写真家として起業するには、単に「写真が好き」「撮るのが得意」という気持ちだけでなんとかなるものではありません。趣味と仕事の違いは、価値を提供して対価を得ることにあります。ですから、撮影スキルの向上はもちろん、どんな分野に特化するのか、誰に届けたいのかといった「ビジネスの軸」を定めることが大切です。また、集客やマーケティング、価格設定、契約の知識などクリエイティブ以外のスキルも求められます。
今回は写真家として起業する方法について見ていきたいと思います。
目次
写真家とは?
写真家とは、被写体の一瞬の表情や空気感、場の空間や時間の流れまでも写し取る魔術師のような存在。自分の視点や感性を通じて、日常に埋もれがちな美しさや真実を掘り起こし、それを写真という形で表現します。写真家が撮る写真には、写真芸術性だけでなく観察力や構成力、時には社会的なメッセージ性も含まれています。
写真家の活動領域は非常に幅広く、広告や雑誌、商品撮影など商業的な分野においては、クライアントの意図を汲み取り、求められるビジュアルを的確に作り上げるスキルが求められます。また、ポートレートやウェディングなどの撮影では、被写体との信頼関係や自然な表情を引き出すコミュニケーション能力が重要になります。ドキュメンタリーやアートの分野では、写真家自身の価値観や世界観が色濃く反映され、作品としての深みが問われます。
写真家の種類
写真家には、活動する分野や目的に応じてさまざまな種類があります。それぞれに求められるスキルや感性が異なり、自分の得意分野や興味に合わせて専門性を磨いていくことが重要となります。
ポートレート写真家
ポートレート写真家とは、個人やグループの人物を主な被写体とする写真家のことを指します。家族写真やプロフィール写真、七五三や成人式などの記念撮影がこれに該当しますが、自然な表情を引き出すコミュニケーション力や、ライティング技術が求められます。
ウェディング/イベント写真家
結婚式やパーティー、企業のイベントなどを記録する写真家は、一度きりの瞬間を逃さずに美しく残すための瞬発力と判断力、そして被写体に気を配る繊細さが必要とされます。
商業写真家
商業写真家は、広告や販促用に使われる写真撮影を専門としています。商品や料理、建物、ファッションなど、さまざまな対象物を売れるように魅力的に表現する技術が求められます。さらには撮影後のレタッチ技術も重要です。
風景写真家
風景写真家は、山や海、空、草花、動物など自然を被写体にします。光や季節、気象条件に合わせたタイミングを見極める力や場所選びの感性が必要となります。展示会で作品を発表したりすることで、観光や環境関連の仕事を得られることもあります。
スポーツ写真家
スポーツ写真家は、試合や競技の決定的瞬間を捉えることに特化した写真家のことを指します。スピード感や選手の表情、観客の熱気などを一枚の中に収める技術が必要で、高性能な機材と高度なタイミング感覚が求められます。
写真家として必要なスキル
写真家として必要なスキルは、単にカメラの扱い方を知っているというだけではありません。基本となるのは、構図や光の使い方、ピントや露出といった撮影技術の習得・理解です。どのようなジャンルの写真を撮る場合においても欠かせない力であり、機材の進化に合わせて常にアップデートが求められます。
また、技術だけでは良い写真は撮れません。被写体をどう見せるか、どんな感情やメッセージを伝えるかといった「視点」や「表現力」も重要です。何を撮るか以上にどう撮るかが写真家のオリジナリティを決定づける要素になります。特に人物を撮る写真家にとっては、被写体との信頼関係や自然な表情を引き出すコミュニケーション能力が大きな武器となります。
なお現代の写真家は、撮影後に写真の完成度を高め、作品の意図をより明確に伝えるための編集スキルやレタッチスキルも不可欠です。ほかにも起業後に仕事を獲得するための営業力やセルフブランディング、SNS発信力、価格設定や契約などビジネスに関する知識も欠かせません。
写真家としての収入源
写真家として収入を得る方法はひとつではありません。いくつかの手段を組み合わせることで安定した収益を築いていくことができます。ここでは写真家の収入源にはどのようなものがあるかを見ていきます。
撮影依頼
最も代表的なのが、クライアントからの撮影依頼です。具体的には、ポートレートや家族写真、企業の広報用写真、商品や料理の撮影、イベントやブライダルの記録など非常に多岐にわたります。ジャンルによって単価や作業量は異なりますが、安定的に案件を受注できるようになると大きな収入源になります。
ストックフォト販売
ストックフォトサービスによる写真販売も写真家の大きな収入源になるものです。PIXTAやShutterstock、Adobe Stockなどのプラットフォームに写真を登録しておくと、必要とするユーザーにダウンロードされるたびに報酬が発生します。登録写真が増えるほど継続的な収入につながる可能性があります。
写真販売・関連商品の販売
自分の作品としての写真をプリントして販売したり、写真集やカレンダーを制作して収益を得るケースもあります。とくにアート性の高い作品や風景写真は、個展やオンラインショップでの販売に向いています。
写真教室やワークショップなど
撮影技術や編集技術を教える写真教室やワークショップの開催も、収入の柱となる活動です。対面だけでなく、オンラインでの講座提供も可能で、全国の受講者にアプローチできます。
これらの収入源からの収入が継続的に確保できれば、写真家としての活動を安定させることができます。株式会社カカクコムが運営する「求人ボックス」によると、写真家として企業勤めしている人の平均年収は約351万円となっており、低い数値となっています。そのため、独立起業して写真家として活躍するほうが、収入アップできる可能性が期待できます。なかには、1,000万円を超える年収を稼げる写真家もいますが、知名度が高い、専門性が高い、多くの仕事をこなしているといった活動実績がないと難しいのが現実です。
まとめ
写真家として成功するためには、技術力だけでなく、継続的に選ばれる存在であり続ける力が求められます。「自分にしか撮れない写真とは何か」を常に問い続け、他者と差別化されたスタイルを確立することが、プロとしての信頼を築くうえで不可欠です。
しかし、どれほど良い作品を撮っていてもそれが人に届かなければ仕事にはつながりません。だからこそ発信力が重要になります。具体的にはSNSやポートフォリオサイトを活用し、自分の写真を定期的に発信し続けることで潜在的なクライアントとの接点が生まれます。
仕事は人から人へと広がっていくものであり、信頼関係の構築はリピートや紹介につながります。そのためには、時間を守る、コミュニケーションを怠らない、相手の期待を超える仕事をすることも大事です。当然ながら仕事が軌道に乗るまでには時間がかかることもあります。しかし、焦らず、諦めず、自分のペースで継続していくこと。写真家として成功するとは、名声や収入だけでなく、自分の目指す表現を大切にしながら、撮ることを続けられる環境を築くことに他なりません。