クリティカルパスとは? プロジェクト管理に必須のスケジュール分析手法を解説

プロジェクトを進める際に、「どの作業を優先すべきか」「どこに遅れが出ると全体に影響するのか」を見極めることはとても重要です。そんなときに使用されるものとして「クリティカルパス」という考え方があります。普段あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、スケジュール管理やリスク回避において欠かせない概念のひとつとして知られています。では、クリティカルパスとは一体どんなもので、プロジェクトにおいてどのような役割を果たすのでしょうか?

本記事では、クリティカルパスについて詳しくお伝えします。

クリティカルパスとは?

クリティカルパス(Critical Path)とは、プロジェクト管理における非常に重要な概念です。プロジェクトを完了させるために必要なすべての作業の中で、最も長く時間がかかる一連の作業の流れを指します。この経路上の作業はどれも遅れることが許されません。なぜなら、この中のひとつでも予定より遅れてしまうとプロジェクト全体の納期にも直接的に影響してしまうからです。

たとえば家を建てる場合、土地の整備から始まり、基礎工事、壁の建設、屋根の取り付けと続く一連の作業があります。これらの作業は順番にしか進められず、次の作業は前の作業が終わっていなければ始められません。こうした「連鎖的な依存関係」にある作業の組み合わせの中で、最も時間がかかるものが「クリティカルパス」となります。

クリティカルパスを理解することで、プロジェクトマネージャーは、どの作業を最も注意深く管理する必要があるかを把握できます。逆に言うと、クリティカルパスに含まれていない作業については、ある程度の「時間的余裕」があり、多少の遅れが出ても全体のスケジュールには影響を与えないこともあります。これにより、人員や資材、時間などのリソースを効率的に配分することが可能になります。

クリティカルパスと似ているもの

クリティカルパスと似ているものに、プロジェクト管理やスケジューリングに関係するいくつかの概念があります。それぞれ、プロジェクトの流れや時間管理を考える上で関連していますので、この機会に覚えておきましょう。

PERT(Program Evaluation and Review Technique)

PERTとはプロジェクト管理の手法のひとつで、1950年代にアメリカ海軍がポラリス・ミサイル開発計画のために開発されたものです。主に大規模で複雑、かつ不確実性の高いプロジェクトのスケジューリングに使用されます。

PERTの特徴は、プロジェクトを構成する各タスクの依存関係を視覚的に示したネットワーク図を作成し、全体の流れを明確にする点にあります。さらに、各タスクの所要時間を1つの値ではなく、「楽観的な所要時間」「悲観的な所要時間」「最も可能性の高い所要時間」の3種類で見積もるのが大きな特徴です。これらを用いて、統計的に平均的な所要時間を算出し、プロジェクト全体の進行に必要な時間を予測します。

このようにして作られたPERT図からは、プロジェクトの完了に必要な最長経路、すなわち「クリティカルパス」を導き出すことが可能となります。

ガントチャート

ガントチャートとは、プロジェクト管理においてスケジュールを視覚的に示すための図表の一種です。20世紀初頭にアメリカの機械工学者ヘンリー・ガントによって考案されたことから、その名がついています。

ガントチャートは、縦軸に作業項目やタスクの一覧を横軸に時間の流れを示します。各タスクの実行期間は棒グラフのような横長のバーで表され、どの作業がいつ始まりいつ終わるのかが一目でわかるようになっています。たとえば、あるタスクが3月1日から3月10日まで実施されるなら、その期間に対応する横線が引かれます。

このガントチャートはプロジェクトの計画段階だけでなく、実行中の進捗管理にも非常に有効なツールとされており、ソフトウェア開発、建設、イベント運営など、さまざまな分野で広く使われています。

WBS(Work Breakdown Structure)

WBSは、日本語で「作業分解構成図」などと訳されることがあります。プロジェクトに必要なすべての作業を階層的に分解し、整理するための手法として使われます。

WBSのメリットは、プロジェクトの全体像を把握しやすくなること、作業の抜け漏れを防げること、そして各タスクの責任の所在が明確になることにあります。また、分解されたタスクごとに必要な期間やコスト、リソースを割り当てることができるため、見積もりやスケジュール作成にも役立ちます。

このWBSはプロジェクト管理における基礎とも言える存在で、ガントチャートやPERT図、クリティカルパス分析などの他の管理手法と組み合わせて使われることが多くあります。

クリティカルパス使用の注意点について

クリティカルパス使用時の注意点ですが、この手法は「時間」に焦点を当てたものであり、リソースの制約を直接考慮していない点が大きなネックです。たとえば、複数の重要なタスクが同時期に集中し、それぞれに専門の人員が必要な場合、理論上のスケジュールは成立しても、実際には人手不足でうまく進まないということが起こりえます。こうした場合は「リソースレベリング」など、別の視点からの調整が必要となります。

また、プロジェクトが進行していく中で、クリティカルパスは変化する可能性があるという点も見落とされがちです。たとえば、あるタスクが予定より遅れた場合、それまで余裕があった別の経路が新たなクリティカルパスとなることがあります。そのため、初期の計画段階で一度クリティカルパスを出して終わりという姿勢では不十分で、定期的な見直しが欠かせません。

さらに、クリティカルパスに含まれないタスクにも注意が必要です。「このタスクはクリティカルじゃないから後回しでいい」と軽視すると思わぬ遅延が発生し、最終的にそのタスクが新たなクリティカルパスに浮上してしまうこともあります。つまり、すべてのタスクに対して一定の注意と管理が必要であり、クリティカルパスのタスクだけを特別扱いしすぎるのはリスクを生んでしまいかねませんので、注意しましょう。

クリティカルパス使用のためのツール

クリティカルパスを使用するためのツールには、さまざまな種類があります。代表的なものに「Microsoft Project」があります。これはプロジェクト管理に特化しており、タスクの依存関係や期間を入力するだけで自動的にクリティカルパスを算出、ガントチャート上に視覚的に表示してくれます。大規模プロジェクトや複数チームが関わる工程管理に特に向いているツールです。

また、「Wrike」や「Smartsheet」もクリティカルパスの表示に対応しており、チームでのコラボレーションを重視する場合に便利です。Wrikeは直感的なUIで使いやすく、Smartsheetはスプレッドシート感覚で操作できるため、Excelに慣れている人には親しみやすいツールと言えるでしょう。

まとめ

クリティカルパスは、プロジェクト内の作業工程の中で最も時間がかかり、全体の完了時期に直結する重要な作業の流れを意味するスケジュール管理の要となる考え方。遅延リスクを把握しやすく、効率的な進行に役立ちます。

ただし注意点として、クリティカルパス上にない作業も無視できないこと、現場の実態と計画にズレが生じやすいことなどがあるため、進捗に応じて柔軟に見直し、常に最新の情報で管理することが成功のカギとなります。クリティカルパスに慣れるまでは少し時間がかかるかもしれませんが、ぜひうまく活用して、プロジェクトをスムーズに進行させてみてください。

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