合名会社・合資会社とは?株式会社や合同会社との違いについて徹底解説!

〇〇会社として設立できる会社の種類には、「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」の4つがあります。この中で株式会社や合同会社は比較的よく耳にする会社形態ですが、合名会社や合資会社についてはあまり知らない人も多いのではないでしょうか。

これから起業を目指す方の場合、どのような会社形態で立ち上げると良いかという問題は、その後の企業経営にも影響を及ぼすため、しっかりと知識を身に付けたうえで自身にとって最適な会社設立を目指す必要があります。

今回は、合名会社・合資会社にスポットを当て、さらに株式会社や合同会社との違いについて見ていきたいと思います。

株式会社と持分会社

合名会社・合資会社について説明する前に、株式会社と持分会社について説明しておきましょう。

株式会社は、出資する人物と経営を行う人物が異なる特徴があります(もちろん出資者と経営者が同じケースもあります)。また株式会社では、出資を行った株主に対して企業経営で得た収益を利益として還元するために業務を行っていきます。利益配分に関しては出資比率に則して行われるため、出資比率の高い株主が力を持ちます。そのような理由から、経営方針が大株主の意向が強くなってしまうことは往々にあります。

一方の持分会社は、出資者自らが利益配分における経営の意思決定権限を持って業務を行います。この持分会社に該当するのが、「合同会社」「合名会社」「合資会社」の3つとなります。持分会社は出資比率に関わらず利益配分は自由に決められます。そのため、経営における自由度は株式会社に比べると高いといえます。

有限責任・無限責任

併せて「有限責任」「無限責任」についても合名会社・合資会社と関わることなので説明しておきます。

「有限責任」とは、会社が倒産した場合に債権者に対して出資額を限度として責任を負うものです。責任が有限となっていることから出資額以上の金額についての支払い義務は生じません。株式会社と合同会社は有限責任となっています。

一方の「無限責任」とは、出資金額に関わらずすべての債権の支払い義務が生じるものを言います。債権のすべてを会社で支払いできない場合には、個人の財産を処分してでも債権弁済を行わなければならない責任があります。この無限責任となっているのが、合名会社と合資会社です。

これを踏まえて合名会社・合資会社についてさらに詳しく見ていきましょう。

合名会社

合名会社とは、無限責任社員だけで構成されている会社形態です。イメージは個人事業主の集まりによって構成された会社のようなものです。この合名会社には、各社員に業務執行権および代表権があります。しかし、現在合名会社はほとんど見かけることがありません。

合名会社設立のメリット・デメリット

合名会社設立のメリット
  • 設立費用が株式会社に比べると安い
  • 意思決定スピードが株式会社と比べて早い
  • 出資比率に関わらず誰にも対等な議決権がある
  • 出資比率に関わらず業績に応じた利益配分ができる
  • 決算公告の義務がない
合名会社設立のデメリット
  • 無限責任のため債権に対する支払い責任は出資者全員が連帯責任を負うこととなる
  • 資金調達方法が株式会社に比べると限定される

先ほどお伝えしたように合同会社は持分会社でも有限責任となっているため、あえて無限責任の合名会社を設立する意味合いがなくなってきたこともあり、今後も設立する人はよほどの理由がない限りほとんどいないのではないかと思われます。

合資会社

合資会社とは、会社設立時に有限責任社員と無限責任社員を一人以上ずつ必要とする会社形態です。そのため、合資会社に関しては最低でも2名以上の社員が必要となります。もし代表者の一人が退社した場合には、新たに代表者を選出するか、合資会社を取りやめて合名会社や合同会社に会社形態を変更する必要があります。

合資会社設立のメリット・デメリット

合資会社設立のメリット
  • 設立費用が株式会社に比べると安い
  • 意思決定スピードが株式会社と比べて早い
  • 出資比率に関わらず誰にも対等な議決権がある
  • 出資比率に関わらず業績に応じた利益配分ができる
  • 決算公告の義務がない
合資会社設立のデメリット
  • 無限責任社員を置かなければならない
  • 代表が2名以上必要である

なかでも、2名以上必要となる片方の代表が有限責任で、もう片方の代表が無限責任であるという点において設立メリットが全くないことから、現在合資会社設立を考える人はほぼいないといってもよいでしょう。

株式会社・合同会社

合名会社、合資会社共に設立メリットが現在のところほとんどないことが分かった以上、多くの方が目指すのは株式会社か合同会社設立となります。
ここからは株式会社と合同会社の特徴やメリット・デメリットについて見ていきたいと思います。

株式会社

株式会社とは、会社形態の中でも最も設立が多いもので、法人の9割以上が株式会社と言われています。2006年の新会社法設立までは資本金300万円以上の有限会社も設立できましたが、現在は有限会社自体が設立できません。しかし、株式会社は新会社法設立前までは資本金1,000万円以上が必要でしたが、1円以上と大幅に緩和されているので、比較的に会社設立がしやすくなりました。

株式会社設立のメリット・デメリット

株式会社設立のメリット
  • 社会的な信用度が高く資金調達がしやすい
  • 最低資本金が1円以上
  • 有限責任のため倒産しても出資額の範囲に負債が限定される
株式会社設立のデメリット
  • 設立費用が25万円程度と高め
  • 決算公告の義務があるため決算書の公表が必要
  • 赤字であっても最低7万円の法人税の支払いが生じる
  • 1円の資本金の法人ではさすがに信用度が低い

しかしながら、最も設立メリットが高い法人形態のため、設立費用が多少かかってもできれば株式会社を設立するのが賢明です。

合同会社

合同会社は株式会社に比べると知名度および信用度が下がりますが、設立費用が安く済むことや経営の自由度が高いことから、小規模事業者が選択することの多い会社形態のひとつです。
合同会社は出資者が会社経営者となっているため、出資をしたすべての社員が会社の議決権を持ちます。また、出資者の中で代表権を持つ社員を代表社員と呼びますが、株式会社のような代表取締役とは名乗ることはできません。名刺などの肩書も代表社員となります。

合同会社設立のメリット・デメリット

合同会社設立のメリット
  • 設立費用が安い(10万円前後)
  • 決算公告が不要
  • 役員の任期はない
  • 経営の自由度が株式会社に比べると高い
合同会社設立のデメリット
  • 株式会社と比べると社会的に信用度が低い
  • 株式会社と比べた場合に資金調達が難しいケースがある
  • 株式上場できない

現在設立できる会社形態で一番コストが安く、経営自由度が高いのは合同会社です。そのため、1人会社やスタートアップの場合に合同会社をまずは立ち上げようと考える人は少なくないでしょう。しかし、もしその後に「社員を増やしたい」「さらに事業を拡大したい」「上場を目指したい」と考えているのであれば、株式会社を設立するのが最もよい選択と言えます。

合名会社、合資会社に関しては先ほど紹介した通り、現在では設立メリットがほとんどない会社形態ですので、特段必要がなければ株式会社または合同会社のいずれかで設立を行うようにしましょう。

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