ツアープランナーで起業する方法

旅行の行程を企画・提案し、顧客にとって最適な旅をデザインするプロフェッショナル「ツアープランナー」。単なる旅行商品の販売ではなく、顧客のニーズに寄り添ってオーダーメイドの旅行体験を作り上げる役割を担う大事な仕事のひとつですが、ここ最近は大手旅行会社を通さずに、独自のツアーやテーマ性のある旅行を提供する個人起業家も増えてきました。

インターネットやSNSを活用すれば、自らの企画力と発信力を武器に顧客を集めることも可能な時代に、ツアープランナーとして起業するにはどんなマインドを持って臨めばよいでしょうか。
今回はツアープランナーで起業する方法について見ていきたいと思います。

ツアープランナーとは?

ツアープランナーとは、旅行者の希望や目的に合わせて最適な旅行プランを設計・提供する仕事です。単なる旅行会社のパッケージを売る人ではなく、顧客一人ひとりのニーズを丁寧に汲み取り、オリジナルの旅程を組み立てるクリエイティブな役割を担っています。

ツアープランナーは、行き先や宿泊施設、交通手段、観光スポット、食事、体験アクティビティなど旅を構成するあらゆる要素を組み合わせ、顧客に満足度の高い旅行を経験してもらうのが仕事です。知識が豊富であるのはもちろんのこと、顧客の潜在的な要望を引き出すコミュニケーション力も必要となります。

たとえば、「ハワイに行きたい」というリクエストの背景に「家族でのんびり過ごしたい」という想いがあるなら、リゾート中心のゆったりしたプランを提案しなければなりません。こうした「相手の本当の願いを読み解く力」がプランナーの力量を左右します。

さらに、旅行業界の動向や現地の最新情報、トラブル対応の知識にも精通していなければツアープランナーはつとまりません。天候や情勢の変化、施設の閉鎖といった突発的な事態にも柔軟に対応し、顧客にとって安心できる旅行体験を保証するためのリスク管理能力も大切なスキルのひとつです。

ツアープランナーとツアーコンダクターの違い

ツアープランナーとよく間違えられるものとしてツアーコンダクターがあります。この両者の違いはどこにあるのでしょうか?

まずツアープランナーですが、こちらは旅行そのものを企画・設計するのが仕事となります。顧客の希望や市場ニーズをもとに、どこに行ってどんな体験をし、どんなルートをたどるかをプランニングして旅行の内容を形にしていきます。ツアープランナーの腕次第で、旅行の魅力や満足度は大きく左右されることから、提案力が非常に問われる職種と言えます。

一方のツアーコンダクターは、完成したツアープランに沿って旅行に同行し、現場で参加者をサポートする仕事です。たとえば、空港での手続きやバスの誘導、観光地での案内、トラブル対応、スケジュール管理など、旅行中の進行役としてグループをまとめ、旅行が安全かつスムーズに進むようサポート。ツアーコンダクターは基本的に現場対応が中心です。プランを作るのではなく、作られたプランを現場で実行・調整する役割を担います。

ツアープランナーとして独立起業するメリット

ツアープランナーとして独立起業するメリットには次のようなものがあります。

自由度が高い

ツアープランナーとして独立起業した場合、大きなメリットのひとつが自由度の高さです。会社員としてツアープランナーをする場合は、会社の商品方針やターゲット層に縛られますが、独立起業すれば、自分の興味や得意分野に合わせたオリジナルツアーを企画することが可能。たとえば、食をテーマにした旅行や文化体験型のツアー、特定の趣味に特化した旅など、独自のコンセプトを打ち出しやすくなります。

顧客との距離が近い

大手旅行会社に属している場合、分業制が一般的でツアープランナーが顧客の顔を見る機会は限定されますが、独立起業すればプラン提案から予約手配、アフターフォローまで一貫して関わることができます。そのため、顧客から直接「楽しかった」「またお願いしたい」という声を聞くことが可能。自分の企画力や工夫がダイレクトに評価される喜びは、独立したからこそ味わえます。

ツアープランナーに必要なスキル・資格

ツアープランナーとして独立起業するためのスキルですが、旅行のプランニング力だけでなく、ビジネスを成立させるための幅広いスキルと一定の資格が必要となります。

最も重要なのは、旅行全体を設計する「企画力」や「提案力」です。単に有名な観光地を並べるだけではなく、顧客の希望やターゲット層のニーズに合わせて、魅力的な旅行プランをゼロから組み立てる力が必要となります。また、観光地情報や交通事情、宿泊施設の知識に加え、季節ごとの特徴や現地の文化や習慣への理解もあるとよいでしょう。

また、独立起業してビジネスを行っていくためには、営業力やマーケティング力も必要です。自分で顧客を見つけ、魅力を伝えて顧客の信頼を勝ち取らなければなりません。そのため、ホームページやSNSを活用して集客するスキル、チラシや企画書を作る文章力やデザイン力も非常に役立ちます。

資格については、旅行業法に基づき「旅行業登録」が必要になります。個人で旅行商品を手配・販売する場合には、原則として「旅行業第3種登録」を取得しなければなりません。そのためには、事務所要件を満たしたうえで国家資格となる「旅行業務取扱管理者資格」を有する管理者を設置する必要があります。独立起業を目指すなら、国内旅行を取り扱える「国内旅行業務取扱管理者」もしくは海外旅行もカバーできる「総合旅行業務取扱管理者」の取得を目指すのがよいでしょう。

ツアープランナーとして独立起業した場合の収入

ツアープランナーの年収は、勤務先の規模や地域、経験年数によっても大きく異なりますが、Indeedのデータによると、旅行プランナーの平均年収は全国で510万円となっています。また厚生労働省の調査によると、ツアープランナーの平均年収は約440万円とされています。

なお、旅行業界全体の平均年収は362万円で、全業界平均の433万円と比較するとやや低めです。そのため、独立起業した場合には、まずこの平均年収を上回るだけの収入を獲得できる見込みがあるかが大きなポイントとなります。独立開業して活動する場合、収入は企画力や集客力に大きく依存するため、成功すれば高収入も可能ですが、安定した収入を得るまでには時間と努力がかかる点は否めません。

まとめ

ツアープランナーとして独立起業すれば、自分の感性や得意分野を活かしたオリジナルツアーを企画でき、自由度の高い働き方が実現する可能性は高くなります。当然、企業に勤務する場合と比べて顧客との距離も近くなり、直接感謝の言葉を受け取れるため、やりがいも大きくなるでしょう。

また、すでに出来上がった市場で勝負するより、業界的にニッチな市場を狙えば、高付加価値なビジネス展開も可能かもしれません。ただし、旅行業登録や集客、トラブル対応など、すべて自分で管理する必要があり、一筋縄ではいかない場合も少なくありません。ツアープランナーとして成功するためには、企画力や提案力を磨き続ける努力と、顧客のニーズを深く理解する修練は欠かせません。常に学び、挑戦し続ける姿勢が、信頼と成果につながっていくことを覚えておきましょう。

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