げるためには、細かな点までコンセンサスを取るのではなく、大枠での合意を優先すべきだ。」
コンセンサスは「得る?」「取る?」どっち?
「コンセンサスを得る」と「コンセンサスを取る」は、どちらも使われる表現ですが、微妙にニュアンスが異なります。「コンセンサスを得る」は、関係者や相手から賛同や合意を引き出すことを意味し、説得や交渉を通じて合意に至るイメージが強くなります。たとえば、新しいプロジェクトを立ち上げる際に、経営陣やクライアントから合意を引き出す場面でよく使われます。
一方、「コンセンサスを取る」は、関係者全員の意見を確認しながら、合意を形成するプロセスを指します。積極的に意見を集約し、全体の方向性を一致させることを意識した表現です。新規事業やプロジェクトの推進において、複数の部署や関係者と調整しながら合意を得る際によく用いられます。
どちらの表現も合意形成を示していますが、「得る」は相手側の意見を尊重しながら合意を引き出す印象があり、「取る」は合意を自ら積極的に求めて調整する印象が強くなります。場面によって使い分けられますが、どちらを使っても意味が通じることが多いです。
まとめ
以上、ビジネスで使用するコンセンサスについて見てきました。ビジネスの現場では、プロジェクトマネジメント、経営戦略の策定、新規事業の立ち上げなどさまざまなシーンでコンセンサスが必要とされます。迅速な意思決定が求められる場面では、全員が完璧に同意することにこだわらず、大枠での合意を優先する柔軟さも求められます。
ビジネスでは、関係者の数および多彩なプロジェクトが存在しているため、意思決定の過程で意見の食い違いや利害の対立が発生することがあります。こうした状況でコンセンサスを得ることで、関係者が計画に対して主体的に関わり協力的な姿勢を示すようになります。コンセンサスを得る行為はビジネスをスムーズに行うための最低限のプロセスと言えるでしょう。