ディスプレイデザイナーで起業する方法

単に美しい空間をつくるだけでなく、クライアントの課題を理解して売上やブランドイメージ向上に直結する提案ができる力が必要とされる「ディスプレイデザイナー」。そんな華やかそうに見えるこの仕事の裏にはどのような仕事があるのでしょうか。また独立起業を目指す場合には、どのようなスキルを身につけておく必要があるのでしょうか。
今回はディスプレイデザイナーで起業する方法について見ていきたいと思います。

ディスプレイデザイナーとは?

ディスプレイデザイナーとは、店舗、ショーウィンドウ、展示会、イベント空間などで、商品の魅力やブランドの世界観を視覚的に表現する仕事のことを指します。単に「きれいに飾る」だけではなく、商品やサービスが持つストーリーを空間全体で伝えて見る人の心を動かし、購買意欲やブランドイメージ向上につなげることを求められます。

具体的には、テーマの企画立案からデザイン設計、レイアウト、素材選び、施工管理まで幅広く手がけます。クライアントの要望を踏まえ、ターゲット層や季節、トレンドに合わせて最適なビジュアル演出を考えるため、美的センスだけでなくマーケティングの視点も求められます。また、限られた予算やスペースの中で最大の効果を引き出すための工夫も欠かせません。

アートとビジネスの両面を行き来しながら、空間を通して人々に新しい体験を届ける、そんなクリエイティブな職業となります。

ディスプレイデザイナーの仕事

ディスプレイデザイナーの仕事は、大きく分けると「コンセプト設計」「デザイン制作」「施工・管理」の3つのフェーズに分かれます。

最初に行うのは、コンセプト設計です。コンセプト設計は単なる装飾プランではなく、クライアントの商品やサービスがどんなターゲットに向けてどんな価値を伝えたいのかを深く理解し、それを空間にどう表現するかを企画します。

たとえば、クリスマスシーズンに向けたショーウィンドウなら、「温かみ」や「幸福感」を伝えるデザインコンセプトを練り上げ、イメージボードやスケッチでビジュアルに落とし込んでいきます。

次がデザイン制作です。実際に空間のレイアウト設計、什器(ディスプレイ用の家具や道具)のデザイン、素材や色、照明のプランニングを行い、空間に高低差や奥行きを持たせたり、視線誘導を意識した動線設計を工夫したりして見る人にインパクトを与える演出を組み立てていきます。その際には、PhotoshopやIllustrator、3Dソフトを使ってプレゼン資料を作ることも多いです。

最後に施工・管理を行います。実際にデザインを形にする段階では、施工業者との打ち合わせや現場のディレクション、工程管理、予算管理などを担当します。図面通りに仕上がるように細かくチェックしながら、問題があれば現場で即対応する判断力が必要です。

ディスプレイデザインはアート的なセンスだけでは完結しません。ビジネスである以上、売上向上やブランド価値向上といったビジネスゴールを達成するための「戦略的な表現活動」が求められます。見る人に「素敵!」と思わせるだけではなく、その先に「これ欲しい」「このブランド好き」と行動を促さなければ、ディスプレイデザイナーとしての価値が半減してしまう点には注意が必要です。

ディスプレイデザイナーとして独立起業するメリット

ディスプレイデザイナーとして独立起業する一番のメリットは、自らの感性やアイデアを存分に活かし、自由に仕事の幅を広げられる点にあります。会社に属して活動していく場合、どうしても限られたブランドや案件しか担当できないことも多いです。しかし独立起業すれば自分が興味を持った業界やジャンルに積極的にアプローチでき、多様なプロジェクトに携わることが可能となります。

また、クライアントと直接やり取りをする機会が出てくるため、単なるデザイン作業者ではなく、空間演出の提案者・プロデューサーとしての立場で仕事ができるのも大きな魅力です。実績を積み上げれば、自身のブランド力も高まるだけでなく仕事の単価アップが可能となり、事業拡大のチャンスも生まれてきます。自分のビジョンを形にしながら、よりダイナミックなキャリアを築けるのが、ディスプレイデザイナーとして起業する醍醐味と言えるでしょう。

ディスプレイデザイナーに必要なスキル

ディスプレイデザイナーに必要なスキルは、単なる美的センスだけにとどまりません。大切なのは、空間を立体的にイメージして効果的なレイアウトを設計する空間構成力です。また、ターゲット層や商品の特徴を理解し、それに合わせた世界観をつくるための企画力・提案力も必須スキルとなります。加えてPhotoshopやIllustrator、CADなどのデザイン系ソフトウェアのスキルも、持っていると非常に重宝されます。

これ以外にビジネスマンの必須スキルとして、施工業者やクライアントとやり取りするためのコミュニケーション力、ビジネスマネジメント力も求められます。

ディスプレイデザイナーに必要な資格

ディスプレイデザイナーとして独立起業するのに必須となる資格は特にありませんが、取得しておくと信頼度が増すものはあります。

「商業施設士」「色彩検定」などは、知識やスキルを客観的に証明できるため、キャリアの後押しになりますし、建築や施工管理に関わる場合は「建築士」や「施工管理技士」の資格が役立つこともあります。

商業施設士

商業施設の設計・計画に特化した専門資格で、店舗やショッピングモールなどの空間づくりに必要な知識と技能を証明する資格。顧客導線や販売促進、演出効果を考慮したプランニング力が求められます。

色彩検定

色に関する理論や実践的な知識を問う検定で、ディスプレイデザインや商品演出に欠かせない色彩感覚が身につきます。

建築士

建築物の設計・監理を行う国家資格。一級・二級・木造といった種類があります。ディスプレイデザインの中でも大規模な空間演出や構造物を伴う場合、建築士資格を持っていると提案の幅が大きく広がります。

施工管理技士

建築現場での工程・品質・安全管理を担う資格。ディスプレイ施工においても、現場をスムーズに進めるための知識や管理能力が求められるため、取得していると施工部門との連携が円滑になり便利です。

ディスプレイデザイナーとして独立起業した場合の収入

ディスプレイデザイナーとして独立起業した場合の収入ですが、当然ながら実力や実績、受ける案件の規模によって大きく差が出てきます。ただし、一般的には独立後の初年度の年収は300万円〜500万円程度が平均的です。もちろんクライアントとの直接取引が増え、単価の高い案件を安定的に受注できるようになると、年収1,000万円を目指すことも十分可能です。大規模なイベント空間や大型商業施設の案件を手掛けられるようになれば、プロジェクトごとに数百万円単位の報酬を得ることもあります。

まとめ

ディスプレイデザイナーとして独立起業するには、デザイン力だけでなく、提案力や営業力、マネジメント力をバランスよく高めることが必要です。そのためにも、まずは実績を積んで、クライアントから信頼を得ることが第一歩です。

さらに、施工業者や資材会社とのネットワークを構築し、現場を統括できる力を養う必要があります。マーケティングやブランディングの視点を持って提案できるようになると、単なる空間演出者ではなくビジネスパートナーとしての価値が高まります。

自由な発想を武器に自分自身のブランドを築き上げていくことが、ディスプレイデザイナーとして独立し、成功するためのカギとなるはずです。

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